ファミリーマート社長 中山 勇氏

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■前職ではアジア進出をサポート

――13年1月、11年近くファミリーマートを率いてきた上田準二氏(現会長)に代わって社長に就任されました。伊藤忠商事では食糧部門を担当し、小売業の経験は初めてだそうですね。フレッシュな目で見て、ファミリーマートの強みと弱みはどこだと感じていますか。

【中山】コンビニはみなそうですが、私たちは加盟店さんと一体となって仕事をしています。なかでも社名に「ファミリー」という言葉が入っている通り、ファミリーマートはその結びつきが他社よりも強く、また消費者にとって親しみやすいチェーンだと思っています。チェーンを支えるシステムなどの仕組みもしっかりしており、その意味でもすばらしい会社です。これが「強み」ですね。

一方、数字を見ると、たとえば既存店ベースの売上高伸び率で、トップ企業(セブン−イレブン・ジャパン)から残念ながら水をあけられています。これはなぜなのか。いろいろと勉強して対策を打っていきたいと思っています。

――中山さんは伊藤忠商事時代から「現場主義」を掲げています。ファミリーマートでも早速、店舗巡りをしているそうですね。

【中山】はい。何軒か回っていますが、加盟店さんと本部や担当者との関係を見ていると、非常に雰囲気がいい。前社長の上田が現場をよく回り、一緒にお酒も飲んで(笑)、いい関係を築き上げてくれたおかげだと思います。こうした財産は何物にも代えがたいですね。

――その上田会長は、中山さんの商社時代のネットワークを高く評価しています。具体的には?

【中山】ここ3年ほど、私は伊藤忠商事の食糧部門でアジアを担当してきました。ファミリーマートとの取り組みが多く、一例を挙げればインドネシアやタイ、ベトナムに進出する際の現地パートナー(合弁相手)を探すことです。合弁相手に過半数の出資を仰ぎ、主体的に運営してもらうのがファミリーマートのやり方なので、しっかりした現地企業をパートナーに選ばなければなりません。その部分のお手伝いをしてきました。また、日本国内での取引先である食品メーカーの現地進出にも関わってきました。

【中山】そうした形で、アジアでのファミリーマートのバリューチェーンづくりに汗をかいてきましたから、それなりのネットワークができています。上田が評価してくれたのはそこだろうと思います。

コンビニのビジネスモデルは、自動車の完成車メーカーと似ているかもしれません。海外に進出する際には、部品メーカーにあたる取引先の方々にも進出していただき、「ファミリーマート品質」の商品を現地コストで製造してもらう。われわれコンビニは、そうした商品の供給を受けて、現地の人たちに販売するというビジネスです。

ファミリーマートはその仕組みをまず中国でつくり上げ、いまはそれ以外のアジア各国へ広げています。今後もその動きは変わりませんから、私自身の立場は変わっても、これまでのネットワークが生きてくるだろうと思います。

――とはいえ、小売業の立場から見る景色はこれまでとは違うと思います。小売りの仕事の面白さはどこにありますか。

【中山】ファミリーマートには国内だけで9000以上の店舗があり、現場から毎日、新鮮なデータが集まってきます。それをもとに、明日は消費者がどう考えるかを予測します。

大事なことは、データはあくまでも過去のものだということです。お客様は昨日の気持ちではなく、今日の気持ちで買い物をします。昨日の気持ちに沿った商品だけが並んでいても買ってくれません。では、どんな商品が売れるのか。いまはそれを探求していくのが楽しみです。

9000店の現場の人たちが日々、お客様と接して感じていることにヒントがあると思います。これまで同様、現場主義を貫いていきたいですね。

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ファミリーマート社長 中山 勇
1957年、東京都生まれ。都立戸山高校、東京大学農学部卒。81年、伊藤忠商事入社。2012年4月、常務執行役員食料カンパニーエグゼクティブバイスプレジデント兼食糧部門長。13年1月から現職。高校から社会人までアメリカン・フットボール部で活躍。

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(面澤淳市(プレジデント編集部)=取材・構成 宇佐美雅浩=撮影)