「叶え、私たちの夢! (コスプレイヤー=みるる 撮影=龍道)」

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■それは「コスプレ」ではない

前回では、コスプレは単なる仮装とは異なり、衣装を変身アイテムとして架空のキャラクターに「なりきる」という、日本発祥の趣味文化であることを紹介しました。その関連ビジネスとして、最近では、自主制作作品、いわゆる同人作品としてのコスプレ写真集の即売会が増えています。コスプレ写真集は、スタジオや野外ロケで撮影し編集したコスプレ写真をCDに収めた「コスプレROM」と呼ばれるものが主流の形態です。写真集の中には、コスプレイヤー独自のコンセプトや表現手法で、正にアートの領域まで深化している作品もあります。

本来なら、コスプレ写真集の即売会は、コスプレ文化とそのビジネスを発展させる格好の場となるはずでした。ところが今、この即売会にある業界からの進出が勢いづき、コスプレ文化を破壊しつつあります。それは、アダルトビデオ(AV)業界です。

一部のAVメーカーは、人気アニメキャラクターに仮装させたAV女優やモデルの写真集を18禁(成人用)「コスプレROM」として即売会で販売しています。その内容は、扮しているキャラクターやその作品への愛情や敬意は微塵もなく、冒涜しているとさえ感じさせるものです。キャラクターに「なりきる」ためには、そのキャラクターや作品への思い入れが必要になるので、これらの写真集はコスプレとはまったく別物と言えます。そのため、コスプレイヤーの多くは、この似て非なるコスプレROMに嫌悪感を持っています。しかし、扮しているキャラクターが何であれ、情欲を煽りたてる内容は、一部の男性を強く惹きつけます。

■愛をとりもどせ

この流れに応じるかのように、一部のコスプレイヤーが18禁コスプレROMを進んで制作しています。それが自主的な表現方法であればとやかく言うことはないのかも知れません。しかし、写真集の注目度や売り上げの競争に知らず知らずと熱中し、意図せぬ方向に進んだ挙句、取り返しのつかないことになって困ってしまう女の子もいます。一度ネットに出回った写真はコピーが増殖し、自分では制御できないところで、いつまでも人目に晒されるのですから。

AVメーカーがコスプレ写真集の即売会に目を付けたのには理由があります。コスプレ写真集の即売会には、自前の販促イベントとは比較できないほどの集客力があります。しかも、静止画である写真集は動画作品よりも低コストで制作できるにも関わらず、18禁コスプレROMはほぼAVと同じような値段で販売できます。写真集を購入した人だけが出演モデルをその場で撮影できる権利というプレミアを含めて販売できるからです。さらに、自主制作作品の即売会なので、出展料も安く、売り上げから税金の支払いを回避することもでき、AVメーカーにとっては非常に旨味のある流通ルートだというわけです。

私はAVメーカーによる18禁コスプレROMがダメだとは言いません。まったく関わりのない自主制作作品の即売会に紛れ込んで、そこを隠れ蓑にしていることが問題なのです。そのために、コスプレイヤーやコスプレ業界が築き上げてきたコスプレ文化が侵食され、破壊されることを看過できないのです。そして、トラブルに巻き込まれて、傷つく女の子たちを生み出してはならないのです。モラル無きビジネスへの対策としては、規制だけでは十分な効果は期待できないでしょう。長い戦いになるかも知れませんが、悪意のあるものが紛れ込む余地のないように、コスプレに関わる業者やコスプレを楽しむ人たちは、似て非なるものを見抜く力を養い、多くの人に本当のコスプレ文化の素晴らしさを発信し続けることが肝心なのです。

(梅本 克=文(デジタルハリウッド大学客員准教授))