“カレが私の生きがい”で大丈夫? 「重い」女の思考回路

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 みなさんは恋愛に夢中になりすぎて、恋人に「重い」「ウザい」などと言われて落ち込んだ経験、一度や二度ではないのではないでしょうか? 彼のことを大好きな気持ちが高じ過ぎて、本棚や通勤バッグにこっそりと『ゼク○ィ』を忍ばせることも日常茶飯事かもしれませんね。

 綿矢りささんの小説『しょうがの味は熱い』(文藝春秋/刊)は、会社から帰宅した同棲中の彼にケーキとブーケ、婚姻届でプロポーズする奈世(26)が主人公です。突然のプロポーズに顔が引きつる絃(28)。「結婚したいと思ってたの?」なんて白々しい言葉でその場を誤魔化そうとしますが、奈世は当然納得できません。
 男性に「重い」と一蹴されがちな女性は、一見すると我も忘れて暴走しているようですが、心の奥底では不安を抱えているのです。今回は、そんな女性が恋愛について考えていることを挙げてみました。

■自分の「穴」を恋愛で埋めたい
 夢中になれる趣味が見つからず、仕事にやりがいを感じることもない。自分という存在がどこか空虚なものに感じる。その穴を埋めようと必死でもがくうちに、恋愛に活路を見出しては力を入れすぎてしまうといった、いわゆる依存症のようになってしまいます。


「僕になんとかできる問題じゃない。君は自分の力で自分の居場所を見つけなきゃ」
「ここだよ。私、絃の隣のここに、自分の居場所を見つけたい」
「居るだけじゃだめだ、居るだけだからそんな風に思いつめる。常に何かして、一つのことについて深く考えすぎないようにした方がいい。なにか生きがいを見つけなきゃ」
「絃が生きがいだよ」
彼は少しも喜ばず目を見張り、怯んだ顔つきになった。
「それは間違ってるよ」
(31ページより)



 ようやく穴を埋められるほど大切なひとが見つかったのに、こんなことを言われてはたまったもんじゃありませんね。自分でも分かりきっていることを指摘されると、更なる自己嫌悪に陥るものです。しかし恋愛体質はもはや褒め言葉ではないことを自覚したほうがいいかもしれません。

■「ふたり」の状態を失うのが怖い
 大好きな人に受け入れられる安心感や、ずっと一緒に過ごしたい気持ちを抱いていられる幸福を失うことをおそれるあまり、「つないでおく鎖」が欲しくなってしまうのです。確実な未来の約束がないのを分かっていて、それでも不安に駆られて、確かなものを作ろうと躍起になります。


男の人が首輪をつけた犬で私が鎖をしばりつけた杭になる、そんな関係性を築いたところでなにがうれしいのか、さっぱりわかりません。いまでもそう思っています。でも気が付けば私はいつも絃をつかまえておきたい顔つき、絃はいつも逃げたそうな顔つきになっていて、自然に望まない関係になっていきました。こわくなんかなりたくないのに。
(141、142ページより)



 結婚すれば鎖でつないでおけると考えるのも安直ですが、法に守られた関係というのに安心感を覚えることもまたひとつの自分を救う方法かもしれません。しかし、このような考えで半ば監禁するために結婚を利用すると、男性側からはもれなく「結婚は人生の墓場」という最悪のフレーズを引き出せます。男がやると褒めそやされるのに、女がやるととことん醜くなる行為の代表格ですね。
 自分でもそういう発想がだめだと分かっていながら抑えられないことに自己嫌悪を感じることもしょっちゅう。うまくコントロールするには、自覚ばかりでなく恋人からの理解がカギになりそうです。恋人の物分かりがいい場合に限り、素直に吐露してしまうことで愛も深まるかもしれません。
 
 ご紹介した『しょうがの味は熱い』では、奈世と絃の思いが交互に描かれます。丁寧になぞれば、煮え切らないカレの心理はもちろん、自分では気付かなかった自分の気持ちがわかるかも。あまり悲観的にならず、バランスを取って大好きなカレとの恋愛を楽しむコツを探してみてください。
(ライター/宮沢瞳)