「僕ら50代は、映画が総合芸術の最高峰だという認識が強い。どんなに現代美術で成功しても上の空のようなところがあった。映画、アニメーションをつくりたくて仕方がなかった」

 そう語るのは、世界的に知られる現代美術家、村上隆さん(51)。初めて手掛けた長編映画「めめめのくらげ」が4月26日に公開される。

 主人公は父を亡くして、母と二人で田舎での新しい生活を始めた小学生の正志。そんな彼の前に、くらげのような不思議な生き物が現れる。チーかまが大好きで自由自在に飛び回るそれに正志は「くらげ坊」と名付けた。学校にくらげ坊をこっそり連れて行った正志だが、驚くことにクラスメート全員がそれぞれ“ふれんど”という不思議な生き物を連れていた。果たしてふれんどの正体とは…。

 小学生の子どもたちが主人公で、村上さんお得意の不思議なキャラクター満載。一見、子どもたちの友情やふれんどとの交流を描いたファンタジーだが、

「子どもたちの夢をつぶしたいんですよ」

 と、現代美術家らしい“毒”を混ぜる。映画のテーマは「コミュニケーション・ブレイクダウン」。そこに、村上さんがリアルと感じた東日本大震災後の日本のゆがみを反映させ、日本のエネルギー問題という世情を取り入れた。幼少時代から「ウルトラマン」シリーズをはじめ、水木しげるの怪奇・妖怪ものが大好きだった「オタク第一世代」という村上さん自身、それらの作品に含まれていた社会のひずみに影響を受けているという。

「NHKの『特派員報告』で、ベトナム戦争のレポートを見た時に、自分たちの欲望で動くとこうなっちゃう、歯止めがきかない、子ども心に『こんなことでいいのだろうか』という気持ちがありました。僕はテレビを見てひっかかると、すぐ親に『なぜ? なに?』と聞く子どもでした。この映画にも、そんな『なぜ』をちりばめたつもりです。映画を見た親子でそれぞれの家族の物語をつくってもらえればうれしい」

AERA 2013年4月29日号