陸運編

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陸運編

■ 輸送量は減少傾向だが宅配事業は好調。海外進出と環境対応が急速に進行

国土交通省によると、2011年度の国内貨物輸送量は49.0億トン。10年とほぼ変わらない水準だった。ただし、ピーク時の1991年(69.2億トン)に比べると、市場規模は3割程度縮小している。今後も、国内の人口減少、荷物として運ばれる各種製品の小型化、産業が「モノ」から「サービス」に移行することによる貨物の減少などが影響し、長期的な輸送量は減少傾向と予測されている。なお、国内貨物全輸送量のうち、9割以上(45.0億トン)を自動車輸送が占める。

 

輸送量が頭打ちになったことで、競争は激化。そのため、運賃も伸び悩んでいる。これに対し、コスト高は深刻だ。08年のリーマン・ショック後に一時下落した燃料費は、その後再び上昇し、現在は高止まりの状況。また、各社が取り組んできた人件費削減も、限界に近づいている。さらに、12年4月に関越自動車道で起こった高速バス事故の影響で、陸運業界に対しても法令遵守厳格化・安全対策の強化が求められており、これもコスト増につながっているのだ。

 

ただし、明るい材料もある。それは、好調を維持している個人向け宅配事業だ。経済産業省によれば、11年度における「消費者向け国内電子商取引」(ネット通販などを指す)の市場規模は、対前年度比で8.6パーセント増の8.5兆円。これが追い風となり、11年度の宅配便の取り扱い個数も、対前年比5.6パーセント増の約34億個と伸びた。こうした中、流通事業者が物流拠点の拡大を目指す動きが活発になっている。きっかけとなったのは、通販サイトAmazon.co.jpを運営するアマゾン・ジャパンだ。同社はここ数年で、全国に11カ所の物流拠点を整備。13年には、神奈川県で新物流センターの開業を予定している(ニュース記事参照)。また、楽天市場を運営する楽天も、現在1つしかない物流拠点を、14年にかけて5拠点まで拡大する計画を発表している。こうした取り組みには、陸運業者が協力をしているケースが多い。例えば、千葉県市川市などにあるアマゾン・ジャパンの倉庫は、日本通運が運営。陸運業者は社内に蓄積した豊富なノウハウを生かし、ネット通販市場を支えている。

 

荷主である企業が海外展開を急速に進めているため、グローバルな輸送体制の構築も急務だ。とりわけ目立つのが、新興国での動き(表組参照)。各社は東南アジアを中心に、拠点開設・事業拡大に取り組んでいる。また、12年からヤマト運輸が那覇空港を活用して国内から東アジア地域への配送日数短縮を図るなど、サービス品質を向上させる努力も盛ん。一方、13年1月、ベトナム・ラオス・カンボジアがトラックやバスの通関手続きを簡素化する協定を結ぶなどの動きがあり、新興国でも物流が活発になる土壌が整いつつある。今後の事業拡大が期待できそうだ。

 

環境対応の動きも進んでいる。例えば三井倉庫ロジスティクスは、異なる家電メーカーの配送システムを一元化し、配送拠点の集約化も行った。このように、大規模な共同配送システムを実現して物流の効率アップを図り、二酸化炭素排出量の削減を目指す取り組みは、今後も進むだろう。また、鉄道や船舶へのモーダルシフト(貨物の輸送手段を環境負荷の小さなものに転換すること)も、引き続き進むはずだ。

 

■ 押さえておこう <アジアにおける拠点開設・事業拡大の一例>

インド

13年1月、近鉄エクスプレスがインドのデリー国際空港内に事務所を開設。デリー市内の事務所から出向くより、通関手続きや貨物確認の作業が素早くできるようになった。

ミャンマー

12年7月、日本通運がミャンマーのヤンゴンに連絡事務所を開設。同社では、将来の現地法人設立も視野に入れながら、物流サービス体制の構築に努めていく予定。

シンガポール

13年3月、佐川急便グループの持ち株会社であるSGホールディングスが、シンガポールに設立した現地法人の営業を開始。アジア地域の物流事業を統括するほか、現地物流会社の買収も進める予定。

 

■ 要チェックニュース! <ネット通販業者との協力に注目>

・Amazon.co.jpの物流業務を担当するアマゾンジャパン・ロジスティクスが、13年中をメドに、神奈川県小田原市に新物流センターを開業すると発表。こういったネット通販業者の物流網拡充を、陸運業者が支援しているケースは少なくない。(2012年8月7日)

 

・ヤマト運輸が、沖縄をハブ空港(航空網の中心となる拠点)としてアジア各地に小口の貨物を届ける「国際宅急便」サービスを開始。最短で翌日の配達を実現しており、海外向けのネット通販業者などが盛んに利用しているといわれる。(2012年11月15日)

 

■ つながりの深い業界 <ITは物流の効率アップに不可欠>

空運(貨物)

顧客である国内企業が海外進出しているため、空路を取り入れた輸送が急増

海運

グローバルな輸送体制を築くため、海運業者と協力する機会も増えている

IT

物流システムは複雑になる一方。その効率化には、ITの力が不可欠だ

 


■ この業界の業界の指南役

日本総合研究所 コンサルタント 田中靖記氏

大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修修了。専門は、新規事業・マーケティング・海外市場進出戦略策定。鉄道・住宅・エネルギー等、主に社会インフラ関連業界を担当。また、インド・ASEAN市場開拓案件を数多く手がけている

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか