【ベトナム編】 

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海外駐在員ライフ

【ベトナム編】 

ベトナムには“東京”と“大阪”がある?

Reported by 回遊魚
ベトナムのハノイにある日系オフィスに勤務。現地では、ローカルフードの食べ比べや、テニス、写真撮影、旅行を楽しんでいる。

■ 厳格なハノイと陽気なホーチミン

こんにちは。回遊魚です。今回は、ベトナムの人々についてお話しします。

ひと口にベトナム人といっても、南北に長いベトナムの場合、地域によってさまざまです。例えば、首都であるハノイはベトナム北部に位置し、南部にあるホーチミン(旧サイゴン)とは1650キロメートルも離れているため、気候、風土、人種などあらゆる面で異なり、人々のライフスタイル、ビジネススタイルもかなり違っています。ハノイが政治の中心だとしたら、ホーチミンは商業の中心。ちょうど東京と大阪のようなものだと考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

ハノイには四季があります。沖縄よりも南に位置していますが、冬には日中の気温が10度を下回る日が数週間あり、時には北部の山間部で氷点下になる日も。11月に入ると、ハノイの人々は早々とダウンジャケットやウールのコートを着始めます。オフィスには暖房がないので、セーターはもちろん、毛糸の帽子、マフラー、コートを着て仕事をする姿も。どうやら、ファッションも兼ねた冬のスタイルが好きなようなのです。旧暦のお正月(2013年は2月10日)を過ぎると少しずつ暖かくなって、3月には春が到来しますが、このころまでハノイには、うっすらと白い霞(かすみ)がかかっています。日照時間も少なく、どんよりとした憂鬱(ゆううつ)な天気が続くため、喉を痛める人も多く、ハノイ在住の日本人も、この時期は真っ青な空を拝みに南に脱出したくなるほどです。

この気候のせいなのか、ホーチミンをはじめとする南部地域の人からは、「ハノイの人は陰気臭い、しめっぽい」などと揶揄(やゆ)されます。ハノイは政治の中心であり、共産党の指導が行き届くこともあるせいなのか、規則にうるさく、支配的な態度の人に出くわすこともしばしば。歴史、文化、伝統の面でも、古いものが色濃く残っているので、枠にはまった思考や行動をする人が多く、少々窮屈にも感じます。質素、節約がモットーで、将来に備えたタンス預金がたくさんあるとも言われていますが、歴史的にずっと中国からの侵略に対抗していたので、イザと言う時に備える感覚が身についているせいだとも言われています。

一方、大阪にたとえられることからもわかる通り、ホーチミンには活気があり、「宵越しの金を持たない」みたいな自由な気風があります。南部地域はメコン川から多大な恩恵を受けていて、食べるものには困りません。コメの二毛作は当然ですし、果物、野菜は放っておいても育ってしまう。川や海に行けば魚はいくらでも採れる。年中温暖で肥沃な土地ゆえ、飢えや寒さの心配はいらず、自然とのんびりとした生活になるのだと思います。経済、商業面では、ハノイの倍以上の規模があり、独立心が強いのも特徴です。ベトナム戦争前の「サイゴン」という地名を今でも誇りを持って使っていますし、自分たちのことも「サイゴン人」と呼んでいます。開放的で自由闊達(かったつ)な彼らを見ていると、「ここはハノイと同じベトナムだろうか?」と思ってしまいます。お店での接客やサービスも、ホーチミンは明るくフレンドリー、ハノイではむっつり事務的で、極めて対象的。一方、ハノイの人からすると、南部の人は「やかましい」「品がない」「横着」「節操がない」と映るようです。

日本でも関東と関西を面白おかしく比較したり、ときには真面目に違いを強調して、お互いの悪口を言ったりしていますが、ハノイ人とサイゴン人も同じです。また、以前、ホーチミンに出張した際にベトナム料理のレストランに行き、いつもハノイで当たり前のように食べているものを注文したところ、同じ名前なのに出てきたものが違ったりして驚きました。、ハノイで呼んでいるのと同じ呼び方の料理を頼んだときに、「そんな料理はない」と言われてしまい、ハノイ出身の秘書が一生懸命に説明して、やっと通じたことも。どうやら、単語のスペルや発音の仕方も異なるようで、同じ単語でも、北はしっかりと発音するけど、南は緩い感じで発音するのですね。個人的には、南の「音」の方が優しく感じられて好きです。

■ 平日の昼に開かれる結婚式

ベトナムの文化で特筆に値するのは、結婚式です。カウンターパート(仕事上の対応相手)の息子さんの結婚式に招待されて、出席したことがあるのですが、披露宴は大会場で、招待客は300人以上と聞きました。親戚縁者はもちろん、近所の人、友人、知人、職場の上司や同僚なども呼ばれています。招待客がさらにほかの人を招待してもよいらしく、最終的な招待客は終わらなければわからないそう。もしかしたら、終わった後もわからないかもしれません。そんなわけで、1000人を超える披露宴もあるそうです。

日本では、週末に開かれることの多い結婚式ですが、ここでは通常、平日の昼間に開きます。仕事の合間に気楽に来てもらえるようにという理由からだそうです。結婚シーズンは10月から始まりますが、その時期から、職場で赤ら顔の人を見かけると、「ああ、今日結婚式に出たんだな」と思うようにしています。特に男性は、普段めったに着ないスーツにネクタイをしているのですぐにわかります。

招待客が包むお祝いは、ちょうど料理代になるくらいの額が相場のよう。新郎新婦と双方のご両親が入り口で招待客を出迎え、客は着席後すぐに飲み始めます。プロの司会者か友人による司会で進行し、新郎新婦入場、新郎の父親あいさつ、ケーキカットにシャンパンタワー、両親への花束贈呈、新郎あいさつと進むのは日本と変わりませんが、最初に会場の専属歌手みたいな人が明るい歌を歌うところや、最後の新郎あいさつまで1時間もかからずに進むところはベトナムならでは。招待客も、終宴後は三々五々に帰りますが、残りたい人はずっと居てもいいらしく、日本と比べると自由です。

もう1つ、ベトナムの街を歩いていて目を引くのが、バイク。「ノーバイク、ノーベトナム」(バイクがなければ、ベトナムじゃない)と言えるほどですが、日本の常識からすると、とんでもないマナーで乗っています。1台のバイクに親子4人が乗っていたり、まだ首の座らない赤ちゃんを抱いたまま運転するお母さんも。小さな子どもをシートの前に立たせて運転する親がいると、まるで子どもが運転しているように見えてギョッとしますし、バイクでこんなものまで運ぶのかとビックリするような荷物を積んで曲芸的に運転する人々などもいて、枚挙にいとまがないほどです。交通規則はありますが、そんなのどこ吹く風といった「自由さ」とバイタリティーを感じます。

そんな彼らですから、当然、信号も守りません。大きな交差点にある信号なら、さすがに最近ようやく従うようになり、渡りやすくなりましたが、まだまだ少数派です。バイク、車、バス、自転車、人…それぞれが好き勝手に走ったり歩いたりしているので、いつ事故があってもおかしくないのですが、絶妙な間合いで避けあってすれ違っていくのです。私も、最初は道路を渡るにもドキドキして、時間もかかっていましたが、最近はコツを覚えてベトナム的に渡れるようになりました。コツは「走らない」「止まらない」「避けようとしない」「ふらふらしない」「バイク、車を見ない」。事故現場はときどき見かけますが、市中だとスピードが出ていないので、ぶつかっても軽い接触で済むようです。たとえ転倒しても、大きな事故にはならないのか、あるいは単に気にしないだけなのかわかりませんが、お互いそのまま何事もなかったかのように立ち去ってしまいます。ただ統計的には交通事故の死亡率はやはり非常に高いようなのですが…。

次回は、ハノイでの私の暮らしについてお話しします。

 

 

 

結婚式当日に新郎新婦を載せるデコカー。
交差点で動きだすバイクの群れ。よく見ると先頭の赤いバイクには小さな子どもが立って乗っている。

 

こんな長い材料もバイクで運んでしまうからビックリ。曲がるときはどうしているのか…。
大きな金柑(きんかん)の木を運ぶバイク。ベトナムの旧正月では、家やオフィスに金柑と桃の花を門松のように飾るそう。
ホーチミンで見つけたTシャツ。道路を横断するときのルールとコツが面白おかしく、かつ実用的に説明されている。

 

構成/日笠由紀