澁谷工業株式会社

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理系のシゴトバ

澁谷工業株式会社

今回の訪問先 【澁谷工業 BS技術本部 技術部】 
清涼飲料水、ビール、ワインなどのアルコール飲料、調味料、乳製品、さらには化粧品やシャンプー・リンスなどのトイレタリー製品など、私たちの身の回りにはさまざまなボトルに入ったモノがあふれています。それらのボトルを少量生産するのであれば、手で詰めることもできますが、大量生産となると人の手では到底できません。しかも単に詰めるだけではなく、安心・安全に使えるよう衛生的に詰めなければならないのです。そんなボトルに中身を充填する作業を人に代わって行う装置、ボトリングシステムを開発、製造、販売しているのが澁谷(しぶや)工業です。創業は1931年。当時は清酒メーカー向けの燃焼装置などの製造販売を行っていましたが、第二次世界大戦後の49年に澁谷工業に改組し、ボトリングシステムの開発に着手します。同社が第1号ボトリングシステムを開発したのは59年。以後、ボトリングシステムのメーカーとして、市場の高品質化のニーズに応えるべく無菌充填技術やGMP(※1)対応技術を確立するなど、国内外の市場をけん引してきました。現在はボトリングシステムのほか、製薬設備システム、包装システム、切断加工システムや半導体製造システム、さらには医療/医用機器、再生医療システムなどの製作も手がけるなど、事業エリアは拡大しています。今回は澁谷工業設立以来の核となる事業、BS(※2)技術本部 技術部のシゴトバを訪ねました。
※1 Good Manufacturing Practiceの略で医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理に関する国際基準。
※2 ボトリングシステム(Bottling System)の略。

 

■ 日常生活に欠かせないボトリングシステムの開発

澁谷工業があるのは石川県金沢市。JR金沢駅から15分ぐらい歩けば、本社の建物が見えてきます。石川県の県庁所在地である金沢は、加賀百万石の城下町として発展してきました。そして2015年の北陸新幹線開業に向け、街の整備が行われています。
日本海に面している金沢市は、典型的な日本海型気候のため、冬にはそれなりの積雪があります。そのため金沢では樹木の枝が折れないように縄で枝を保持する、雪吊りが施されます。兼六園ではその作業が風物詩となっており、遠方からそれを楽しみに観光客がくるほど。澁谷工業でも冬の間、本社敷地内にある樹木には雪吊りが施されるそうです。

BS技術本部 技術部のシゴトバを案内してくれたのは、プラント生産統轄本部 BS技術本部 技術部 設計II課の西出泰土(にしで・やすと)さんです。写真はBS技術本部 技術部の執務エリアです。
「ボトリングシステムは液体を容器に充填し、キャップを閉めるまでの作業を自動化する機械です。そのため複数の機械で構成されています」(西出さん)
ボトリングシステムは複数の機械が連結して構成されます。ランダムに投入された空の容器を所定方向に整列し、コンベヤ上に一列で供給する「アンスクランブラ」、容器を滅菌する「ボトル滅菌機」、容器の内外を洗浄する「リンサ」、容器に液体を充填する「フィラ」、キャップを取り付けて閉める「キャッパ」、そのほかにもラベルを貼り付ける「ラベラ」やボトルの内外を検査する「ボトル検査機」、ボトルをケースの中に収納する「ケーサ」などの機械が連結して一つのシステムとなっているのです。そして各機械の間はボトルコンベヤが配され、ボトルが自動搬送されるという仕組みになっています。
「技術部は3つの課があり、私の所属している設計II課が担当しているのは、主にキャッパの設計です。設計I課はフィラ、そして設計III課は搬送系の設計を担当しています」(西出さん)

写真はフィラです。写真の左側が銀色に輝いているのは、機械がチャンバと呼ばれるステンレスの部屋の中に設置されているからです。
「これはペットボトル飲料用の無菌充填システムです。水やお茶や乳飲料などの低酸性飲料の場合は、安全に中身を充填するため、ボトル滅菌機からリンサ、フィラ、キャッパまでを無菌環境を実現するチャンバに設置します」(西出さん)

写真はCADルームで3次元CADを使い、強度解析をしているところ。
「自席では資料をまとめたり、解析結果を検討したり、メールを見たりなど事務作業をするだけで、設計や解析はCADルームで行います。現在、私が担当しているのはキャッパの設計です。お客さまの要望はさまざまです。年々、環境への配慮から容器は軽量かつ薄肉化が進んでいます。しかもそれらの形状はバラエティに富んでいます。例えばシャンプーなどのトイレタリー製品では、容器の形状で売り上げが左右されることもあるからです。だから意匠性の高い容器が増えているんです。そのようなデザインの容器にうまく中身を詰めキャップを閉める仕組みを作るのは、かなりの困難が伴います。それだけではありません。求められる生産能力も異なります。このようにお客さまごとに異なる複数の要件をいかに満たす設計をするかがこの仕事の難しさであり面白さ。CADで設計した後は、強度解析などを行い、求められる仕様が満たされているかチェックします」(西出さん)

組み立ての現場にもよく出向きます。
「組立図があるとはいえ、実際組んでみるとうまくいかないこともあります。そんなときは現場に出向き、図面を見ながら組み立ての担当者と話をして、対応策を考えます」(西出さん:写真左)

写真は8割ほど組み上がった無菌充填システムをチェックしているところ。
「ちゃんと組み上がっているか、確認したりもします。組み上がった後は、きちんと稼働するかなどをチェックして納品となります。その後はお客さま先に出向いてセッティングし、実際のラインで動かして最終確認をします。私たちが設計するボトリングシステムは受注生産製品で、お客さまごとに一品一品が異なります。そのため、万全を配して納品しても、お客さま先でうまく稼働しないこともあります。通常は、設計担当者がお客さま先でシステムの立ち上げに立ち会うことはありませんが、何か設計上のトラブルが発生した場合は、設計者もお客さま先に出向くことがあります」(西出さん)

営業など、社内の関係部署との打ち合わせも頻繁に行います。
「私たちの仕事は、さまざまな部署とかかわって進んでいきます。例えばどんなボトリングシステムを作るのか、お客さまの要望を聞き、仕様にまとめるまでは営業が担当します。その仕様を基に具体的な形に設計するのが私たちです。お客さまの考えを知っている営業とのコミュニケーションは欠かせませんし、そのほかにも組み立て部門や製造部門など社内の関係部署、もちろんお客さまと話をすることもあります」(西出さん)

 


■ ハタラクヒト 若手が活躍できる明るく、元気で、前向きなシゴトバ

引き続き西出さんに「澁谷工業 BS技術本部 技術部」というシゴトバの魅力、やりがい、職場の雰囲気などについてお話をうかがいました。

西出さんは2006年3月に金沢大学大学院自然科学研究科機械科学専攻修了後、4月に澁谷工業に入社しました。澁谷工業に就職を決めた理由は、「ゼミの先輩に澁谷工業で働いている人がいるのですが、その先輩の話を聞いて、ボトリングシステムを作るなんて面白そうだなと思った」からだそうです。

入社後はテストや部品の検査をする部署、品質をチェックする部署、組み立ての現場などいろいろな部署を経験した後、BS技術本部 技術部 設計III課に配属。
「最初は先輩について、交換部品など機械の一部の部品を設計することから始まりました。その後、徐々に任される範囲が大きくなり、4年前から現在の部署に移り、キャッパの機械設計に携わることになりました。当社は受注生産方式を採用しています。そのお客さまが求めるキャッパの設計を一人で任されています。大変なことも多いですが、若手のうちから大きな仕事を任せてくれるのでやりがいも大きいですね」

西出さんが今までで一番、大変だったエピソードを紹介してくれました。
「容器の向きをそろえてボトリングラインに供給するアンスクランブラの設計を任されたときのことです。通常、キャップの向きをそろえるソータは設計を当社で行っていますが、容器用のアンスクランブラの設計は外部の協力会社が行っているため、当社では初めてのチャレンジ。社内には詳しい人が誰もいません。そんな状況の中で、どうすればよいか考えました。考えがまとまらないときには、上司に相談したりしてなんとか完成しました。新しいことへのチャレンジは面白くやりがいもありますが、本当に大変でしたね」

ボトリングシステムの機械設計を行っている技術部では、西出さんのようにほとんどの社員が機械系出身者です。
「私は機械系出身というものの、大学・大学院時代は光の波長を用いた計測に関する研究を行っており、ばっちり機械系というわけではありません。もちろん、機械の基本的な知識は不可欠ですが、機械の知識だけがあればできる仕事というわけでもありません。営業や組み立てなど社内のさまざまな部署とかかわり、しかも並行して2〜3件の設計も担当するため、コミュニケーション能力と段取りする力が非常に重要になります。私は学生時代に飲食店でアルバイトをしていたのですが、そのときの経験が現在の段取りする力に生かされています」

澁谷工業には創業以来の日訓があります。その第1項目は「今日一日喜んで働きましょう」というもの。その日訓が社風にも表れているそうです。
「とにかく明るく、元気で、前向きな人たちが集まっています。そしてお客さまにもっと喜んでもらえるよう、何事にもこだわりを持って粘り強く取り組むという風土もあります。そんなポジティブな職場だから、やりたいという声も上げやすいんです。若手のうちから責任ある大きな仕事も任される、やりがいのあるシゴトバです」

■  社会や産業に貢献してきた歴史がわかる施設も

約800人(いすを並べた場合)が入る広さを持つホールです。毎月1回、本社周辺エリアの社員が集まり、誕生会と称して社長の話(事業の概況やその時々の話題)などを聞く機会が設けられているそうです。

ホールの1階には、いしかわモノづくり産業遺産として石川県から認定された、澁谷工業の機械が3台展示されていました。いしかわモノづくり産業遺産とは、石川県内の企業によって製造され製品化され、機械、繊維、食品、IT、伝統産業などの石川県の基幹産業の発展に大きく貢献した機械を対象とした認定制度。澁谷工業では二連式壜(びん)洗機(1953年発売)、竪(たて)型セライト濾過(ろか)機(55年発売)、連続洗米機(55年発売)の3つが認定されています。

ヒストリカルルームです。澁谷工業の沿革はもちろん、製品開発の歴史がわかる展示がなされています。

食堂です。数種類の日替わり定食のほか、うどん、そばの麺類などのメニューがあるそうです。

水曜日は週1回のカレーの日。
「カレーは人気メニューの一つです。普段はお弁当を持ってきている人でも、カレーの日は食堂を利用したりしていますから」(西出さん)

値段は280円です。

 


■ 渋谷工業にまつわる3つの数字

設立以来、ボトリングシステムのメーカーとして、国内外の市場をリードしてきた澁谷工業。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次回の記事で!

1.約6割

2.1200本

3.1000億円

 

前回(Vol.80 株式会社安川電機)の解答はこちら

 

 

取材・文/中村仁美 撮影/池田ひらく