三和酒類株式会社

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WOMAN'S CAREER

三和酒類株式会社

ほかぞの・りさ●総務部 企画室 チーフ。大分県出身。39歳。九州大学大学院農学研究科農芸化学専攻修了。大学院で植物中のタンパク質について研究していたことから食品メーカーで研究に携わることを志望し、九州地区内の企業を中心に応募。地元・大分県で研究職として働くことができることにひかれて1998年、三和酒類に入社した。研究所に3年間勤務したのち、総務部に異動。中期経営計画の策定や商品開発、採用・教育などに携わってきた。家族は夫と長男(8歳)、次男(5歳)、長女(2歳)。

■ あとに続く女性社員のために、自分がキャリアアップして道をつくっていきたい

麦焼酎「いいちこ」をはじめ、清酒、ワイン、ブランデー、リキュールなど幅広い酒類を製造・販売している三和酒類。日本酒メーカーとして大分県宇佐市で創業した同社が焼酎市場に参入したのは1979年。当時は米焼酎や芋焼酎が市場の大部分を占めていた中、「いいちこ」を全国に広く知られるブランドに育て上げた。

 

外薗さんは、同社に研究職として入社。焼酎の製造過程で副産物として発生する焼酎粕(かす)に含まれる有効成分とその分離方法の研究を任されたが、年次を重ねるにつれて興味を持つようになったのはマーケティングの仕事だった。

「当社にはマーケティング専門の部署がなく、営業部を中心に研究、製造、資材、総務など各部署の社員が参加して組織する“マーケティング委員会”が販売戦略の検討や商品の開発・改良提案をします。そこに私も加わっていたのですが、市場調査を通して消費者の方々の考えを知り、それを営業戦略や商品戦略に反映することの方が面白く感じるようになったのです」

 

その希望がかない、4年目に異動が実現。総務部で市場調査やマーケティング委員会の事務局、中期経営計画の策定などを担当することに。先輩に学びながら市場調査のノウハウを習得し、分析結果をもとに販売や商品開発に役立つ提案を行っていった。中でも大きな経験になったのが、6年目から7年目にかけて携わった新商品「いいちこスペシャル」の開発だ。通常よりも長期間貯蔵することでブランデーのような黄金色になり、よりまろやかなうまみが出る焼酎を開発し、従来の「いいちこ」よりも高級路線で販売することを目指したもの。各部署から集まった7〜8人のメンバーでマーケティング委員会が構成され、外薗さんは販売価格の検討・設定を担当するとともに、事務局として開発にかかわるすべての情報を集約し、進捗(しんちょく)管理を行った。

「中味の設計から価格設定、ボトルのデザイン、資材調達、販売戦略の立案に至るまで、各部署の知見を生かして分担して取り組みますが、私自身は事務局として予算に見合った調達ができるように交渉現場に立ち会うなど、全体を見て調整することが求められました。初めてのことばかりで、しかもメンバーは全員私より年上の男性でしたが、わからないことは各担当や現場の方に徹底的に聞き、教えてもらいながら取り組みました。社歴も浅くて何もわかっていなかったぶん、体当たりでぶつかっていけたのだと思います」

 

予算内に抑えるため、キャップの素材を当初予定していたガラスから樹脂に変更して一から樹脂メーカーを探したり、高級感のあるボトルデザインを生かしながら法律で義務づけられた表示を漏れなく印刷することに腐心するなど苦労を重ね、1年3カ月後の2005年3月に無事に発売。販売計画を上回る本数を売り上げることができた。

「当社の従来品のように色みのある焼酎を色付きのボトルに入れて販売するのではなく、透明のボトルに入れて色が見えるようにしたり、高級商材として販路を百貨店に限定したりするなど、これまで当社ではやらなかったことに挑戦した商品だったので、計画を上回ることができてよかったです。私自身も、原価の仕組みや価格設定の考え方など経営企画の仕事にも生かせる知識を得ることができました」

 

その後、長男出産のための産休・育休を経て、8年目からは中期経営計画の策定業務を中心に経営層のサポートや全社的なプロジェクトに携わるように。同社の中期経営計画の策定サイクルは3年。計画の3年目に評価と課題の洗い出しを行い、その上で次の3年間の方針を経営層にヒアリングして大枠を決定。それをもとに部門ごとに部門長が詳細な計画を立て、完成させる。このプロセスをとりまとめ、最終的な文書を作るのが外薗さんの役割だ。4年目に総務部に異動して以来、4度の計画策定に携わり、現在は5回目の計画策定に取り組んでいる。

「毎回感じるのは、現場の社員の望みと経営陣の意向を擦り合わせる難しさ。数値目標などできるだけ具体的な目標がある方が社員のモチベーションは上がりますが、数字にこだわりすぎて真の業務計画の目的を見失わないようにとの経営層の考えを、部門長に理解していただくことに時間がかかる場面もあります。一方で心がけているのは、部門長との会話や計画の文章においてできるだけ社長の意向に忠実に、わかりやすく表現すること。話が伝わっていく中で情報が錯綜(さくそう)したり趣旨が変容したりしないよう、自分の解釈は加えず、社長から部門長に直接話してもらう機会もできるだけ作るようにしています。そうして計画が完成し、年度末に開かれる全社会で社員全員に計画をまとめた冊子を配布し、社長が方針を説明されるときが、達成感を得られる瞬間です。経験を重ねても、社長が代わることで歴代社長のお考えを学んだり、組織やシステム変更などにより飽きることはありませんし、社内の人脈が広がる上、経営的な視点で会社を見られることは、ほかの部署にはない面白さだと思います」

 

また、3度の出産を経験し、働きながら子育てをしていることから、女性社員の活躍を推進する取り組みの推進にも注力している。

「もともと男性が多い会社だったこともあり、かつては女性が働き続けるための制度が整っていても何となく利用しづらく感じることがありました。そこで、長男を出産して以降、より女性がモチベーションを高く持って働くための取り組みを考え、機会を見て提案しています。一つ実現したのが、大分県内の企業の女性と情報交換する場を作ること。県内の有力企業を中心に声をかけ、賛同してくださった6〜7社と2010年に“働く女性の異業種交流会”を立ち上げました。2カ月に1回、担当者が集まって情報交換をしています。このような場を作ることで新しい制度を設計する際の情報収集がしやすくなりましたし、仕事の幅が広がっていく楽しさを感じています」

 

入社当初の志望とは異なる仕事に出合い、キャリアを重ねる外薗さん。これからも、社内外の多くの人とかかわる今の仕事に取り組んでいきたいと考えている。

「目下の課題は、これまで自分一人で取り組んできた業務をいかに部下に引き継いでいくか。2012年の秋から係長級の役割であるチーフを任され、部下を持つ立場となりましたので、いつまでも一人で仕事を抱えているわけにはいきません。また、当社で課長以上の役職に就いている女性は一人だけ。あとに続く女性社員がモチベーションを高く持ってキャリアアップしていくためにも、私自身が課長を目指して日々の仕事に取り組むとともに、総務部で経営企画や人事に携わる立場から、女性社員の活躍をバックアップする取り組みに注力していきたいと思います」

中期経営計画を作る上では各部署の管理職や経営層との密なコミュニケーションが欠かせない。相談や確認事項は内容に応じて直接会って話すことと電話を使い分けている。

外薗さんが開発に携わった「いいちこスペシャル」。ボトルの高級感が生きるよう、表示すべき情報は首のラベルとキャップ上部にすべて収めた。

 

■ 外薗さんのキャリアステップ

STEP1 入社1年目 研究所にて焼酎粕に含まれる有効成分に関する研究を担当

焼酎粕に含まれる乳酸菌の増殖を促進する成分を分離し、成分を同定する(物質が何であるかを決定する)ことを目指してその分離方法を研究。シンガポールで行われた学会でのポスター発表やアメリカ・カリフォルニア大学デービス校での研修などを通して実験技術や研究に関する知識を身につけたが、なかなか有効成分を分離することができず、成果が出ないもどかしさを感じていた。一方で、研究と並行して携わっていたマーケティングに興味を抱くように。

STEP2 入社4年目 総務部へ異動。マーケティング・経営企画業務に従事

毎年行う市場調査の設計・分析やマーケティング委員会の事務局、中期経営計画の策定などを担当。6年目からは「いいちこスペシャル」の商品開発にも携わり、価格設定とそれに基づく予算管理、各担当との調整・とりまとめを担った。7年目の1月から1年間、長男の出産に伴って産休・育休を取得。

STEP3 入社8年目 産休・育休を経て復帰。総務部にて経営企画業務に従事

中期経営計画の策定をはじめ、経営層の会議の事務局業務や経営サポート、社内の全部署の目標管理などを担当。しかし、復帰から約半年後に長男が大病を患ったため、退職を申し出たことも。上司のアドバイスで有休を取って様子を見たところ病状が好転したため、有休1カ月、介護休暇3カ月、計4カ月の休みを経て復帰した。復帰後は経営企画業務に加えて社内のプロジェクトにも参加。9年目の1年間は当時の副部長・課長職を集めて自社の経営をより良くするための施策を検討するプロジェクトの事務局を担当した。10年目の9月から1年間、次男出産に伴う産休・育休を取得。

STEP4 入社11年目 経営企画業務に加え、世界に焼酎文化を発信するプロジェクトに参加

再び経営企画業務を担当。加えて、同社のビジョンの一つである「iichikoを世界の酒に」を実現するための広報・営業方法を検討する「焼酎文化世界発信ワーキンググループ」にも参加。国内外の外国人向けの雑誌やフリーペーパーに焼酎の飲み方を紹介する連載記事の掲出や、中国やアメリカでのお酒の展示会への出展などに取り組んだ。外薗さん自身も海外営業に同行してアメリカ・ロサンゼルスのそば店での展示会に参加。試飲会を実施して海外の蒸留酒と麦焼酎との違いなどを紹介して回った。13年目には「働く女性の異業種交流会」を設立。その後、長女出産のため1年間の産休・育休を取得し、14年目の3月に復帰した。

STEP5 入社15年目 チーフに昇進。部下2名をまとめる

15年目の2012年8月にチーフに昇格し、採用・教育を担当する部下を2名持つことに。うち1人が産休中のため、現在は経営企画業務に加えて採用・教育業務のサポートも行っている。また、約350名の社員全員から会社への要望などをヒアリングする「全社ヒアリング」を2010年から実施。社員一人につき30分の時間をとり、3年間で全員の話を聞けるよう進めている。

■ ある日のスケジュール

6:00 起床。朝食を作り、夫が子どもたちに朝食を食べさせている間に身支度や子どもの支度を整える。次男と長女を保育園に送るのを夫に任せて7時25分ごろに自宅を出て車で会社へ。
7:35 出社し、事務棟の清掃。毎朝、工場や事務棟など、全社員が各自の職場を清掃する。
8:00 朝礼。社内で2つのグループに分かれてラジオ体操やその日の予定の確認、持ち回りのスピーチ、役員講話などを行う。終了後は自部署に戻って部内の朝礼。
8:15 業界誌や新聞で酒類業界の取り組みなどについて情報収集。その後、メールを確認。
9:00 週1回の課内ミーティング。会議の報告や各自の予定・進捗状況を共有し合う。
10:00 午後の社長ミーティングに向けた資料作成。
12:00 昼休み。社内のママ友とおしゃべりしながら社員食堂でランチ。
13:00 月1回の社長ミーティング。経営陣と企画室のメンバーとで経営課題や次の中期経営計画などについて議論する。
15:00 議事録を作成し、会議で出た課題を検討。
16:30 全社ヒアリング。2名の社員に30分ずつヒアリングを行う。
17:30 退社。学童保育に長男を、保育園に次男と長女を迎えに行く。家事・育児の大半を外薗さんがやっているため、8時〜17時の定時で仕事を終えられるようムダな時間を作らないことを意識している。
18:00 帰宅。夕食を作って子どもたちと食べ、お風呂に入れる。子どもたちを寝かしつけたあとに洗濯などの家事をし、時間があれば読書や撮りためていたテレビ番組を見る。
23:30 就寝。

■ 外薗さんのプライベート

読書が好きで、時間のあるときは推理小説などを読んで過ごす。「知らない世界を知ることができるのが魅力。子どもたちと定期的に市民図書館に通っていますし、知人から借りることもあります」。

遠方に住む妹や夫の両親に子どもたちの様子を伝えるため、ブログを公開。撮影した写真は定期的に現像して夫と自分の両親に渡し、自宅用にもまとめている。「皆で開いて楽しめることにアルバムの良さを感じています」。

旅行も趣味の一つ。本州に住む妹や弟のもとに3泊4日程度で遊びに行ったり、週末に1泊2日で近隣に出かけたりする。「子どもたちが楽しめることを考慮しつつ自分が行きたいところに行っています」。写真は妹一家、子どもたちと。

 

取材・文/浅田夕香 撮影/福田圭吾