4月30日に、注目されている金融商品が発売される。それは、オリックスが発行する社債で、正式名称は「オリックス株式会社第171回無担保社債」である。なぜ、この社債が注目されているのかというと、国内の事業会社が発行する個人向け社債としては、初の10年債だからだ。13年4月30日に発行され、償還は23年4月28日。これまで、銀行などの金融機関が、やや特殊な個人向けの10年債を出したことがあったようだが、事業会社としてはオリックスが最初となる。

 なぜ、これまで個人向け社債の10年債が出なかったのかというと、個人投資家には、10年間という長い年限はリスクになると考えられてきたため。単純に、「売れない」と思われてきた。それが、日銀の新しい黒田東彦総裁による?異次元の金融緩和?で、金融市場の金利が全般的に急低下し、しかも、その超低金利状態が当面続くだろうという見通しが強まった。その結果、多少年限が長くても、少しでも利回りの良い債券へのニーズは高まるはず、という判断が働いたようだ。

 そして、その「読み」は当たった。オリックス第171回債の募集期間は4月15日 〜 26日となっているのだが、締切日を待たずにすでに完売状態。引き受けをしたSMBC日興証券の各支店では、キャンセル待ちという。発行額は200億円と、個人向けとしては少なくない額だったが、好調のうちに販売を終えそうだ。

■オリックスの社債の格付けは?

 肝心の利率(「クーポン」という)は年1.126%で、当然、これが販売に寄与している。現在、国債の10年物の利回りは、日々乱高下しているが、0.6%前後といったところ。既存の社債の10年物の流通利回りは、比較対象は無いが、国債の利回りをベースにすると1.0%前後となろうか。そうした水準から見れば、1.126%は10年債といえども、まずまず魅力的。おそらく、国内初の10年債ということで、多少、利率がアップされたと推測される。100万円から購入できる点も好調の要因だろう。なお、オリックスの社債の格付けは「A」(シングルA)と、個人でも安心して買えるレベルにある。

 実は、先の3月には、「ソフトバンク株式会社第41回無担保社債」というのが発行され、これが4年債だったにも関わらず、利率が1.47%だった。黒田新日銀総裁の金融緩和が実施される前の条件だったとはいえ、いまとなっては完全に?お宝社債?だ。3000億円という巨額の発行量だったにも関わらず、販売状況は瞬間蒸発に近かった模様。ちなみに、このソフトバンク債で調達された資金は、米国の携帯電話会社のスプリント・ネクステルの買収資金となる。

 ソフトバンク債、オリックス債と、個人向け社債のマーケットは活況を呈してきた。今後は、NTTやセブン&アイ・ホールディングなども10年債を発行する可能性があるという(個人向けかどうかは不明)。発行体である企業にとっても、日銀の金融緩和によって低下した現在の金利は好都合なのだ。低利で長期間の資金調達をする上で、またとないチャンスとなっている。これから先、社債を発行する企業はどんどん増えるだろう。当コーナーでも、逐次、紹介していきたい。

(文/松岡賢治)

マネーライター、ファイナンシャルプランナー/シンクタンク、証券会社のリサーチ部門(債券)を経て、96年に独立。最新刊に『人生を楽しむマネー術』(共編著)。