従来よりも贅沢感を打ち出した商品も新たに投入した。

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価値の再編集などを意味する「キュレーション」というアメリカ生まれの概念が、ビジネス界で注目されている。総合デザインに佐藤可士和氏を迎えた新生セブン−イレブンを例に、この新時代の発想法を追った。

■コンテンツの「選択と絞り込み」により顧客に新しい価値をレコメンドする

自分たちのビジネスのあるべき姿を再定義すると、顧客に何をどのように提供すべきかが見えてくる。キュレーションの次のステップは商品やコンテンツの選択と絞り込みだ。

セブン−イレブンの場合、もともと限られた店舗スペースのなかで、数多くの商品群のなかから売れ筋商品を選択し絞り込む戦略を徹底していた。その理由を鈴木敏文氏はこう話す。

【鈴木氏】なぜ商品の絞り込みが大切かといえば、絞り込みによって商品のアピール力がまったく違ってくるからです。本来注目されるべき商品は10個置いたら10個売れるのに、3個ぐらいしか置かないと顧客は見落としてしまい、あまり売れません。この商品はぜひ売っていこうと思ったら、しっかりフェース(陳列面)をとることでベストセラーにしていく。それが絞り込みです。

――この選択と絞り込みの戦略は従来、主に弁当やおにぎりなど、すぐ食べられる即食性の高い商品についてもっぱら行われていた。これに対し、「近くて便利」のコンセプトを打ち出して以降、新たな売れ筋としてキュレーションの対象となったのが、食事づくりの手間や煩わしさの解決策としてのミールソリューションの商品群だった。鈴木氏がいう。

【鈴木氏】特に力を入れたのは惣菜類です。メニューの種類を増やし、プライベートブランドのセブンプレミアム・シリーズでもポテトサラダや肉じゃが、ひじき煮など盛りつけるだけのメニューや、さわら西京漬けのように焼くだけのメニューなどを順次投入していきました。

惣菜のほか、キャベツ、大根、ニンジン、キュウリなどの生鮮野菜を2分の1〜4分の1にカットし、あるいは2本1組で小分けにして店頭に並べるだけでなく、宅配サービスも開始しました。従来、セブン−イレブンでは生鮮食品は扱わない主義を貫いてきました。それを180度転換し、以前はスーパーで扱った商品を取り込めるようになったのも、「近くて便利」というコンビニの新しい意味づけをしたからです。

明確なコンセプトのもとで、提供する商品の照準を絞り込んでいく。絞り込みとは別のいい方をすれば、顧客に対してレコメンド(推奨)することです。店舗というプラットホームで、売り手としてレコメンドする商品やサービスを品揃えしていく。

惣菜メニューに照準を絞り込んだのも、スーパーに行かなくても、近くのコンビニで食事の用意ができるという生活の解決策をレコメンドするためです。だから、照準を明確に絞り込むほど、顧客にとって価値がとらえやすくなる。

モノが余り、消費が飽和した今の時代には、顧客が店に合わせて買い物をするのではなく、店のほうが顧客に合わせ、レコメンドする価値を絞り込んで提供する必要があるのです。

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セブン&アイホールディングス代表取締役会長兼CEO 
鈴木敏文(すずき・としふみ)
1932年生まれ。中央大学卒。62年イトーヨーカ堂入社、73年ヨークセブン(現セブン-イレブン・ジャパン)設立。92年より現職。

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(ジャーナリスト 勝見 明=文 岡倉禎志=撮影)