[其ノ四 注目商品 会社の年金対決編 確定拠出年金 VS. 退職金前払い]断然有利な確定拠出年金
スタートして11年を超えた確定拠出年金制度。自己責任で退職金をつくるこの制度と前払いで退職金をもらってしまう形をとるのと、正解はどちら?
退職金前払いの場合は、給与は増えるが税金も増える
2001年10月に「確定拠出年金法」の施行によってスタートした確定拠出年金。なかでも企業型は、昨年12月末時点で、約1万7000社が導入、加入している会社員は437万人を超えています。
企業型は、会社が社員一人一人の専用口座に毎月決まった掛け金を払い、それを元手にして社員個人が長期的に資産運用をすることで自分の退職金をつくる仕組みです(昨年1月より「マッチング拠出」として社員も拠出可能に)。
将来受け取る金額は、自分の運用の結果次第で変わってきます。運用商品は預金や保険などの元本確保型商品、投資信託など値動きのある投資商品。原則60歳以降に受け取れる給付金(退職金)は、そのときになって「年金」あるいは「一時金」を自分で選択して請求することになります。
会社によっては、社員が確定拠出年金に加入するかどうかを選択できるようにしているところもあります。社員が加入を選択しない場合は、毎月の掛け金に相当する金額を、給与に上乗せして支給するのが一般的です。
給与への上乗せは、確定拠出年金の専用口座で運用する資産が60歳までは引き出せないことを考えると、将来受け取る退職金を前払いで受け取っていることを意味します。「ここで確定拠出年金に加入するかどうかの選択に迷う人が多いんです。確定拠出年金として運用する場合と、自分の給与としていったんもらってからその分の金額を運用する場合のどちらが有利かを悩むのは当然でしょう」と言うのはファイナンシャル・プランナーの中村宏さんです。
「しかし、どちらが有利かは、税金面からいえば明確です。会社が自分名義の口座に確定拠出年金として掛け金を払ってくれる場合には、自分の毎月の税金や社会保険料の額に影響がありません。これに対して、いったん自分の給与として支払われる場合は、自分の毎月の税金や社会保険料の額も増えることになります。そして、給与から運用に回そうとすると、それを差し引いた手取りの金額ということになります」
確定拠出年金は運用中も受取時も税制優遇がある
また、運用中の利益についても、確定拠出年金の場合は将来の受取時まで課税はありません。運用益をまるまる再運用できるわけです。
一方、自分の給与からの運用では運用益が発生するたびに課税されるので、税引き後の金額を再運用することになります。
さらに確定拠出年金の場合、将来受け取るときに年金として受け取れば公的年金等控除の対象となり、一時金として受け取れば退職所得控除が適用されます。
しかし、自分の給与からの運用の場合には、特別な税務上の恩恵は受けられません。単純に運用益に課税されてしまいます。「確定拠出年金で困るのは、いったん加入したら退職金の前払い方式に変更してほしいと思っても不可能なことです。そして、原則60歳まではお金を引き出すことができないことです。住宅ローンがあったり、教育費がかさんだりして家計が苦しいという人、また50歳以上で運用期間が短いという人は、とりあえず前払いにするというのも手でしょう」(中村さん)
老後資金として備えるのであれば、確定拠出年金を利用するほうが断然有利。しかし、考え方はそれぞれの人の事情により異なります。
退職金の前払いを受けて今の生活を充実させ、その中で可能な範囲で老後に備え、自分なりに運用するという考え方も悪くはありません。
ただし、その場合、税金面では不利だということは十分認識しておいたほうがいいでしょう。
というわけで、今回の対決は確定拠出年金に軍配!
【今月の対決立会人】
中村 宏(HIROSHI NAKAMURA)
ファイナンシャル・プランナー
大学卒業後、ベネッセコーポレーション入社。2003年、FPオフィスワーク・ワークスを設立し、個人相談、セミナー講師、執筆などで活躍中。
この記事は「WEBネットマネー2013年5月号」に掲載されたものです。
退職金前払いの場合は、給与は増えるが税金も増える
2001年10月に「確定拠出年金法」の施行によってスタートした確定拠出年金。なかでも企業型は、昨年12月末時点で、約1万7000社が導入、加入している会社員は437万人を超えています。
将来受け取る金額は、自分の運用の結果次第で変わってきます。運用商品は預金や保険などの元本確保型商品、投資信託など値動きのある投資商品。原則60歳以降に受け取れる給付金(退職金)は、そのときになって「年金」あるいは「一時金」を自分で選択して請求することになります。
会社によっては、社員が確定拠出年金に加入するかどうかを選択できるようにしているところもあります。社員が加入を選択しない場合は、毎月の掛け金に相当する金額を、給与に上乗せして支給するのが一般的です。
給与への上乗せは、確定拠出年金の専用口座で運用する資産が60歳までは引き出せないことを考えると、将来受け取る退職金を前払いで受け取っていることを意味します。「ここで確定拠出年金に加入するかどうかの選択に迷う人が多いんです。確定拠出年金として運用する場合と、自分の給与としていったんもらってからその分の金額を運用する場合のどちらが有利かを悩むのは当然でしょう」と言うのはファイナンシャル・プランナーの中村宏さんです。
「しかし、どちらが有利かは、税金面からいえば明確です。会社が自分名義の口座に確定拠出年金として掛け金を払ってくれる場合には、自分の毎月の税金や社会保険料の額に影響がありません。これに対して、いったん自分の給与として支払われる場合は、自分の毎月の税金や社会保険料の額も増えることになります。そして、給与から運用に回そうとすると、それを差し引いた手取りの金額ということになります」
確定拠出年金は運用中も受取時も税制優遇がある
また、運用中の利益についても、確定拠出年金の場合は将来の受取時まで課税はありません。運用益をまるまる再運用できるわけです。
一方、自分の給与からの運用では運用益が発生するたびに課税されるので、税引き後の金額を再運用することになります。
さらに確定拠出年金の場合、将来受け取るときに年金として受け取れば公的年金等控除の対象となり、一時金として受け取れば退職所得控除が適用されます。
しかし、自分の給与からの運用の場合には、特別な税務上の恩恵は受けられません。単純に運用益に課税されてしまいます。「確定拠出年金で困るのは、いったん加入したら退職金の前払い方式に変更してほしいと思っても不可能なことです。そして、原則60歳まではお金を引き出すことができないことです。住宅ローンがあったり、教育費がかさんだりして家計が苦しいという人、また50歳以上で運用期間が短いという人は、とりあえず前払いにするというのも手でしょう」(中村さん)
老後資金として備えるのであれば、確定拠出年金を利用するほうが断然有利。しかし、考え方はそれぞれの人の事情により異なります。
退職金の前払いを受けて今の生活を充実させ、その中で可能な範囲で老後に備え、自分なりに運用するという考え方も悪くはありません。
ただし、その場合、税金面では不利だということは十分認識しておいたほうがいいでしょう。
というわけで、今回の対決は確定拠出年金に軍配!
【今月の対決立会人】
中村 宏(HIROSHI NAKAMURA)
ファイナンシャル・プランナー
大学卒業後、ベネッセコーポレーション入社。2003年、FPオフィスワーク・ワークスを設立し、個人相談、セミナー講師、執筆などで活躍中。
この記事は「WEBネットマネー2013年5月号」に掲載されたものです。