「秋葉原は憧れの夢の舞台。(コスプレイヤー=みるる 撮影=龍道)」

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■「仮装」じゃないんです

2010年の暮れ、秋葉原の中央通り沿いにある店舗内に観光案内所が設置された際、開所式で当時の観光庁長官が「秋葉原はコスプレして歩ける街」と紹介して下さいました。このように、秋葉原にはコスプレした人がいつも歩きまわっていると想像している人は多いのではないでしょうか。実際は毎日いつでも、まともなコスプレを見られるわけではありません

日本発祥の趣味文化であるコスプレは、国内外を問わず愛好者が増えたため話題にもなり、最近では一般の方にも広く認識され始めたと感じます。コスプレとは、アニメや漫画などの架空のキャラクターに「なりきる」ことです。それは欧米のマスカレードやハロウィーンなどの「仮装」とはまったく違います。「能面」が変身アイテムである日本の能のように、「コスプレ衣装」をまとうことによって自分とは異なるキャラクターに変身し「なりきる」、創造性の高い遊びなのです。

コスプレ関連ビジネスの市場規模は、衣装の出荷額で推計して400億円を超えるという見方もあります。しかし、この数字だけでコスプレビジネスの可能性を語るのは危険です。玩具業界の市場データと合わせて見ると、この400億円という数字の大部分は、コスプレ衣装とは異なる、パーティなどで使われる仮装用衣装が占めると考えられるからです。秋葉原でもコスプレ衣装を扱う店舗が出始めた2000年直前頃は、コスプレ衣装はアダルトビデオや仮装用衣装と同じ売り場に置かれていました。しかし実際には、「コスプレイヤー」と呼ばれるコスプレを楽しむユーザー層の大多数は、10代の女子です。その子たちがどのようにコスプレを楽しむか、そしてその楽しみをどのようにサポートすればよいかを見据えたコスプレ専門店が、徐々に秋葉原に生まれてきました。

■楽しむ側からプロが生まれる

コスプレ衣装のビジネスで先駆的な会社にCOSPA(コスパ)があります。秋葉原には5店舗のオフィシャルショップを構えています。COSPAはコスプレ衣装を単なる仮装用衣装ではなく、キャラクタービジネスの一環としてとらえています。

キャラクタービジネスを育てるには、キャラクターが一過性のブームで使い捨てにされるのではなく、長く愛されるように工夫しなければなりません。そのために、好きなキャラクターになりきるコスプレをキャラクターへの愛情表現と捉え、コスプレ活動を支援することもキャラクタービジネスの成功につながると考えているのです。COSPAは、アニメやゲームのキャラクターの版権管理者から許諾を得た高品質のコスプレ衣装を販売するだけでなく、いろんなアニメやゲームの見本市やファンイベントの会場でコスプレを楽しめるように尽力し、コスプレ文化の育成に貢献してきました。

最近では、コスプレを支援する業者だけでなく、ユーザー側であるコスプレイヤー自らがコスプレで培った才能を活かし、プロとして活躍する事例も出てきました。コスプレ衣装や小道具を自作していたコスプレイヤーの中には、服やアクセサリーのブランドを立ち上げ販売する人もいます。

また、デジタル一眼レフカメラや画像編集ソフトの普及により、コスプレの写真集を自主制作するコスプレイヤーも増え、中にはプロのカメラマンとして活躍する人もいます。さらには、コスプレ芸人のような、コスプレとエンターテイメントを融合した新しいサービスを生み出すコスプレイヤーもいます。これらの事業規模はとても小さなものですが、趣味と実益を兼ね合わせた新しい働き方として、大いに可能性を感じます。

ところで、最近、急激に増加し目立ち始めたコスプレ関連ビジネスがあります。しかもそのビジネスは、やっと世間にも正しく認知され始めたコスプレ文化を破壊しつつあるのです。この話は、次回にいたします。

(次回のお題は「コスプレをビジネスにするには(後篇)」。4月30日[火]更新予定)

(梅本 克=文(デジタルハリウッド大学客員准教授))