「ゴルフの祭典」マスターズが終わると、米ツアーはいつもの姿に戻る。サウス・カロライナのヒルトンヘッド・アイランドで開催されたRBCヘリテージは伝統ある古い大会。だが、マスターズの翌週というタイミングゆえ、伝統より祭りのあとの余韻のほうが強く感じられるものとなる。
【コラム】マスターズ前週にオーガスタに馳せる想い
 もう誰も覚えていないかもしれないが、昨年のヘリテージでは、世界一が入れ替わるという出来事があった。あのとき世界一に座っていたのはルーク・ドナルドだった。だが、マスターズで32位に終わったドナルドは、ヘリテージで8位までに入らなければNo.1の座から滑り落ちるという瀬戸際で必死で戦っていた。しかし、残念ながら37位に低迷し、世界一の称号をローリー・マキロイに譲り渡す結果になった。
 そして今年。マスターズの余韻はさまざまなところに感じられた。マスターズ最終日に好プレーを見せ、大いなる自信を得てヘリテージに臨んだ石川遼は初日から好プレーを続け、6位で最終日へ。「トップ10の位置から初優勝を狙う5人の選手」の1人に数えられていたが、最終日は80を叩く大崩れで48位へ。
 とはいえ、この日はヒルトンヘッド一帯に強風注意報が発令されるほどの荒天で、厳しいコンディションの下、スコアを大きく落としたのは石川に限ったことではなかった。この日、60代のスコアをマークしたのは、わずか3人。アンダーパーで回ったのは、わずか11人しかいなかった。
 最終日を2位に2打差の単独首位で迎えたチャーリー・ホフマンも最終日は77を叩き、6位に甘んじた。プロとしてのキャリアは13年目。米ツアー2勝を挙げているホフマンだが、驚いたことに首位で最終日を迎えたのは今大会が初めて。彼のスコアを乱したのは強風のせいばかりではなかったようだ。
 そんな中、優勝争いはグレーム・マクダウエルとウェブ・シンプソンに絞られた。マクダウエルは2010年の全米オープン覇者、シンプソンは2012年の全米オープン覇者。だが、ヘリテージで勝利を競い合っていた2人の胸の中にあったものは、過去の栄冠ではなく、前週のマスターズで予選落ちした悔しさだった。
 悪コンディションの中、マクダウエルは2アンダー69、シンプソンはイーブンパー71で回り、プレーオフへ突入。1ホール目でシンプソンがパーパットを外した瞬間、マクダウエルの米ツアー2勝目が決まった。
 首位との4打差をひっくり返した逆転勝利。マクダウエルは全米オープンの他には欧州ツアーで6勝を挙げているが、米ツアーのレギュラー大会を制したのは今回が初めてだった。
 「ゴルフというゲームは、勝つことより負けることのほうが多い。優勝するのは本当に大変なことだ」と勝利を喜びながら、前週のマスターズで予選落ちを喫した悔しさを思い出していた。「オーガスタでの予選落ちが今週のモチベーションになった。もしも先週、トップ10に入っていたら、今週のこの優勝はなかったかもしれない。不思議なことが起こるものだね」
 プレーオフで惜敗したシンプソンも、まったく同じ想いで戦っていた。だが、マクダウエルに一歩及ばなかったのは、ほんの少し自信が不足していたからかもしれない。
 72ホール目。6メートルのバーディーパットを沈めていたら、その場でシンプソンの勝利は決していた。「あのとき僕はあまり自信がないまま、あのパットを迎えてしまった」
 中尺パターで決めるパットはシンプソンの武器だ。何よりの武器に対する自信レベルの低下は、彼にとっては致命的。プレーオフでも2メートルのパーパットを外し、先週のマスターズとは異なる悔しさを噛み締める結果になった。
 昨年大会で8位以内を目指して達成できなかったドナルドは、今年は3位フィニッシュ。だが、彼の世界一は、今や遠い彼方……。
 マスターズの余韻は選手たちの胸の中に今なお目に見えない形で残っている。確かに見える現実は、先週のマスターズでアダム・スコットがグリーンジャケットを羽織り、今週のヘリテージでマクダウエルがタータンチェックのジャケットを羽織ったこと。それが勝負の世界だ。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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