相続税制改正の影響でどんなことが起きるのか
相続税の基礎控除の縮小は、都市部に土地を持つ家族を直撃する。基礎知識を学びながら、その構図をみよう。

葬式代と借金を引いて残った額が相続財産総額

ところで、相続税についてその課税の仕組みや手続きを詳しく知っている人は多くはないだろう。

相続税とは故人が所有していた財産を配偶者や子供などが受け継いだとき、財産が移動したことで課される税金。課税対象となる財産は、原則?お金に換えられるもの〞。土地、家屋、有価証券、預金、その他ゴルフ会員権なども含まれる。

また、?みなし相続財産〞と呼ばれ、本来の相続財産ではないが、同じく相続税の対象になるものとして、生命保険金、死亡退職金が含まれる。

一方、対象とならないのは、墓地や墓石、仏壇、仏具、神具のような祭祀財産などくらいだ。ちなみに、借金や飲み屋のツケは相続債務として、葬式費用と合わせて、相続財産から差し引かれた金額が課税対象になる。

相続の財産評価は独特。不動産は路線価で計算

次に気になるのは、誰が相続人かということ。いわゆる法定相続人だ。遺言がない場合は、法定相続人が法定相続分に従って財産を取得する。左の図は一般的な相続割合。妻と子供が相続する場合は、妻が半分、残りを子供が均等分割する。子供がいない場合は、父母や兄弟姉妹が相続人になることもある。

「相続税には独特の計算法が多いです。たとえば、不動産の評価額の計算。土地の場合、時価ではなく?路線価〞などの相続税評価額で計算され、一般的に実勢価格より安くなります。こうした計算はやはりプロに任せないと無理です」(長谷川さん)

基礎控除縮小で、相続税ゼロが87万5000円に

先ほどの話にあったように、相続税の計算法は独特だ。基礎控除という免税枠があり、これを差し引いた額に対して税金がかかる。「今回は相続税の基本ともいえる基礎控除にメスが入ったので、影響が大きいですね」(長谷川さん)

左下の図は相続税評価額7800万円の土地、現預金200万円を保有する夫が亡くなった場合、妻と子供2人にいくらの相続税がかかるかについて、現行と改正後で比較したもの。

現行は「5000万円+(1000万円×法定相続人3人)」で8000万円が基礎控除となった。つまりこの時点で「相続財産8000万円―基礎控除8000万円」で、相続税対象額はゼロとなっていたわけだ。ところが改正後は基礎控除の縮小で計算式が大きく変わり、「相続財産8000万円―基礎控除4800万円」で3200万円に対して、相続税がかかることになる。結果、この家族の場合、350万円の相続税がかかり、今までなら払わなくてもいい税金を払うハメに。基礎控除枠縮小の影響をもろに受ける例というわけだ。

ここで、相続税の計算の流れも簡単に把握しておこう。まず、法定相続分通りの取得金額を計算して、そこからそれぞれの相続税額を算出し、相続税の総額を出す。その後、実際の遺産分割の割合で案分し、税額控除などを行ない計算する。

8000万円の財産を相続した親子の場合、配偶者には税額の軽減制度により1億6000万円(もしくは法定相続分相当)まで税金がかからない。子供には87・5万円ずつの相続税がかかることになる。

長谷川 裕雅(HIROMASA HASEGAWA)
弁護士・税理士

東京弁護士法律事務所代表。早稲田大学政治経済学部卒業後、新聞記者を経て弁護士に転進。専門は相続税対策、事業承継、財産管理、遺言、遺産分割など。税理士と弁護士の資格を持つ、相続問題のスペシャリスト。著書に『磯野家の相続税』(すばる舎)など。



林 裕二(YUJI HAYASHI)
税理士

林税理士事務所代表。CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。東京経済大学経済学部卒業後、都内会計事務所を経て2000年に独立。著書に『税理士が教える決算書からわかる「最強割安株」』(インデックスコミュニケーションズ)など。




この記事は「WEBネットマネー2013年5月号」に掲載されたものです。