効率は地上の10倍/宇宙太陽光利用システムのイメージ図。宇宙で発電し、マイクロ波で地上に送電する。2.5km四方の太陽光パネルを高度3万6000kmの静止軌道上に建設する計画。(JAXA=提供)

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■宇宙太陽光発電:建設費は今後20年で数十分の一との試算も

宇宙空間で太陽光発電を行い、地球に電気を送る――。SFの話ではない。

「宇宙太陽光発電」は、日本政府が2009年に策定した「宇宙基本計画」で、「有人宇宙活動」と並び4つの研究開発プログラムの1つに位置づけられている。JAXA(宇宙航空研究開発機構)を中心に、30年代の実用化を目指して研究が進む。

仕組みはシンプルだ。太陽光パネルで発電した電力を、マイクロ波に変換して宇宙空間を伝送し、地上のアンテナで受信して再度電力に変換する。太陽光発電の原理は、地上と同じ。電力をマイクロ波に変換する技術は電子レンジや携帯電話と同じだ。マイクロ波から電力に変換する技術も、「無線給電」の複数ある方式の1つとして、携帯電話や電気自動車で実用化目前だ。

もちろん課題は多い。最有力の設計モデルは2.5キロメートル四方の太陽光パネルを高度3万6000キロメートルの静止軌道上に配置したもの。一方、宇宙最大の人工構造物は、高度400キロメートルにある100メートル級の国際宇宙ステーション。距離もサイズも、桁が違う。

コストの壁も厚い。原発1基分に相当する100万キロワット級の衛星1基の費用は、現有技術では数十兆円、発電単価はキロワット時あたり数百円にもなる。石油火力が十数円、地上での太陽光発電が40円前後なのに比べると飛び抜けて高い。ただし費用の大部分を占める宇宙への輸送コストについては今後20年で数十分の一に低下するとの試算があり、半導体のコストも大幅に下がると考えられることから、希望はある。

日本は宇宙太陽光発電の先進国だ。1980年代に研究を開始し、09年から、世界初の1キロワット級の高精度無線送電の地上での実証実験に取り組んでいる。世界の注目度も高まっている。技術の発祥国である米国は11年から研究開発を再開。中国、インド、欧州も関心を示し、動きを見せ始めている。

JAXAの佐々木進専任教授は「人類の未来を担うエネルギーになりうる」と話す。

「宇宙太陽光は昼夜や気候の影響を受けず、地上と比べて10倍の運用効率を見込めます。実用化されれば、資源を巡る争いも終わりを告げるでしょう」

■ゼロ・エネルギー・ビル:2030年までに新築。平均で達成が目標

究極の省エネビル、「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」をめぐる動きが活発化している。ZEBとは、省エネと発電・蓄電で正味(ネット)のエネルギー消費量がゼロのビルを指す。経産省は09年11月に「ZEBの実現と展開に関する研究会」の報告書を発表。10年6月に策定した「エネルギー基本計画」では、30年までに新築建築物の平均でZEBを実現するとの目標を盛り込んだ。「平均」とは、エネルギーを外部へ供給するビルが誕生することを見越しての表現だ。

12年2月には清水建設が日本初となるZEBの建設に着手した。山梨県の山林に建設する低層・複数棟の建物で、同規模オフィスと比べ45%の省エネを目指し、残る55%は太陽光発電やバイオマス発電、蓄電池などが賄う。

土地や環境資源が限られる都市部では、発電に多くを頼ることは難しく、ZEBの実現には省エネ性能の向上が欠かせない。経産省は12年、ZEB化を支援する補助金制度を新設。空調、照明、給湯など、5億円を上限に高性能の省エネ機器の導入を促す。

背景には「2020年25%削減」という温室効果ガス排出量の削減目標がある。その流れは原発事故による電力不安で加速。ZEBには、電力需要の緩和だけでなく、エネルギーの供給拠点としての期待も集まる。

ゼネコン各社も実現を急ぐ。大成建設は20年までにZEBを実現させる計画で、13年に竣工する3階建ての実験施設では、CO2排出量で75%削減を達成する予定だ。鹿島建設もZEBの実現を20年とし、11年に着工した複数のモデル事業では、従来比で40〜50%の削減を計画する。清水建設は20年の「ゼロカーボン(CO2排出量ゼロ)」を目指す。CO2排出量はエネルギー消費量とほぼ等しく、ZEBと同義だ。12年8月には排出量62%減(標準オフィス比)と「カーボンハーフ」の先を行く新社屋を竣工した。竹中工務店は20年のZEB実現を目指す。04年竣工の東京本店社屋では自立型ZEBに取り組み、初年度には34%減(旧社屋比)だったが、11年には太陽光発電の増設などで約60%の削減を達成している。

■ミドリムシ燃料:大量培養は世界初。CO2吸収する新エネ

動物と植物の両方の性質をもつ変な生き物「ミドリムシ」を原料とするバイオマス燃料が、まったく新しい純国産エネルギーとして注目を集めている。

開発に成功したのは、東京大学の研究室から生まれたバイオベンチャーのユーグレナ。ユーグレナとはミドリムシの学術名だ。社長の出雲充氏は「よく『青虫の仲間ですか?』と誤解されますがミドリムシは体長0.05ミリメートルの藻の1種。5億年前から生息し食物連鎖の最も下層で、地球の全生物の栄養を支える生き物です」と説明する。

出雲氏とミドリムシとの出合いは2000年のこと。東大農学部の後輩で、現在はユーグレナの取締役を務める鈴木健吾氏から「ミドリムシは植物のように光合成を行い、空気中の二酸化炭素を吸収して栄養分を体内に蓄え、動物のように細胞を変形させて移動する。DHAなど動物由来のアミノ酸と、カロチンなど植物性の栄養素両方を持っているため、理論上、人間に必要なすべての栄養素を作り出せる」と聞いた。学生時代にバングラデシュを訪れ、「世界の食料問題を解決したい」と考えていた出雲氏は、「CO2削減を果たしつつ完全栄養食にもなるミドリムシこそ、人類を救う食料だ」と確信する。

当時、ミドリムシの大量培養は前例がなかったが、出雲氏と鈴木氏は日本中の研究者を訪ね歩き、基礎技術を確立。05年に石垣島で屋外での大量培養に成功する。その後、ユーグレナはミドリムシを原料とするサプリメントや健康食品を次々と開発。資本金4億6065万円、社員数41名の企業となった。そして次の大きな一手として、構想するのが、ミドリムシから作り出すバイオ燃料の開発だ。

既存のバイオ燃料は生産に多くの農地が必要で、食糧問題にも関わる。一方、ミドリムシは培養に土を必要とせず、太陽の光と水さえあれば生産が可能。単位面積あたりの光合成の能力も高く、熱帯雨林の数倍にのぼる。

さらに灯油に近い成分が取り出せるため、精製すればジェット燃料に適することもわかった。このため航空会社からの要望を受け、10年から新日本石油(当時)、日立プラントテクノロジーとの3社で共同研究をはじめた。18年までの事業化を目指している。

(萱原正嗣(宇宙太陽光発電、ゼロ・エネルギー・ビル)/大越 裕(ミドリムシ燃料)=取材・文)