粗忽を描いた落語は多い。落語好きの僕としては大好きなジャンル。「粗忽の釘」とか「粗忽長屋」など傑作が多いが一番好きな噺は「堀之内」。志ん生のがいちばんいいと思う。粗忽を体現していそうな志ん生だからこそおかしみが滲む。この噺は最初から最後まで粗忽のオン・パレード。次々に繰り出される主人公の粗忽に爆笑したり、くすっと笑ったり。スラップ・スティック・コメディさながらのスピード感溢れる噺です。
 
僕は自他共に認める粗忽者です。本当は落語なんか聴いて笑っている場合ではないのです。粗忽だけならまだいいのですが、これに子供っぽい性格が災いして周辺に迷惑を撒き散らしています。「粗忽の使者」の地武田地武右衛門と「目黒の秋刀魚」に出てくる殿様を足して二で割ればVVの社長のようになります。
 
失敗談は数々あり過ぎるので、紙幅を肥やすために書き続けたいのですが恥は少なめに留めておきたい。チャップリンの有名な言葉に「喜劇は距離を置いた人生。悲劇は身近な人生」というのがあるそうです。周りで見ているぶんには喜劇でも当の本人にとっては悲劇なのです。だからこそ、「堀之内」のうっかり者は杉並のお祖師様へ粗忽治しの神信心へ出かけるのです。僕も大須観音くらいに行かないと。
 

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■プロフィール■ 

菊地敬一
ヴィレッジヴァンガード創業者。

1948年北海道生まれ。
賞罰共になし。
原付免許、普通自動車免許、珠算検定6級 保持。
犯歴前科共になし。

大学卒業後、書店勤めを経て、39歳で独立。
名古屋で、遊べる本屋『ヴィレッジヴァンガード』を創業。
独自のセレクトとPOP、ディスプレイで
「変な本屋or雑貨屋」としての地位を確立し,
396店舗を展開するに至る。