部下・チームの力を引き出す20冊 −役職別 鉄則本ガイド【課長・新任マネージャー編】

■「出世と金」では部下は動かない!

マネジャーに求められる能力は、以下の4つに集約されます。

まず第1は「経営視点」。これは、会社や世の中に対して何を成し遂げたいのか考える目線のこと。マネジャーと平社員の決定的違いはこの有無にあります。「宅急便」の生みの親である小倉昌男の『経営学』や松下幸之助の『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』など、経営者による指南書を読み、彼らがどんな信念を持ち、何を成し遂げようとしたか知ることは、大きな助けになるでしょう。

『小倉昌男 経営学』小倉昌男/日経BP社
「宅急便」の生みの親であるヤマト運輸元会長による、経営の教科書と言うべき一冊。全体を俯瞰する「鳥の目」を持つことの大切さを教えてくれる。

『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』松下幸之助/PHP研究所
松下幸之助が松下政経塾の塾生に語った言葉を編集。「人を動かすには、“人情の機微”を知ることが大切という幸之助の人心掌握術を学ぶことができる」。

『これからのリーダーに知っておいてほしいこと』中村邦夫/PHP研究所
パナソニックの6代目社長は、異なる時代背景の中で、幸之助の教えをどう実践したか。「幸之助の『リーダーになる人に〜』とセットで読むとよい」。

2つ目は「リーダーシップ」。先が見通せない時代、部下の問いに明確な答えを出せず、歯がゆさを感じることがあるかもしれません。実は今、リーダーシップそのものが転換点にきています。部下を教え導くリーダーではなく、彼ら自身が考え、答えを見出していく環境を整え、そのプロセスを支援することのできるリーダーが求められているのです。

社員が協働できる「場」をつくるのがリーダーの役割と説いた『場のマネジメント』は、その点で参考になるでしょう。資生堂の池田守男元社長とリーダーシップ論の第一人者である金井壽宏氏の共著『サーバントリーダーシップ入門』も、実践書として有効です。

『場のマネジメント』伊丹敬之/NTT出版
リーダーの役割は管理ではなく、部下が協働するための「場」を与えること。幸之助やホンダ創業者・藤沢武夫を達人として挙げ、そのノウハウを開陳する。

『サーバントリーダーシップ入門』池田守男、金井壽宏/かんき出版
資生堂で経営改革を実行した著者が、真のリーダーシップには部下に下から支えてもらうのではなく、自ら部下に仕える、逆転の発想が必要であると説く。

3つ目は「マネジメント」です。これが非常に難しい時代になりました。27歳の社会学者・古市憲寿氏が書いた『絶望の国の幸福な若者たち』にあるように、現代の若者の価値観や人生における目的は多様化しています。「出世して、貯金して、一戸建てを建てて……」という大多数が抱いていた価値観は、もはや過去のものです。

上司が必死に旗を振っても目的地はバラバラですから、うまくいくはずがありません。若い部下たちのやる気を引き出し、能力を伸ばすためにはどうすればいいか。『ハッピー社員』や『ダイアローグ 対話する組織』に、そのヒントを見出すことができます。

『ハッピー社員』金井壽宏/プレジデント社
リーダーが嬉々として働き、仕事の喜びを伝えられなければ、部下は気持ちよく働けるはずがない。そんなハッピーに働くためのエッセンスがつまった一冊。

『ダイアローグ 対話する組織』中原淳、長岡健/ダイヤモンド社
ビジネスにおける基本は「ダイアローグ(対話)」にある。「対話なくして成長なし。職場におけるコミュニケーションの意味を再認識させられる」。

最後は「グローバルマインドセット」。グローバル化に対応するには世界を肌で感じるしかありませんが、その前に日本の強みや弱みを知ることも重要です。『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』は、日本のよさを再認識できる一冊です。

今の時代、絶対的な答えなどありません。だから本を読む、国外に出る、人に会うなどして自ら思考することこそがマネジャーに必要なのです。

『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』竹田恒泰/PHP新書
世界で注目を浴びる日本。そのよさはどこにあるのか? 「外からの見方と日本人の本質を理解し、そのよさ、強さを認識することがグローバルの第一歩」。

『リーダーは半歩前を歩け』姜尚中/集英社新書
理想のリーダーとはカリスマではない。人より少し先に考え、行動する人物のことである。古今東西の政治家の分析を通じ、今求められるリーダー像を探る。

『論点思考』内田和成/東洋経済新報社
問題解決の最上流にある論点(解くべき問題)を見出し、設定することこそが、リーダーに求められる力である。「論理では部下は動かないことを知る本」。

『新任マネジャーの行動学』山本紳也、鳥谷陽一/日本経団連出版
部下と職場を元気にする30のポイントを解説。部下の評価の仕方やコミュニケーションの取り方など、初めて管理職になった人に役立つ情報が満載。

『そんな仕事は部下にまかせろ!』ダナ・ジェネット/ランダムハウス講談社
タイプの違う2人のマネジャーの挿話を読み進めながら、管理職の心得を学ぶことができる。「私自身がマネジャーになったときに読み、非常に役立った」。

『人の活かし方・組織の動かし方』山田雄一/日本経団連出版
「課長や新任マネジャーのために編まれた教科書のような本」。日々の仕事に取り組み、部下を導き、組織の未来を築くためのヒントを与えてくれる。

『星野リゾートの教科書』中沢康彦/日経BP社
老舗旅館から急成長した星野リゾートの成功の秘密は、現場視点のマネジメントにある。星野社長が参考にした本30冊とその実践例をわかりやすく解説。

『トヨタ 愚直なる人づくり』井上久男/ダイヤモンド社
50人以上のトヨタ関係者への取材によって明かされる、トヨタという会社の仕事と組織。「常に“人がベース”という考え方は、マネジメントの参考になる」。

『絶望の国の幸福な若者たち』古市憲寿/講談社
27歳の社会学者による現代若者論。「自分の世代との価値観のギャップに驚愕するが、若者の思考を理解することは、マネジャーにとって欠かせない」。

『人材の複雑方程式』守島基博/日本経済新聞出版社
なぜ成果主義は機能しないのか。なぜ日本の職場は働きがいがないのか。企業が直面する課題とその対策を解説。「人材マネジメントを実践的に学べる本」。

『石橋を叩けば渡れない。』西堀栄三郎/生産性出版
南極越冬隊やヒマラヤ登頂に挑んだ著者による自伝的エッセイ。「この本で、そもそもリスクマネジメントは実行するためにあるのだと再認識させられた」。

『ザ エクセレントカンパニー』高杉良/毎日新聞社
東洋水産の米国法人マルチャンINCをモデルに、日本企業の成長を描いた長編小説。「終身雇用など、高度成長期の日本企業の強さを、今改めて考えたい」。

『世界史の中から考える』高坂正堯/新潮選書
政治学者、歴史家である著者が史実を辿りながら日本の行く末を示唆する。「過去の歴史に学ぶことは多い。刊行年は古いが日本を考えるにふさわしい本」。

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プライスウォーターハウス クーパース パートナー 
山本紳也 
慶應義塾大学工学部卒業、イリノイ大学経営大学院修了。2006年より現職。著書に『新任マネジャーの行動学』ほか。

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(プライスウォーターハウス クーパース パートナー 山本紳也 構成=飯島裕子 撮影=上飯坂 真)