もしも科学シリーズ(59):もしも人類が絶滅したら


国際自然保護連合(IUCN)の資料では、2万種以上の動植物が絶滅の危機にひんしているという。生態系のバランスが崩れれば、やがて人類にも悪影響を及ぼすだろう。



もし一夜にして人類が滅亡したらどうなるのか?制御されないダムや発電所、分解しない合成樹脂や放射性物質が残り続け、他の生物が住めない死の星へと変えるだろう。



■プラスチック・エイジ



現在の地球は46億歳なのに対し、人類の誕生はわずか300万年にすぎない。4m60cmの紙で年表を作ると、人類の歴史をすべて書き込んでもたった3mmの幅に過ぎず、地球から見れば一瞬ともいえる歴史しか持っていないのだ。



短時間で地球のほとんどを意のままにできるようになった人類も、他の生物と同様に、永遠に存続できるとは限らない。米国のジャーナリスト、アラン・ワイズマン氏は、著書「人類が消えた世界」で地球に起きる変化を時系列に記している。



抜粋すると、



 ・7日後 … 発電所の冷却システムが止まる



 ・3年後 … 寒暖によって建物に亀裂が入る



 ・20年後 … 橋や道路の鉄柱が腐食



 ・300年後 … ダムが枯渇またはあふれる



 ・数千年後 … 地上の建造物はほとんどなくなる



その後は新種の微生物や生命体が誕生する可能性が示唆されているが、確固たる根拠はない。それよりも人類が残した負の遺産が、他の生物の生存を妨げる方が確実だ。



材木や鉄のような自然由来の物質なら、時間とともに分解され土に帰るので心配ないが、プラスチックを代表とする合成樹脂は非常に分解されにくい。塩化ビニル管・継手協会(JPPFA)の資料によると、水道に使われる硬質塩ビ管の耐用年数は50年以上との評価結果がある。



実際に5〜34年間使用したパイプに対して試験をおこなった結果だから、信頼性の高い数値だ。



耐用年数はパイプとしての機能が保たれているかを意味し、経年劣化、引っ張り強度、水圧に耐えられるかを表し、素材が分解されるまでの時間ではない。昨今では生分解性プラスチックが研究されているが、土中の微生物によって分解されるため上下水への使用は難しい。



つまり、人間が処理しない限り、環境へ負担をかけ続けることになるのだ。



建物に使われる建築材料も分解しにくい。税法上の耐用年数では一般的な木造住宅は22年、鉄筋づくりは27年、重量鉄骨になると34年に延び、鉄筋コンクリートでは47年とされている。



鉄筋コンクリートは、サビに弱い鉄筋がコンクリートで覆われるため耐久性は一気に向上するが、肝心のコンクリートは20〜30年で1cmほど浸食されてしまう。



一般的な設計では2〜3cmの厚みがあるので鉄筋に達するには60年ほどかかり、これをもとに耐用年数が割り出されている。コンクリートが失われた後は鉄柱と同じペースで腐食が進むと仮定すると、少なくとも60+20=80年は朽ちずに存在し続けることになるのだ。



■減らない負債



放射性物質になると、さらに長い年月を要する。発する放射線量が半分になるまでの時間を表す半減期をみると、人工衛星の原子力電池などに使われるプルトニウムのうち、最も長いプルトニウム244でもおよそ8,000万。



しかし、原子力発電の燃料や砲弾に使われるウラン235は約7億年、ウラン238はおよそ45億年とケタ外れに長い。



45億年で50%、90億年で25%と半減し続けても、およそ1,000分の1にまで減るには450億年が必要だから、50億年ほどと予測されている太陽の寿命よりもはるかに長く、地球が残っているのかも分からない先の話となる。



工場や核施設から漏れ出せば、地球は寿命を迎えるまで不毛な星であり続けることになるのだ。



ただし、億年単位の未来となると、話は大きく変わってくる。2億5,000万年後には大陸移動が進み、1つに合体するとシミュレーションされているからだ。



1つになった大陸はあまりの広さのため内陸部は砂漠化し、気流/海流の変化から海面は70mも上昇して過酷な環境へと変わる。そのため、生存できるのはバクテリアぐらいと考えられているので、どのみち地球の生物は試練を迎えることになりそうだ。



■まとめ



もしも人類滅亡後に考古学者が現れたら、出土品の多くは原形をとどめているはずだから、われわれの生活を容易に知ることができるだろう。



鉄器、石器に続いて何時代と名付けられるのか興味深いが、「プラスチック時代」は軽そうなのでぜひともご遠慮いただきたい。



(関口 寿/ガリレオワークス)