誰が待っているわけでもないが、南海ファンだったことを標榜している手前、行っておかないと義理が悪い気がして京セラドームに出かけた。少し気が重たかった。
ファーストピッチセレモニーで、門田博光が出てきた。現役時代、近鉄特急で大阪球場に通う門田を何度も見た。濃紺のスーツを身にまとった門田は、背丈は私と変わらなかったが蒸気機関車のようにがっちりとして精悍だった。

その門田が、女性係員に先導されながらよたよたとマウンドの近くまで歩いていく。ピッチャーズプレートの手前から、申し訳なさそうにボールを投げた。
バッターボックスには現在のホークス44番、柳田悠岐、捕手役はT-岡田。
投げ終わると門田は二人に歩み寄ったが、まるで別種の生き物を見るように小さかった。

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私が、京セラドームに行くのが気が進まなかったのは、こういう形で“歳月”を見るのが嫌だったからだ。
でも、門田に対して大きな拍手が起こったときに、胸が熱くなった。

門田は、一昨年、関西独立リーグの大阪ホークスドリームの総監督を務めていた。人がほとんどいない球場で、ふがいない選手たちに怒声を浴びせかける門田の声を聴いた。
重症の糖尿病で闘病中と聞くが、まだ熱い心は持っているのだろう。

セレモニーやイベントは、FOX TVが仕切っている。非常に洗練されている。このメディアの参入は、既存メディアに大きな影響を与えるのではないか。

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さて、近鉄と南海になりきった両チーム。
近鉄バファローズのユニフォームにそれほど違和感はない。岡本太郎デザインのマークのユニフォームは、平成に入っても見ることができたし、ストッキングが見えないロングパンツの着こなしも昔と変わらない。

ただ、オリックスが近鉄の正系か、と言われると疑問符がつく。阪急と近鉄のハイブリッドだが、ようするに近鉄を吸収合併したわけだから。スージー鈴木さんが2004年を忘れるな、と力説されるのもわかる。

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南海のユニフォームは違和感があった。みんなパンツの裾を高くたくし上げていたのだ、川崎宗則と同じスタイルだが、それでは足が長く見えすぎて、格好良すぎる。

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昔の南海ナインは、もっともっさりした着方をしていた。野村克也、桜井輝秀、藤原満など当時の選手は足が短かったからではあるが、パンツをふくらはぎの一番太い位置あたりで止めると、膝がしらの形が浮いて見えて、お百姓さん風に見えるのだ。そうでなくては。

合格点をあげられそうなのは、三塁の笘篠コーチだけだった。

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私は西と言う投手は好きではなかった。投球間隔が長い上にコントロールが悪く、いらいらするからだ。しかし、昨年のノーヒットノーラン以来、テンポが良くなって、力強い投球に変わったのだ。今日も快調。

対照的に山田は甘いところに入って痛打された。

バファローズは上位から下位までバットがよく振れていた。特に李大浩は、柔らかいバッティングで球を自在に飛ばしていた。私はこの選手は苦労するだろうと予想したのだが、2年目も健在だ。不明を恥じたい。

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糸井も元気だし、今年のバファローズは期待が持てそうだ。

ホークスは、打線に活気がない。本多が淡白な打撃を繰り返しているし、ペーニャは打てそうな感じがしない。ともに実力者だからいずれ打ち出すのだろうが、当面は我慢の時間が続く。

バファローズは10安打したが、残塁が多く、大雑把な試合になった。しかし、ファンは大喜びだった。

7回、南海ホークスの歌が流れる。灰田勝彦が歌っている“正調”だ。大阪球場では違う録音だった。裏には近鉄バファローズの歌も。
私はどちらも間違えずに歌えた。風船が飛ぶのはうっとうしかったが、来てよかったと思った。

南海の応援席から、早口のかなりきつい野次が飛んでいる。30年前、南海ホークス私設応援団を率いていた小寺さんの野次だと思った。私はこの人と短い期間だが、一緒に仕事をしたことがある。
野次で場内がどっと沸く。その短い時間だけ、大阪球場にいるような感じがした。

プロ野球チームが運営会社が変わっても、その歴史を一本のものとして受け継いでいくのは良いことだ。

西武ドームにも稲尾和久のプレートが付くようになったし、今日も映像で野村克也や鈴木啓示などの写真が紹介された。
野球界は、必ずしも良い方向に進んでいるとは言い切れないと思うが、素晴らしい企画もたくさん行われている。そう実感した。

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