アベノミクスでインフレへの備えが求められる。「公的年金はインフレに対応できる」ということなら安心していられるが、さにあらず。「年金博士」として知られる社会保険労務士の北村庄吾氏は「公的年金だけを信じず、いますぐ“自分年金”を作り始めるべき」と指摘する。以下、北村氏の解説だ。

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 まず検討すべきは、確定拠出年金「401k」だ。聞いたことはあるかもしれないが、自営業者やサラリーマンで加入している人はわずか15万3500人(2012年12月末時点)。制度が活用できる人の0.4%に留まっている。インフレ時代が見えてきた今こそ、真剣に考えるべきである。

 401kとは、現役時代に一定の掛け金を納め、それを運用した資金を将来受け取れる私的年金のこと。受給開始年齢は60歳から70歳の間で選択が可能だ。

 会社が導入して社員のために掛け金を出す「企業型」と、「個人型」の2つに大きく分かれ、自営業者やフリーランス、勤務先に厚生年金基金や確定給付企業年金など企業年金制度のないサラリーマンが加入できる(専業主婦などの第3号被保険者、公務員は加入できない)。

 加入者が拠出した掛け金は、元本確保型の商品や投資信託など、自分で運用スタイルを決められる。投資信託は日本株、外国株、日本債券、海外債券を中心としたものなどから選んで運用できる。株式を組み入れたファンドで運用すれば、インフレ局面では運用益が上がりやすいのでインフレリスクに対応できることになる。

 401kが一般的な資産運用と異なる大きなメリットの1つは「節税効果」だ。掛け金は月額5000円からで、サラリーマンの場合は最高2万3000円まで掛けられる。

 その金額は全額所得控除できる。所得税は所得によって税率が変わるが最低でも5%、住民税は一律10%の税金がかかる。401kの掛け金はこれがかからないのだから、合わせて年間15%の利回りを得るのと同じことになる。さらに、運用益も非課税だ。

 例えば年収500万円で妻と子供1人がいる35歳サラリーマンが「個人型401k」に加入し、月額2万3000円、平均年利3%で運用した場合、所得税・住民税が年間4万4160円節税できる。昇給も考えれば、60歳までで約120万円の節税になる。

 さらに一般的な金融商品の利息や運用益には20%課税されるが、401kは非課税。これで約82万3000円節税できる。節税メリットだけで200万円以上になるわけだ。

 60歳までの掛け金(拠出元本)合計は690万円だが、年利3%で運用できれば約1030万円になる。これを10年間で年金として受け取れば、公的年金に加えて月々約8万6000円受け取れる。

 自営業者の場合は月額6万8000円まで掛けることができる。さきほどのサラリーマンと同じ条件(35歳、妻子ありなど)で、仮に月額6万8000円掛けると、年間の所得税と住民税は13万円以上安くなり、運用益の非課税メリットと合わせて約660万円も節税できる。拠出元本合計は2040万円で、年利3%で運用できれば約3040万円になる。

 もちろん「月額6万8000円」も将来のために掛けられる人は多くないだろうが、「老後のため」として余裕資金を銀行預金しているのであれば、401kのほうが税制的にはかなり有利になる。節税効果は保険会社のホームページなどで簡単に試算できるので、ぜひ一度シミュレーションしていただきたい。

 401kで「自分年金」を作る場合、注意すべき点がある。1つは運用リスク。もし運用がうまくいかなければ元本割れになることもあるので、運用先をいくつかに分けてリスクを分散させること。もう1つは60歳まで引き出せないことである。教育費用などで突発的に資金が必要になっても、401kに拠出した掛け金はあてにできない。

※SAPIO2013年5月号