「セデック・バレ」美術監督を務めた種田陽平

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台湾史上最高額の7億台湾ドル(約20億円)をかけて製作、現地で大ヒットを記録した「セデック・バレ」(二部作)が、4月20日に公開される。1930年、日本統治下の台湾で先住民セデック族が起こした反乱を描いた歴史アクション大作で、ウェイ・ダーション監督(「海角七号 君想う、国境の南」)が構想から10年以上を経て映画化した。日本映画美術界の第一人者として知られ、本作の美術監督として現地に壮大なセットをつくり上げた種田陽平氏に話を聞いた。

歴史考証に基づき、ひとつひとつ緻密につくられた「霧社街」をはじめとした集落、建物は作品を見る者をとたんにタイムスリップさせてしまう見事なもの。台北近郊の山を切り開いてセットをつくったというスケールの大きさにも驚かされる。このような大掛かりな装置を手がけることは、海外の作品では珍しくはないという。「悪いことではありませんが日本では安全性をより重視するので、それによって映画のケレン味や醍醐味、スケール感が失われることがある」と指摘し、「日本でも黒澤明監督の時代はリスクを恐れず撮影をしていただろうし、山を切り開いて村を作ったりもしていた。黒澤組には参加できなかったが、今回の『セデック・バレ』ではそういう映画づくりの原点のような場所に立ち戻る喜びがありました」と振り返る。

その見事なセットも、劇中のセデック族の暴動によって次々と破壊されてしまい、そのリアルな惨状は息をのむほどだ。「きれいなセットを作って映画の中でそのままというよりも、闘いがあって破壊されたり、『キル・ビル Vol.1』の青葉屋のセットのように殺し屋がやってきて血だらけになったりと、役者が使って撮影で変化していく映画的なカタルシスがあるセットをつくるのが好きですね。それだけ、映画にドラマが生き生きと存在する、ということでもあるので。人の生き死にと同じようにセットにも生きざまがある。それを見届けられるのはこの仕事ならではの醍醐味」と語る。

作品のテーマとして、台湾先住民の抗日武装蜂起「霧社事件」を扱っていることについては「台本を読んだり、資料にあたっていくうちに、もしかしたらこの映画、日本では公開されないかもしれないな、という気持ちになった」と明かすが、完成作を見てその考えは吹き飛んだ。「第1部を見れば必ず第2部も見たくなる。文化の衝突、という史実を生き生きと描き出したアクション娯楽作品と感じてもらえると思った」

クエンティン・タランティーノ監督の「キル・ビル Vol.1」、チャンイーモウ監督の「金陵十三叙」、俳優キアヌ・リーブスの初監督作品「太極侠」をはじめ、国外の監督からのオファーを数多く受けている。今回のウェイ監督とのタッグについてはウェイ監督は作りたいものがはっきりしていた。そして監督には、映画に対する情熱、純真さみたいなものを感じた」と述懐。そしてこれまでの経験からこう語る。「いい監督は子どものような心を持った人が多いと思います。子どもの頃に友だちと遊ぶときも、相棒と話が合うかどうかが基本だったように、僕も、自分の遊び心を保持して、監督のそれと対話させたいと願っている。ビジネスマンみたいな人に、きちきちっと説明されるとあまり遊び心は刺激されないけれど、子ども心を持っている監督はこちらの提案にも面白がって乗ってくれる。さぁ、この映画で一緒に思いっきり遊ぼうよ、となれる。そういう気持があれば、映画づくりの厳しい現実にも立ち向かうことができるし、そのようにしてつくった映画はお客さんにも必ず受け入れてもらうことができると信じています」

完成までの苦労も多かっただけに、本作の日本でのヒットを期待している。「ウェイ監督は日本人、台湾原住民を公平に見つめ、異民族間に生じた文化の衝突を克明に生き生きと描き出しました。アメリカ映画が数々の娯楽映画でネイティブ・アメリカンと白人の衝突の歴史を描き出してきたように。もちろん日本人としては複雑な気持にもなりますが、映画はアクション娯楽映画として面白く出来ているし、歴史の中にこういう人間たちが存在した、というドラマを観てもらいたい、と思います。予算と時間をかけつくりあげた映画です。面白さの点では自信をもっておすすめできる」と太鼓判を押した。

キャストには実際の台湾原住民族の役者を起用し、日本人キャストとして安藤政信、木村祐一らが参加。セデック族のひとりとして出演しているビビアン・スーが資金援助したことも話題となった。種田氏が生みだした空間芸術の中で、民族の誇りをかけて戦うセデック族の男たち、そして激しい戦いのあとに残される悲劇を圧倒的なスケールで描ききった本作を是非スクリーンで体感してほしい。

「セデック・バレ 第一部 太陽旗」「セデック・バレ 第二部 虹の橋」は4月20日公開。

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