[其ノ三 投信ファンダ編]通貨選択型が残高10兆円を突破
高い分配金を捻出するために、生み出されたのが通貨選択型投信です。投信全体の純資産総額の約2割を占め、存在感を増しつつあります。


投信全体の約2割は通貨選択型投信。レアルの人気が復調

2008年8月の誕生から4年半ほどが経過した通貨選択型投信は、今年1月末時点で純資産総額が初めて10兆円の大台を突破しました。残高ベースで見ると、今や国内追加型株式投信の約19%が通貨選択型によって占められている状態です。今回は、高分配投信のパイオニア的存在である通貨選択型の変遷を見ていきます。

通貨選択型は投資先資産のインカムゲイン(利子や配当など)やキャピタルゲインに加えて、為替取引による収益(ヘッジプレミアム)を分配原資に上乗せすることで、高い分配を追求するタイプの投信です。

「グロソブ」の分配金が引き下げられたのが、8年前。そこで通貨選択型が注目されたのには、「円高・株安・金利低下」という、投信の世界における三重苦に立ち向かうためのスキームが必要だったからです。

つまり通貨選択型は、最初から高水準の分配金を捻出することを想定して設計された投信なのです。

選択する通貨コースによっては1万口当たり150円という、きわめて高い分配金が毎月支払われたこともあり、通貨選択型は瞬く間に人気を集めました。ところがその後、欧州債務不安による世界的な相場低迷と、実力以上の分配金を支払っていたいわゆる「タコ足配当」の投信が問題視されるようになると、人気に陰りが見え始めました。

ヘッジ対象の通貨コースも、圧倒的な人気を誇っていたブラジルレアルに代わって、消去法的に豪ドルや日本円といったリスク回避的な通貨が選ばれるようになりました。



こうした事態を打開したのが、通貨選択型にオプション取引を上乗せして、さらなる分配原資の確保を目指す「カバードコール戦略型」と呼ばれる新タイプの登場です。

一般的な通貨選択型が2階建てだとすれば、オプションを上乗せしたカバードコール戦略型は3階建ての投信といえます。オプション取引とはすなわち「権利の売買」です。最近、設定が相次いでいるオプション内蔵型の投信は、コールオプション(事前に決められた価格で、将来のある一定期間内に、ある資産を買うことができる権利)の売却によって得られる収益(オプションプレミアム)をも分配原資としています。オプションの内容や、権利が行使されるタイミングによっては損失を被る可能性もありますが、今年も設定が続いています。

このように、4年ほどですが歴史をひもといてみると、通貨選択型にも実にさまざまな投資対象資産やヘッジ対象通貨を掲げたファンドが誕生しています。

最近の資金動向をヘッジ対象通貨別に見てみると、ブラジルレアルの人気が戻りつつあります。また、為替相場が円安に振れても、日本円は根強い支持を集めています。これまでは高水準の分配金を捻出するための手段として捉えられてきた通貨選択型の為替ヘッジですが、今後はリスクコントロールの手段として活用する例も増えそうです。



【今月の投信師匠】
篠田尚子(SHOKO SHINODA)
トムソン・ロイター・マーケッツ

慶応義塾大学法学部卒業。リッパー・ジャパンに所属するファンドアナリスト。情報量の多さと分析の鋭さは天下一品!



この記事は「WEBネットマネー2013年5月号」に掲載されたものです。