そして、巻きずし。こちらは味に想像がつくのである意味つまらないチョイスではあるが、南国ではマンゴーが入っていると聞いていたのでそれを期待してのオーダー。牛丼やラーメンより作るのに手間がかかるようで、しばらくしてから運ばれてきた。天つゆか? と思われるほどたっぷり入った醤油とともに。

つぶさに観察すると、おお! 確かに、マンゴーが入っている! かんぴょうの代わりなのだろうか。フィリピン人に聞いてみれば、「フィリピンでは年中マンゴーが採れますし、フィリピン人はマンゴーが大好きなのです」とのこと。いや、だからといってすしに入れるというのはいかがなものか。と思いつつ食してみればまぁ思った通りの味である。外国で食べる巻きずしの味。ちょっとごはんがパサついていて握りすぎだが、可もなく不可もなく、こんなものかなという感じだ。と、ここでマンゴーが入っているのに「普通だ」と思ってしまったことに気づく。マンゴーは意外と味を主張しないものなのである。肩すかしではあるが、大きな発見だ。

ふと周りを見回すと、そろそろランチタイムだからかお客さんがたくさん入ってきていた。オフィス街などではOLが持ち帰り弁当を求めて並ぶこともあるというので、吉野家、人気のようでちょっとうれしい。……しかし。フィリピン人、吉野家が牛丼屋であることを果たして知っているのだろうか。大盛りラーメンを半分こして食べるカップル、揚げ餃子にエビかつ、天ぷらセットと揚げ物づくしの兄さんなど、見渡す限り誰一人牛丼を食べていない。それでいいのか、吉野家!? っていうかフィリピンのみなさん、牛丼を食べてくれぃ! と叫びだしたい気持ちを抑えつつ、店を後にした。