【ファナック】ロボットやコンピュータを駆使して自動化を実現したファナックの無人工場(2000年・山梨県)。(PANA=写真)

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アナリストたちに、いま注目の企業を選んでもらい、それらの会社が快進撃を続ける理由について解説をしてもらった。不利な市場環境でも利益を生み出す戦略やビジネスモデルとは、どのようなものなのだろうか。

■取引先の厳しい要求で鍛えられた
:踏んだり蹴ったりの歴史が高収益体質をつくる

市場が成熟して頭打ちになった環境下では、従来のビジネスモデルや戦略に固執していると時代に取り残される恐れがある。ただ、とにかく変化すればいいと安直に考えてはいけない。ビジネスモデルや戦略に時代が追いついて、ようやく収穫の時期を迎えるケースもあるからだ。

営業利益が過去最高を記録した日特エンジニアリングも、最近になって時代が追いついてきた1社だ。同社の主力商品であるコイル用自動巻線機は、携帯電話などの部品として使われる小さなコイルを正確に巻くことができる。ただ、精密なコイルを必要とする商品は多くなく、手巻きで低コストの中国製品に押されていた。

ラジオNIKKEI記者の和島英樹氏は、「スマホやタブレットPCが登場したことにより風向きが変わった」という。

「スマホには高性能化された超小型コイルが必要ですが、手巻きでは高性能コイルには対応できない。そこで、それまでオーバースペックだと思われていた日特エンジニアリングの自動巻線機に注文が殺到するように。フューチャーホンがガラパゴス携帯と呼ばれて馬鹿にされていた時期に地道にノウハウを蓄積してきた成果がようやくあらわれたのです」(和島氏)

日特エンジニアリングの12年3月期経常利益は前期比40.1%増で、2期連続の増収増益だ。ちなみに同社は円建て決済を原則としている。海外メーカーからのドル建て注文は拒否するため、円高になっても影響を受けない。ドル建てを希望するメーカーから見ると割高になるが、それでも注文が殺到するのだから、同社の自動巻線機が高い評価を受けていることがよくわかる。

春を迎えたという点では、自動車部品メーカーにも注目したい。和島氏は、自動車部品メーカーの苦難の歴史をこう振り返る。

「自動車部品メーカーがおいしい思いをしたのは、日本でモータリゼーションが進んだ1960年代まで。日本車の輸出が増えて日米貿易摩擦が起きると、メーカーは現地生産に切り替えて部品も現地調達に。それに耐えたと思ったらプラザ合意で超円高になり、メーカーからの厳しい値引き要求にさらされました。そこを耐え抜いた部品メーカーも、カルロス・ゴーンの系列解体で淘汰されてしまった。まさに踏んだり蹴ったりの歴史です」

しかし、苦難に耐えた甲斐はあった。いま生き残っている部品メーカーは、幾多の苦難を乗り越えた過程で高い技術力と強固な収益体質を手に入れた。現在、中国で自動車の需要が急速に伸びているが、日本の部品の品質が高く評価され、中国車メーカーから注文が殺到しているのだ。

「たとえばゴム部品がそうです。ゴムはローテクなので、最初は中国車メーカーも自前でやろうと考えたようです。しかし中国製は雨漏りしたり、エンジン音が車内に響いて使い物にならなかった。そこで日本の部品メーカーに声がかかるようになりました。なかでも注目は鬼怒川ゴム工業です。現メーカーとの直接取引に成功して、いまや引く手あまた。15年度には中国での売上高を現在の3倍強にする計画を立てています」(和島氏)

同社は純利益で2期連続最高益更新中。日特エンジニアリングと同様、取引先の厳しい要求で鍛えられたおかげでいまの高収益がある会社といえるだろう。

■文句を言わないロボット:モノ言う労働者が増えた中国

成長を続ける中国経済の恩恵に、これからもありつけそうなのがファナックだ。

同社の主力商品は、工作機械用NC(数値制御)や産業用ロボット。BtoB企業なので一般の知名度は高くないが株式時価総額は国内で13番目(12年8月6日現在)という日本を代表する企業だ。12年3月期は、2期連続の増収増益だった。

それにしても、なぜいまからなのか。カブ知恵代表取締役の藤井英敏氏は次のように解説する。

「世界の工場と呼ばれた中国は、曲がり角を迎えています。これまで中国に生産拠点を置く企業が多かったのは、人件費が安かったから。しかし中国でもモノを言う労働者が増え、賃上げ圧力が高まってきた。高い賃金を払うなら、文句を言わないロボットを使って国内生産をするほうが経営側は安心できる。それを受けてFA(ファクトリー・オートメーション)化が進み、ファナックなど産業ロボット企業が注目を集めています」

中国関連ではないが、「人から機械へ」という流れでFA部品メーカーも元気だ。たとえばFA用計測機器を手掛けるユニパルスは、12年9月期で2期連続営業最高益を更新する見込みだ。(※雑誌掲載当時)

「同社の売り上げは安定しています。計測機器はFA全体で見れば小さい部品にすぎず、値切ってもコストダウンの効果は小さい。そのため性能や品質で実績がある同社製品から低価格品に乗り換えるメリットは少なく、その結果として価格競争にさらされにくい。また新規よりリピートオーダーが多いことも安定的な売り上げに貢献している」(TIW社長 藤根靖晃氏)

■他「社」力本願:収入が減ったのに利益が増えたのはなぜか

長年の努力がようやく実を結び、ビジネスモデルの転換に成功した会社もある。キティちゃんのキャラクターで有名なサンリオだ。じつは同社の12年決算は減収増益だった。売り上げが減って利益が増えたのは、物販からライセンス事業へと軸足を移しつつあるからだ。

「キャラクター商品を自社で売れば売り上げは増えますが、利益率は低く、在庫リスクを抱えることになります。それより他社にライセンスを与え、使用料やロイヤルティをもらったほうがリスクは小さい。他社に頑張ってもらえば何もしなくても分け前がもらえるのだから、これほどおいしい商売はありません」(和島氏)

自社製にこだわらず、上手に他社の力を利用して利益をあげる、他「社」力本願のビジネスモデルだ。ただ、ライセンス事業は、キャラクターの認知度が高くないと成立しない点に注意だ。キャラクターを世間に定着させるためには、まず自社でリスクを取って物販をやる必要がある。サンリオがライセンス事業に移行できるのも、キティちゃんの物販という種まきを地道にやってきたからにほかならない。

■脱サラニーズ:直営で軌道に乗せてからオーナーを募集

収穫に関しては、作業服チェーンのワークマンの戦略もユニークだ。同社はまず直営店をつくって軌道に乗せた段階で、その店を任せるのに相応しいFCオーナーを募集する。せっかく実がなるところまで育てたのに、収穫をFCオーナーに委ねるのはなぜか。藤根氏はワークマンの狙いをこう解説する。

「ワークマンの営業時間は朝7時から夜8時まで。直営店でやると社員の残業代がかさみ、大きな利益は出ないのです。それより家族経営ができる地元の人にオーナーになってもらったほうが、粗利益に連動するロイヤルティで着実に利益が出る。ちなみに加盟料は400万円。出店コストはワークマン持ちで、脱サラ希望の人が比較的手に届きやすい額に設定しているところが、同社のうまいところです」(藤根氏)

同社はこの戦略で出店を増やし、12年3月期は経常利益46%増で、過去最高益を更新した。同社の戦略と、脱サラニーズが一致した結果ともいえるだろう。

目先の利益を追うだけでは、優れたビジネスモデルもすぐ行き詰まる。サンリオやワークマンのように、長期的な視野で利益を出す発想も大事にしたいところだ。

(村上 敬=文 坂本道浩=撮影 PANA=写真)