スタッフを楽しませながらサービスの向上を目指す

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ビジネスパーソン研究FILE Vol.208

タリーズコーヒージャパン株式会社 山口有土さん

エリア統括マネージャーとして活躍中の山口さんの一番のやりがいとは?


■スタッフのモチベーションを上げるために、店舗全体のムードメーカーとして活躍

学生時代に飲食店でアルバイトをした経験から、接客が好きになったという山口さん。大学卒業後、カフェチェーンやレストラン、和食店などで働いた後、一流のサービスを提供することに力を入れていた現社に共感し、入社を決めたという。

「入社後1カ月の研修を受けた後、神谷町店(港区)に配属されました。当初は、まだオペレーションや商品知識を覚えている最中でしたが、発注業務も並行して担当。サンドイッチやデニッシュなどの商品、牛乳やシロップなどドリンクの材料になる食材、カップなどの包材といったジャンルごとに発注しましたが、これが難しくて。天候や周辺エリアで開催されるイベントなどによって売れ行きも変わってくるもの。そういった予測が甘く、サンドイッチの発注数が多過ぎて余らせてしまったり、少な過ぎて足りなくなったこともありました。自分の発注が売り上げやお客さまの満足度に直結してしまう責任の重さを痛感しましたね」

配属から5カ月後、山口さんは六本木一丁目店(港区)に異動することに。タリーズ全店の中で売り上げナンバー1になったこともある大型店舗で、神谷町店とはまた勝手が違ったという。
「発注する量の規模がまったく違うんですよ。例えば、カップひとつにしても、前店では一度の発注につき1束程度だったのに、今度の店ではその10〜20倍も発注することが当たり前。そのうえ、発注数が多い店舗では、毎回在庫を数える作業もあり、通常のオペレーションの合間にそれをこなさなくてはならず、ものすごい忙しさでした。また、資材のジャンルごとに発注をかける曜日が違うなどの複雑さもあるため、うっかり発注そのものを忘れてしまったことも。足りなくなった食材をかき集めるために、周辺の店舗を10軒以上渡り歩くという苦い経験もしましたね。商品や材料がなくなれば、お客さまはもちろん、周辺の店舗にも迷惑をかけてしまう。忙しいからこそ、より慎重になろうと考え、材料の単価と売り上げ予測から、必要になる数量を予想していくようになりました」

一方、山口さんの業務の幅は広がり、シフトの作成やアルバイトスタッフの指導なども手がけるようになっていく。一日に1500人以上のお客さまが来店し、スタッフとコミュニケーションを取る時間もままならない忙しさだったが、山口さんはスタッフの表情に疲れが出ていることも見逃さなかった。
「とにかく忙しかったので、誰もが業務をこなすだけで精いっぱい。みんな疲れた顔をしていたので、もっと楽しく働ける方法はないかと考えました。僕自身、自分が働く店のスタッフには、もっと店を好きになってほしいと思っていましたし、その方が本人のモチベーションもパフォーマンスも上がるはず。そこで、スタッフ全員の名前を並べた紙を用意し、それぞれのいいところをみんなに書き込んでもらってから、それを手紙の形にして全員に渡すことに。すると、みんな喜んでくれて、明るいムードに変化したんです! やっぱり誰でも、ほめられたらうれしいし、もっと頑張ろうと思えるようになるものですよね」

さらに、山口さんはレジやドリンク、フロアなどのポジションをスタッフに割り振る役割も担った。全体をコントロールしながら、各スタッフに的確な指示を出し、店全体のオペレーションをスムーズにする立場だが、ここでも自らムードメーカーとなるための努力を続けた。
「スタッフへの指示出しなどで声をかける時には、ちょっと笑わせるようなことを言ったり、気遣いの言葉をかけるなどしました。言葉一つでスタッフの心持ちが大きく変わるので、どんな言い方をすればいいか常に考えていましたね。僕は、入社当初から『スタッフはお客さまと接する店の顔』だと考えていて。だからこそ、カウンターでやりとりする一瞬の機会で、スタッフがどう対応するのか、それによってどれだけのお客さまをファンにできるかが重要だと。ドリンクを出す際に、目を見てにっこりするだけでも、お客さまはうれしいはず。そして、お客さまに喜んでもらうことこそ、スタッフのやりがいにつながると考えたんです」

そこで山口さんは、「あいさつ一つも単なる作業にはせず、お客さまが思わず振り返るような『ありがとうございます』を言おう」とみんなに提案したのだ。
「忙しいからといって下を向いていてはダメなんです。スタッフ一人ひとりと向き合い、どんなあいさつをすれば良いかを一緒に考えていった結果、明るく気持ちのいいあいさつが飛び交うようになりました。流れ作業ではなく、気持ちのこもった接客に変化したことで、店全体のムードも変わった。自分のやりたい接客をスタッフに浸透させていくやりがいを感じましたね!」


■複数の店舗責任者を経験した後、エリア統括マネージャーに。仕事を楽しめる環境づくりに注力

入社2年目、山口さんは都庁店(新宿区)に異動し、店舗責任者となる。ベテランスタッフがいる店舗だったため、スタッフとの関係づくりと売り上げアップの戦略に集中できたという。
「最初に、『スタッフが楽しく働き、お客さまがファンになるような店にしたい』という想いをスタッフ全員に伝えました。気持ちを共有した後、新商品を各スタッフがどれだけ売るかというダービー企画をやりたいと話したら、みんな『面白そう!』と言って、積極的に取り組んでくれましたね。また、ランチタイムの1時間に集中してお客さまがやってくる店だったので、『この1時間でどれだけ売り上げをアップできるか』という課題をスタッフに投げかけることに。みんなで一緒に考え、行列ができる時間帯に試食を配ることにしたところ、店や商品の認知度が上がり、時間帯の売り上げ記録を更新するまでに! スタッフのモチベーションが上がり、いろんな取り組みをするうちに、売り上げもどんどんアップさせることができました」

その後、山口さんは若松河田店(新宿区)、赤坂店(港区)でさらなる経験を重ねた。特に、赤坂店ではスタッフをまとめる喜びを味わうことができたという。
「異動当時、スキルの高いベテランスタッフばかりでしたが、みんな気持ちはバラバラで。どうすれば良いか考え、自分のモットーを大きな紙に書いてバックルームに張り、みんなで共有することにしたんです。『明るく、楽しく、いつも笑顔で!』という内容で、明るいムードをお客さまに伝え、自ら仕事の中に楽しみを見つけ、笑顔の輪を周囲のスタッフやお客さまに広げて良い循環を生み出そうと」

より具体的に行動させるため、「お客さまをしっかり『観察』し、一歩先回りした声がけをする」「お客さまを振り返らせる『あいさつ』を心がける」「一人ひとりが赤坂店という舞台の役者であり、スターのように輝く『スターフェロー(※)』となる」などの行動指針も掲げ、社員としっかり共有し、アルバイトスタッフにも浸透させることができた。
「もともと接客に対する熱い想いを持っているスタッフばかりだったので、同じ方向を目指すことで、少しずつみんなの気持ちがかみ合い、売り上げもアップしていきました。おかげで、前年対比130パーセントの売り上げを達成し続けるほどに。スタッフの団結力も上がり、ただ働くのではなく、『この店で働くことそのものが楽しい』と変化してくれたと感じます。1年で異動してしまいましたが、『一緒に働けて良かった』とスタッフから言ってもらえて、すごくうれしかったです!」
(※)タリーズでは、従業員(正社員、アルバイト)のことをフェロー(=仲間)と呼んでいる。

山口さんは、この後に神奈川県のアトレ川崎店の立ち上げも経験。スタッフ同士で教え合い、互いに成長する仕組みづくりに尽力した。そして2009年、エリアを統括するディストリクトマネージャーとなる。
「銀座エリアの11店舗を担当することになりました。自分にできるのかという不安もありましたが、ワクワク感のほうが大きかったですね! 仕事内容は、各店舗を回って改善点をチェックし、社員にフィードバックしていくというもの。接客や陳列、清掃などさまざまな面の指導をすると同時に、新商品のPRや販売計画を一緒に考えるなどもしています。店舗業務に取り組んでいたころは『対お客さま』の目線でしたが、今は『対スタッフ』の目線へと変化し、社員やアルバイトスタッフの気持ちをくんだうえで、会社全体の方針をどう指導していくかが大事だと考えるようになりました。スタッフそれぞれの悩みにもしっかりと向き合い、一緒に考えていくようにしています」

現在は、港区湾岸エリア12店を担当している山口さん。新規出店や店舗の改装なども経験し、会社全体のお金の流れの仕組みなども理解できるようになったという。
「店舗企画開発の部署とやりとりする中、店舗のレイアウトで売り上げアップを目指す考え方なども学び、仕事の奥深さを実感しています。高額な改装費用を使うので、会社に承認してもらうための稟議(りんぎ)書も作成。利益を出すためにどうお金が動くのかという仕組みも理解できるようになり、会社全体としてどう利益を出していくのかを考えられるようになりました」

さまざまな経験を積んで成長を続けている山口さんだが、一番のやりがいは、「やっぱり、スタッフが笑顔で働く姿を見ること!」と話す。
「より大きな視点を持ち、タリーズ全体の考え方を理解したうえで、みんなで共通の策に取り組み、やりがいや楽しさを共有していく面白さを感じています。もともと自分には『どんな仕事も楽しもう!』という想いがあるんです。スタッフがそれを理解し、楽しんで仕事に向かうように変化する様子を見ると、もううれしくて! みんなの笑顔で、自分まで楽しくなってしまいますね。今後の目標は、『人を育てていくこと』。社員やスタッフそれぞれが『こうしたい、こうなりたい』という想いをしっかりと持ちながら、笑顔でそこに取り組めるような環境をつくってバックアップしていきたいと思います」