ややこしくて頭が痛くなってくる年金制度。「年金時効特例法」(以下、特例法)に関す日本年金機構の不統一な判断によって、支払い不足などが多発しているといい、これは、決して他人事ではない。もし、自分が対象者だとわかったら、どうやって年金を取り戻すのか。年金問題に詳しい社会保険労務士の冨樫晶子さんに聞いてみた。

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Ql 「特例法」の対象になる可能性が高いのは、どんな人ですか?

A 年金手帳を何冊も持っている人や、転職を繰り返してきた人です。年金記録が一本化されていない可能性があります。10年間会社に勤めた後、自営業を続けていたAさん(68歳)は、会社員時代と自営業時代の両方の年金手帳を持っていましたが、これだけでは受給資格を得るための25年を満たすことができませんでした。そのため、年金をもらえていませんでした。

 改めて年金事務所に相談に行くと、Aさんの記録がもう一つ出てきました。これを足して25年をクリア。今まで一円ももらえていなかった年金8年分をさかのぼってもらうことができました。今までは過去5年分しかさかのぼれませんでしたが、「特例法」により、このような場合には時効期間の5年を超えた全期間分をもらうことができるのです。

Q2 「特例法」で一気に数百万円の年金が追加で支払われることがあると聞きました。どんな人が当てはまる?

A 一概に言えませんが、既婚女性で、旧姓で働いていたことのある人などは可能性があります。送られてきた「ねんきん特別便」を見て旧姓の期間が漏れている場合は記録が一本化されていないかもしれません。そのように回答票に書いて返信しましょう。私が知っている事例でも、80歳の女性で一気に300万円が支払われたことがありました。

Q3 一度も転職をしていなくても年金記録が間違っていて、「特例法」の対象になることはある?

A あります。転職をしていなくても国民年金と厚生年金の両方の記録があり、それぞれのデータの氏名の読み方が間違って入力されていて記録を見つけられず、新たに別の読み方で検索したら見つかった場合などです。例えば私の場合でも、「晶子」の読み方は「ショウコ」と「アキコ」があり、「マサコ」と読む人もいます。ほかにも、紙台帳とコンピューターの記録を突き合わせたら、以前は見つからなかった古い記録(昭和30年〜40年代初期)が見つかった、転居時に前住所の納付記録が引き継がれておらず、未納扱いになっていた、など。小さなミスも含むさまざまなケースが考えられますので、よくチェックしましょう。

Q4 父は70歳。20年間会社勤めをした後、脱サラして自営業を始めましたが、国民年金しかもらっていません。厚生年金ももらえるのでは?

A 会社勤めの時代に厚生年金に加入していれば可能性がありますが、加入していない場合もあります。年金事務所へ年金記録を調べに行くのがいいです。事前に会社名、所在地、勤務期間を調べておきましょう。

Q5 夫が亡くなり書類を整理していると「ねんきん特別便」があり、「消えた年金」があったと書いてありました。私がこれからもらえる年金は増えますか。

A 亡くなったご主人の記録が確認できれば、記録の訂正で5年以上さかのぼって全額が奥様に支給されます。また、遺族年金も増額された年金額をもとに計算されるので、遺族年金も増えます。まれに、結果的に年金が減額となる場合があります。その場合は確認の手紙が来ますので、再請求しないことでしょう。

Q6 私は100歳。ふたつ年上の夫が亡くなったのは40年前です。当時、3年ほどしてから年金の申請に行きましたが、「遅い」と相手にしてもらえませんでした。90年代になって、夫がバス会社と鉄道会社で働いていた記録が見つかり、改めて申請に行き、未支給分の一時金をもらい、その後は年金をもらっています。最近、夫が鉄工所でも働いていたことを親戚から聞きました。もう少し年金が増える可能性があるのでしょうか。

A 最近出てきた鉄工所の勤務中に厚生年金に加入していれば可能性があります。ご親戚から鉄工所の会社名、所在地、勤務期間を聞いて、年金証書を持って年金事務所へ確認に行ってください。昔、紙の台帳で管理していた記録を機械に収録するようになって、確認が取れる場合があります。

週刊朝日 2013年4月26日号