中期経営計画を策定。経営層と社員をつなぎ事業の拡大を支える

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WOMAN’S CAREER Vol.108

三和酒類株式会社 外薗理佐さん

【活躍する女性社員】三児の子育てをしながら女性社員の活躍を推進する外薗さん


■あとに続く女性社員のために、自分がキャリアアップして道をつくっていきたい

麦焼酎「いいちこ」をはじめ、清酒、ワイン、ブランデー、リキュールなど幅広い酒類を製造・販売している三和酒類。日本酒メーカーとして大分県宇佐市で創業した同社が焼酎市場に参入したのは1979年。当時は米焼酎や芋焼酎が市場の大部分を占めていた中、「いいちこ」を全国に広く知られるブランドに育て上げた。

外薗さんは、同社に研究職として入社。焼酎の製造過程で副産物として発生する焼酎粕(かす)に含まれる有効成分とその分離方法の研究を任されたが、年次を重ねるにつれて興味を持つようになったのはマーケティングの仕事だった。
「当社にはマーケティング専門の部署がなく、営業部を中心に研究、製造、資材、総務など各部署の社員が参加して組織する“マーケティング委員会”が販売戦略の検討や商品の開発・改良提案をします。そこに私も加わっていたのですが、市場調査を通して消費者の方々の考えを知り、それを営業戦略や商品戦略に反映することの方が面白く感じるようになったのです」

その希望がかない、4年目に異動が実現。総務部で市場調査やマーケティング委員会の事務局、中期経営計画の策定などを担当することに。先輩に学びながら市場調査のノウハウを習得し、分析結果をもとに販売や商品開発に役立つ提案を行っていった。中でも大きな経験になったのが、6年目から7年目にかけて携わった新商品「いいちこスペシャル」の開発だ。通常よりも長期間貯蔵することでブランデーのような黄金色になり、よりまろやかなうまみが出る焼酎を開発し、従来の「いいちこ」よりも高級路線で販売することを目指したもの。各部署から集まった7〜8人のメンバーでマーケティング委員会が構成され、外薗さんは販売価格の検討・設定を担当するとともに、事務局として開発にかかわるすべての情報を集約し、進捗(しんちょく)管理を行った。
「中味の設計から価格設定、ボトルのデザイン、資材調達、販売戦略の立案に至るまで、各部署の知見を生かして分担して取り組みますが、私自身は事務局として予算に見合った調達ができるように交渉現場に立ち会うなど、全体を見て調整することが求められました。初めてのことばかりで、しかもメンバーは全員私より年上の男性でしたが、わからないことは各担当や現場の方に徹底的に聞き、教えてもらいながら取り組みました。社歴も浅くて何もわかっていなかったぶん、体当たりでぶつかっていけたのだと思います」

予算内に抑えるため、キャップの素材を当初予定していたガラスから樹脂に変更して一から樹脂メーカーを探したり、高級感のあるボトルデザインを生かしながら法律で義務づけられた表示を漏れなく印刷することに腐心するなど苦労を重ね、1年3カ月後の2005年3月に無事に発売。販売計画を上回る本数を売り上げることができた。
「当社の従来品のように色みのある焼酎を色付きのボトルに入れて販売するのではなく、透明のボトルに入れて色が見えるようにしたり、高級商材として販路を百貨店に限定したりするなど、これまで当社ではやらなかったことに挑戦した商品だったので、計画を上回ることができてよかったです。私自身も、原価の仕組みや価格設定の考え方など経営企画の仕事にも生かせる知識を得ることができました」

その後、長男出産のための産休・育休を経て、8年目からは中期経営計画の策定業務を中心に経営層のサポートや全社的なプロジェクトに携わるように。同社の中期経営計画の策定サイクルは3年。計画の3年目に評価と課題の洗い出しを行い、その上で次の3年間の方針を経営層にヒアリングして大枠を決定。それをもとに部門ごとに部門長が詳細な計画を立て、完成させる。このプロセスをとりまとめ、最終的な文書を作るのが外薗さんの役割だ。4年目に総務部に異動して以来、4度の計画策定に携わり、現在は5回目の計画策定に取り組んでいる。
「毎回感じるのは、現場の社員の望みと経営陣の意向を擦り合わせる難しさ。数値目標などできるだけ具体的な目標がある方が社員のモチベーションは上がりますが、数字にこだわりすぎて真の業務計画の目的を見失わないようにとの経営層の考えを、部門長に理解していただくことに時間がかかる場面もあります。一方で心がけているのは、部門長との会話や計画の文章においてできるだけ社長の意向に忠実に、わかりやすく表現すること。話が伝わっていく中で情報が錯綜(さくそう)したり趣旨が変容したりしないよう、自分の解釈は加えず、社長から部門長に直接話してもらう機会もできるだけ作るようにしています。そうして計画が完成し、年度末に開かれる全社会で社員全員に計画をまとめた冊子を配布し、社長が方針を説明されるときが、達成感を得られる瞬間です。経験を重ねても、社長が代わることで歴代社長のお考えを学んだり、組織やシステム変更などにより飽きることはありませんし、社内の人脈が広がる上、経営的な視点で会社を見られることは、ほかの部署にはない面白さだと思います」

また、3度の出産を経験し、働きながら子育てをしていることから、女性社員の活躍を推進する取り組みの推進にも注力している。
「もともと男性が多い会社だったこともあり、かつては女性が働き続けるための制度が整っていても何となく利用しづらく感じることがありました。そこで、長男を出産して以降、より女性がモチベーションを高く持って働くための取り組みを考え、機会を見て提案しています。一つ実現したのが、大分県内の企業の女性と情報交換する場を作ること。県内の有力企業を中心に声をかけ、賛同してくださった6〜7社と2010年に“働く女性の異業種交流会”を立ち上げました。2カ月に1回、担当者が集まって情報交換をしています。このような場を作ることで新しい制度を設計する際の情報収集がしやすくなりましたし、仕事の幅が広がっていく楽しさを感じています」

入社当初の志望とは異なる仕事に出合い、キャリアを重ねる外薗さん。これからも、社内外の多くの人とかかわる今の仕事に取り組んでいきたいと考えている。
「目下の課題は、これまで自分一人で取り組んできた業務をいかに部下に引き継いでいくか。2012年の秋から係長級の役割であるチーフを任され、部下を持つ立場となりましたので、いつまでも一人で仕事を抱えているわけにはいきません。また、当社で課長以上の役職に就いている女性は一人だけ。あとに続く女性社員がモチベーションを高く持ってキャリアアップしていくためにも、私自身が課長を目指して日々の仕事に取り組むとともに、総務部で経営企画や人事に携わる立場から、女性社員の活躍をバックアップする取り組みに注力していきたいと思います」