[其ノ二 FX 投資戦略編]英ポンド売り 英国トリプルAから陥落。対米ドルで下落へ
2月に入り、為替は円全面安が小休止。一方、英ポンドには悪材料が続出してきた


欧州危機の収束で欧州から英国に避難してきた資金が流出し始めた!

英ポンドは欧州債務危機のさなかには、英国景気の低迷にもかかわらず数少ないトリプルA格国の通貨としてセーフヘイブン(避難先)的な地位を維持し、下がりそうで下がらない通貨となっていました。もっとも、ここに来てポンドを下支えしてきた要因が弱まりつつあります。

最大の要因は欧州債務危機の懸念後退。イタリア総選挙後の混迷やキプロス情勢などの問題は残っていますが、スペインやギリシャのユーロ圏離脱といった世界経済・金融市場を脅かしかねないイベント発生の確率は著しく低下しています。このため、ユーロやスイスフランから英ポンドに避難していた資金が英国から流出しつつあります。

一時は量的緩和の効果に懐疑的な姿勢を見せていた英国中央銀行が、景気低迷の継続を受けて量的緩和再拡大の可能性を示唆。2月の金融政策委員会では、量的緩和拡大支持派が総裁を含め3人に増加したことが明らかになり、その後、副総裁も量的緩和拡大の可能性を示唆しました。

こうした金融緩和姿勢は、特に量的緩和の縮小に向けた議論が始まりつつある米国と対照的です。また、格付け機関のムーディーズは2月に、英国のソブリン格付けをトリプルAから一段階下げました。今後も景気低迷が継続して財政再建が進まない見通しが強まると、他の格付け機関も追随して格下げを行なうリスクも高まっており、数少ないトリプルA格国という地位はすでに失われつつあります。

では、英ポンドはどの通貨に対して最も下落しやすいのでしょうか。インフレ率2%を目指して積極的な金融緩和が数年続く円は、英ポンドと類似して軟調が続く見込み。欧州も景気低迷が続く中でECB(欧州中央銀行)が日米英と同じような量的緩和手法を導入する可能性があり、上昇が見込みにくい状況です。

こうした中で、米ドルが景気の面でも、金融政策の方向性の面でも、英ポンドとのコントラストが強いため、上昇しやすい状況にあります。英ポンドを売るなら対米ドルが最も妙味があるといえるでしょう。



【今月の先読み軍師】
山本雅文(MASAFUMI YAMAMOTO)
バークレイズ銀行チーフ FXストラテジスト

日本銀行で10年にわたり重要な為替取引や調査に従事した後、日興シティグループなどを経て、現職。特に欧州経済に詳しい。



この記事は「WEBネットマネー2013年5月号」に掲載されたものです。