やっぱイノベーションでしょ 〜クリステンセンとゴビンダラジャンの説く「担当者の変更」の超え方

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イノベーションとは
トレードオフの解消である

 前回の第57講『トレードオフかイノベーションか』では、イノベーションとはトレードオフの解消だと述べました。

 マイケル・ポーターやケビン・メイニー(上質さか手軽さか)に指摘されるまでもなく、戦略とは基本的に「捨てること」なのです。戦略オプションにおいてきちんとトレードオフを見極め、そのどちらかを捨て、もう片方の実現に資源を集中させることこそが戦略でした。

 しかし、現代社会の荒波は、そういった伝統的戦略論だけでは乗り切れないものになってきています。両立が難しいことの両立にこそチャンスがあり、それがビジネス的に成功したとき、人はそれをイノベーションと呼ぶのです。今、日本企業に求められているのは、「厳しい選択(Hard Choice)」であるトレードオフと同時に、こういったトレードオフを超えたイノベーションの創出にほかなりません。


 だからまずは、トレードオフ(みんながガマンしていること)を見つけましょう。そしてそれらを解消できないか、を考えるのです。イノベーションは、(実現不可能に見える)二律背反の発見と解消から、なのです。

イノベーションには「担当者の変更」が伴うと
シュンペーターは唱えた

 なのに、大抵の企業はイノベーションに失敗します。それを最初に指摘したのはおそらく、かの大経済学者ヨゼフ・シュンペーター(1883〜1950)です。

 彼はそれを「発展担当者の変更」と呼びました。

 各都市間を結ぶ駅馬車システムはイギリスに生まれ、ヨーロッパ全土に拡がりました。しかし、産業革命とともに生まれた鉄道システムに取って代わられ、20世紀初頭には姿を消しました。

 駅馬車事業者は消え去り、鉄道事業者として生き残ることは、ほとんどありませんでした。これが「担当者の変更」です。シュンペーターはそれを必然と考えました。

 なぜこの「担当者の変更」が起こるのかを、技術ではなく顧客の視点から解き明かしたのがハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の英才クレイトン・クリステンセン(1952〜)です。それまで、担当者の変更は「イノベーションが革命的で、それまでのコンピタンスが使えない」から起こると考えられていました。

 しかし『イノベーションのジレンマ(The Innovator’s Dilemma)』(1997)で彼は言いました。

 ・イノベーション自体が革命的(radical)か漸進的(incremental)か
  は失敗(担当者の変更)に関係ない
 ・失敗するのはリーダー企業が「顧客志向」でありすぎるためだ

 と。

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