【うちの本棚】161回 黄金バット/一峰大二(原作・加太こうじ)

「うちの本棚」、今回ご紹介するのは一峰大二版『黄金バット』です。

怪獣が多く登場する本作は、ある意味一峰大二らしい作品のひとつと言っていいでしょう。月刊誌ではなく週刊連載されたということも本作の内容が充実している理由でしょうし、一峰大二の代表作といえる仕上がりになっていると思います。

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本書はテレビアニメ『黄金バット』の放映に合わせてコミカライズされた一峰大二の作品である。
『黄金バット』自体は昭和5年に制作された紙芝居が元になっており、その後時代の流れに合わせてデザインや設定も変わったが、昭和42年に放映されたテレビアニメでは、アトランティスの遺跡から復活し、世界、いや宇宙を征服しようとするナゾーと対決する。前年上映された実写版映画の設定もその設定を踏襲しているが、アニメの企画が先行し、実写版の設定に流用されたようである。実際本コミカライズ作品も実写映画の封切りに合わせて連載が開始されているが、設定はアニメ作品を踏襲している。

また月刊誌『少年画報』でも井上 智によるコミカライズ版が連載されている(こちらの連載期間はアニメ放送と同じ)ほか、昭和20年代の絵物語をまとめた単行本(桃源社)も昭和50年に刊行されていた。

原作の加太こうじは紙芝居版にかかわった人物で、アニメ版では監修としてクレジットされている(原作のクレジットは紙芝居版で初めて「黄金バット」を描いたとされる永松健夫であり、絵物語『黄金バット』の著者でもある)。とはいえアニメ版の基本設定・ストーリー自体はアニメ制作の「第一動画」によって作られたもの(本単行本1巻の巻末で加太が「私の紙芝居をテレビ用のアニメ映画にした」と記しているが、狭義では第一動画のオリジナル作品と言っていいだろう)。当時の流行からかアニメとはいえ怪獣の登場が頻繁であるのも特徴だろう。その点コミカライズ版『ウルトラマン』も担当していた一峰大二の起用は正解だったといえるだろう。

一峰大二のコミカライズ作品は元となる映像作品に登場するキャラクターと全く似ていないキャラクターが描かれているというのがひとつの特徴といっていいと思うが、実写ではなくアニメ作品が元となる本作でも、アニメ版のキャラクター設定は全く無視しているかのような登場人物たちが描かれている(もちろん主役ヒーローである黄金バットは例外ではあるが)。

昭和40年代のコミカライズ作品についていえば、メディアミックスというビジネス上の効果はともかく、ホームビデオやカセットテープレコーダーも普及しておらず、映像としても音源としても作品を保存しておくことのできなかった視聴者が、楽しめる媒体のひとつであったことは事実で、その意味で元作品とは全く異なるキャラクターが描かれているという一峰大二のコミカライズ作品は個人的には違和感があった。正直、一峰大二のコミカライズ作品が楽しめるようになったのは元作品が古典になってからのことである。

今回読み直してみて改めて感じたことは、やはり怪獣の描写が秀逸なこと。言い換えれば『黄金バット』ではなく『ウルトラマン』でもよかったという仕上がりである。また微妙な描写をコマ割りを細かくして描くなど、表現の実験も行っているふしも見られる。全体的には謎が謎を呼ぶ展開など、週刊誌連載という特徴をいたした構成で飽きさせない出来になっている。一峰大二の月刊誌掲載コミカライズ作品と比べてみると、本作は一線を画す仕上がりになっているといえるだろう。

初出:少年画報社「週刊少年キング」昭和41年51号〜昭和42年52号

著者名/一峰大二(原作・加太こうじ)
出版元/大都社
判 型/B6判
定 価/
シリーズ名/STAR COMICS 懐まんコミック
初版発行日/1990年9月20日(1、2巻共)
収録作品/黄金バット:第1巻・黄金バット復活、バキュアム、ビッグ・アイ、物体X・アドド、青い炎の国(前編)、第2巻・青い炎の国(後編)、怪獣ベム、怪獣ベムPART2、1万年前の怪獣ウーラ

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