[其ノ二 FX プロディーラーの視点!]金利や景況感で動く相場が復活
急速な円安に、いまひとつ乗り切れていない個人投資家。その理由は相場の構造変化にあった。長期的円安トレンドに大転換した今、個人が狙うべき通貨をプロの目でアドバイス!


急速な円安進行。円を売らざるをえない投資家がいる

この号が発売されているころにはすでに次期日銀総裁が決定していることと思います。結論から言うと、誰が総裁になっても円安トレンドに変化はないと考えています。

もちろん、米ドルが1ドル=100円の大台を突破して、さらに一直線に上昇するとは思いません。ユーロ圏の財務不安は基本的には解消されていませんので、2月下旬のイタリアの総選挙のときのような突発的なリスクオフへの転換と円高は今後も起こりうるでしょう。

かといって、個人投資家が「米ドルは5円ぐらい下がるまで待とう」と期待しているような押し目らしい押し目は、ほとんどないまま、今後も円安トレンドが続きそうです。

為替市場が一方向に急激に動くのは、急激な動きをせざるをえない投資家がいるから。それが相場の構造です。

円安が続いているのは「円を売りたい、外貨を買いたい」と思っている人が増えたからというより、「円を売らざるをえない投資家」が多数いるからでしょう。

たとえば、現在の米ドル/円レートよりも円高水準で為替ヘッジをしてしまった輸出業者や生保など。今、円を売らないと大きな損失を抱えてしまう投資家が必死に円を売っているから、猛スピードで円安が進んでいるのです。

1月の貿易赤字が過去最大の1.6兆円に膨らんだように、日本の貿易構造が変化して、円を買いたい輸出業者が減り、円を売って外貨を買いたい輸入業者のニーズが強いことも、円安トレンドが続く一因になっているでしょう。

さらに、最近の為替相場には変化の兆しが見られます。各国の景況感や金利動向によって相場が変動する、本来の為替市場の値動きが戻ってきたように感じます。

安倍政権のデフレ脱却政策により、これまで物価の下落で高止まりしてきた日本円の実質金利が下落するという思惑で円安が進んでいるのが、まさにその象徴です。

高金利通貨の中でも、中国経済の減速傾向を受けて景況感が不透明な豪ドルはさらなる利下げ懸念が残っており、それほど勢いがありません。

ウィーラー中央銀行総裁が金融引き締めに動くNZドルは勢いを増しています。

ユーロ相場が明らかに不安定になっているのも、高い失業率や2年連続の景気後退が濃厚になり、マイナス金利もやむをえないという声が出ている影響があるのでしょう。

米国にはこれ以上、金融緩和の余地がなく、米ドルもプラス評価されています。

円の独歩安という状況に変わりはありませんが、対円で動きが鈍かったNZドルが出遅れ物色されているように、通貨ごとの強弱には変化が出てきそうです。

個人投資家は金利差を狙って、高金利通貨に長期投資すべき

そんな中、まだ円売りポジションを保有していない個人投資家は、とにかく目の前で少しでもいいから外貨を買うべきでしょう。

相場のトレンドが明確な円売りで、長期的な円安相場が今後も続くことを考えれば、あまり難しく考えることなく、金利差だけを狙って取引すればいいのです。

具体的には、円を売って高金利通貨の豪ドルやNZドル、カナダドルに投資すればいい。逆に言うと、スワップ金利がゼロに近い米ドルを長期保有する必要性はまったくありません。

ただ、市場のトレンドが単純な「リスクオン/リスクオフ」の図式を離れ、各国通貨がまちまちな動きをする傾向がより強くなっていることには、気づいておいて損はないでしょう。



【今月のカリスマ軍師】
上田眞理人(MARITO UEDA)
FXプライム 取締役

東京銀行、モルガン銀行、ドレスナー銀行などで為替ディーラーや外国為替部長を歴任後、現職。



この記事は「WEBネットマネー2013年5月号」に掲載されたものです。