カードローンの融資枠を決める算式

写真拡大

■10年の法改正で状況は一変した!

ほんの数年前まで、クレジットカードは社会人になれば誰でも持てるものだった。ところが多重債務者問題をきっかけに2010年、貸金業法・割賦販売法が改正されたことで、状況は一変した。カード発行時の審査は格段にきびしくなり、利用限度額も大幅に引き下げられている。

クレジットカードを使用したキャッシングには改正貸金業法の総量規制が適用され、年収の3分の1を超える借り入れは認められなくなった。

カードを使ったリボ払いなど後払い取引についても、支払可能見込額という限度が課され、カード発行時にクレジット会社が審査を行い、年収、年間の生活維持費、現在のクレジット債務等を調査したうえで決められることになった。

支払可能見込額は「(年収−生活維持費−クレジット債務額)×0.9」で計算される(図参照)。入社3年目前後の若手サラリーマンだと認められるのは30万円程度。ちゃんと就職していても審査ではねられてしまうサラリーマンは少なくない。

この限度枠を広げるには、どうすればいいだろうか。

その方法はカード会社により異なる。一般に銀行系カードの場合、限度枠を広げようとしても交渉の余地はほとんどない。一方、専業クレジット会社やリース系カード会社では、審査担当者と交渉し、信用を得ることで限度枠が広がる場合がある。

会社員であれば、年収は低くても、貯金があれば信用度は高まる。それなりの額の定期預金や財形貯蓄があるのなら、通帳を提示して「これだけ貯蓄があるんですが」と言ってみるのも1つの手だ。

源泉徴収票など、税務関連の公的書類で年収を証明する場合、その年に医療費などの控除を使っていると、見かけの収入がその分だけダウンしている。その場合、サラリーマンなら給与支払い明細、自営業なら確定申告書の原本を見せて交渉してみるといいだろう。

私自身の経験では、リース会社のオリックスやクレジット会社のオリコがこちらの言い分を比較的聞いてくれるカードの発行元である。

カードの利用履歴は「クレジット・ヒストリー(クレヒス)」と呼ばれ、カード会社が顧客の信用度を測る物差しになっている。

利用頻度が高く、かつ間違いなく確実に引き落としが履行されていれば、優良なクレヒスとみなされ、利用者本人の信用度も高まる。日常的な買い物に利用されるスーパーなど流通系のカードでは、優良なクレヒスを積み重ねることで、限度枠が早めに引き上げられる傾向がある。

クレヒスで限度額アップを狙う場合、最も気をつけなくてはならないのが「延滞」である。銀行口座の残高が不足し、クレジット会社からの請求の引き落としができなくなってしまうことで、一度でもこれを起こすと、カード会社から見た利用者の信用度は一気に落ちてしまう。

若い人に多いのが、携帯電話を分割払いで購入し、その代金が落ちなかったために「延滞」と記録されてしまうケースだ。わずか数百円のために信用が傷ついてしまう。

うっかり延滞の発生を防ぐためには、引き落としに使用する銀行口座を1つに限定することだ。加えてその口座について、各銀行で発行している自動融資つきのクレジットカードをつくることをお勧めしたい。自動融資機能があれば、不足した残高分が自動的にキャッシングされ、延滞を起こさずに済むからだ。

日本では真面目な人ほど現金で払う傾向が強いが、今後は逆に、日頃からカードを利用して優良なクレヒスを積み重ねておくことこそが、本人の信用度を高める手段となる。

(平塚エージェンシー所長、証拠調査士 平塚俊樹 構成=久保田正志)