経済見通しをふまえたうえで先読み資産防衛術を紹介する『マネーポスト』の好評連載「森永卓郎のサバイバル資産防衛術」。森永氏は、7月参院選までは株高の流れが続くと分析しているが、その後はどうなるのか? 以下、森永氏が解説する。

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 7月以降の株価については、日銀がどこまで本気でデフレ脱却に取り組むか、にかかっていると思います。とはいえ、これまで金融緩和に消極的だった白川方明前総裁が辞任しただけでも、日本経済にとっては好材料です。

 もちろん、黒田東彦総裁の手腕次第となるでしょうが、積極的な金融緩和策がとられれば、7月までに日経平均株価は1万5000円を超える可能性すらあるでしょう。

 すでにABE(安倍・バブル・エコノミー)という声も聞こえてきますが、日本株はまだまだバブルと呼べる段階には遠く及びません。それどころか、これまで“逆バブル”ともいえる不当な水準まで売り込まれてきたのです。

 今年1月末の東証1部銘柄の平均PBR(株価純資産倍率)は1.1倍です。それに対して、先進国市場の平均PBRは1.9倍、小泉政権末期の2006年1月のそれも1.9倍でした。

 もしこれが世界水準並みに戻れば、計算上、日経平均は2万5000円になります。“逆バブル”の崩壊は驚くほど早い。デフレ脱却の暁には株価が劇的に上がるので、今後1年のうちにも、日経平均は2万5000円になってもおかしくないと考えます。

 さらに、日銀が本当に大幅金融緩和に踏み切れば、為替相場は勢いを増して円安に振れるので、裾野が広く日本経済に大きなインパクトを持つ輸出製造業は大きな恩恵を受けることになります。

 たとえば、1ドル=80円だった為替相場が120円になれば、輸入品の価格は単純計算で1.5倍になる。これまで家電量販店で売られる中国製家電の価格は日本製より3割ぐらい安かったのですが、そうなれば日本製の方が安くなり、中国家電はまったく売れなくなるはずです。さらには、円安で日本製品は海外でもバンバン売れるようになり、輸出製造業の業績は一気に急回復します。

 ただし、アベノミクスによって恩恵を受けるのは、そうした大企業と株価の上昇で潤う資産家だけとなる公算が高いです。デフレ脱却が図られたとしても、直ちに労働者の賃金が上がる環境にはないので、庶民の生活はすぐにはよくならないと思われます。

 アベノミクスが経済に及ぼす影響は、まさに小泉構造改革の再現なのです。小泉改革の5年間で株価は2倍、配当は3倍、大企業の役員報酬は2倍となりました。たしかに経済は成長したのですが、その一方で富の分配は庶民には及びませんでした。結果、いまだに尾を引く格差社会が顕著になったわけです。

※マネーポスト2013年春号