「静かな夜の秋葉原を佇む」(コスプレイヤー=みるる  撮影=龍道)

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■王様の大人買い

秋葉原を歩いていると外国人をよく見かけます。多くは海外からの旅行客です。秋葉原が海外から観光地として認識されているのは、やはり多くの免税店が秋葉原に集積しているからでしょう。秋葉原に大勢の外国人が訪れるようになったのは、日本製の家庭用電化製品が海外でも人気を集めた1980年代頃からです。当時、ある国の王族が秋葉原にやってきて、免税店のシャッターを閉めさせて貸し切り状態にし、クレジットカードを店員に預けて、欲しい商品を次から次へと購入したそうです。特に日本製の電気炊飯器は友人へのお土産に喜ばれると、棚にある炊飯器をすべて購入するという「大人買い」をしたとか。

出国手続き後に利用できる空港内の免税店とは違い、秋葉原のような街中にある免税店を「市内免税店」といいます。日本の市内免税店は世界でも珍しい「現場免税制度」を採用しています。つまり、店舗内で免税の手続きができ、消費税を差し引いた金額で免税対象商品を購入できるのです。私たちが海外に旅行した際に消費税分の還付を受けるには、帰国の際の空港で手続きをしなければなりません。飛行機の時間を気にしながら、慣れない還付手続きで困った経験のある方も多いのではないでしょうか。それを日本では免税店が旅行客のために先に消費税分を立て替えて、空港での面倒な手続きをしなくてもいいように取り計らってくれるのです。これこそ、日本の「おもてなし」精神が具現化された素晴らしい制度ではないでしょうか。しかも、秋葉原の免税店の「おもてなし」はこれだけではありません。

■消費税10%で参入店は増えるけど

秋葉原の免税店では、さまざまな国から訪れる旅行客に対応できるように、それぞれの国の言語と海外仕様の商品に精通した外国人スタッフを配置しています。旅行客は自国の言葉できちんと商品の説明を受け、その場で免税価格にて購入できるのですから、ますます気分よく買い物を楽しめます。海外旅行客が秋葉原を外せない観光地として訪れる主な理由がここにあります。日本独自の「おもてなし」の免税制度に、さらに付加価値をつけてこれまで支えてきたのが、秋葉原の免税店なのです。

もうすぐ日本の消費税率は5%から10%へ移行します。そうなると、海外旅行客を求めて免税店事業への新たな参入も増えるでしょう。ただし、日本独自の「おもてなし」の免税制度は、旅行客にやさしい分、店側に負担を掛けることになります。世界に誇れるこの免税制度の下で、新規参入の免税店が活動できるように、煩雑な書類手続きの簡素化や、外国語や免税対象商品についての知識を学ぶための支援など、負担が少しでも軽くなるような施策を財務省や国土交通省が行ってほしいと期待します。さらに、参入店も積極的に、秋葉原の免税店が育んできた旅行客への「おもてなし」の精神を学んでほしいと思います。それでこそ、日本の旅の思い出とともに気分よく出国してもらえる本当の観光立国になれるのではないでしょうか。

(次回のお題は「コスプレビジネス」。4月23日[火]更新予定)

(梅本 克=文(デジタルハリウッド大学客員准教授))