10年後、最も伸びるのは「医薬品・化粧品」、下がるのは「電機」

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ホームページの謳い文句が大げさではないか。平均年齢が異常に若くないか……。就職支援のプロが良い会社の探し方を伝授する。

せっかく就職したのに「こんなはずではなかった……」と不幸な思いをする人がいます。一口に不幸と言っても自身の適応能力の問題や会社との相性などさまざまな状況がありますが、そんな事態が生じる根本的な原因は会社選びの段階で判断を間違えるからです。

なぜ、人生の大きな節目である会社選びで判断を間違えるのか。その理由は往々にして本人の研究不足か、企業の巧妙な宣伝にはまってしまいミスマッチが生じたからです。

どうすれば不幸になる会社を回避できるのか。それにはまず、「良い会社」を定義する必要があります。ここで言う良い会社とは世間一般の評価ではなく、自分に合っている会社、自分が無理なく長期的に働ける会社のことを指しています。

視点を変えれば、世の中の評価に振り回されるのではなく、自分なりの判断軸を確立しましょうということです。自分軸を確立するには、まず自分がどんなとき、どんなことでやる気が引き出されるかを知ることです。それと併せ、「この会社はどうやって社員をやる気にさせているか」を調べ比較していけば、そこが自分に合う良い会社か否かを判断できるようになります。

ただ、世の中には400万もの会社があり、その中から良い会社を見つけるのはなかなか大変です。どうやればいいのか、その方法を説明していきましょう。

■業界・業種、会社を絞る

●まずは新聞、雑誌で「キーワード」を探そう

現在、多くの人が会社探しに就職サイトを使っています。非常に便利なものですが、そこは誰もが使っていて過当競争が繰り広げられるレッドオーシャンの世界です。しかも掲載されている会社数はせいぜい1万社くらいにすぎず、その狭いプールの中で学生はひしめきあっているわけです。

私がまずお勧めするのは、マクロの観点から網をかけていくことです。つまり、世の中の動向や経済環境を踏まえて将来の成長が期待でき、かつ自分が興味を持って働けそうな業界をセグメンテーションしていくのです。

では、どうすればいいか。そのためには今、注目されている時代のキーワードを見つけ出し、そこに関連する業界を探していくことです。たとえば、これからの時代を表すキーワードの1つに「高齢化社会」があります。そこに関連する業界としては介護や福祉のほか、医療や医薬品がすぐ思い浮かぶでしょう。もしかすると、ほかにもシルバーマーケットでビジネスを伸ばしている業界があるかもしれません。

産業には栄枯盛衰がありますから、現在のベストではなく将来のベストを選ぶべきです。キーワード選びには時代の流れを意識しましょう。10年後、20年後、30年後に経済の主役になっているような業界に今入っておけば、非常に充実したビジネスマン人生を送れます。その業界や企業の成長と自分の成長が重なり合っていきますし、責任のある立場になったときに大きな影響力を持てる可能性もあります。

時代のキーワードは、新聞やビジネス誌に普段から目を通すことで得られます。それらの購読は、就職を控えた人なら当然しておくべきです。もちろんネットを使ってもよいですが、その場合はみんなが見ている就活サイトではなく、マーケッターやリサーチャーが情報源にするようなサイトにアプローチするほうがいいでしょう。

一番効果的なのは、その分野に詳しい「大人」に聞いてみることです。いろいろな見解やアドバイスも併せて聞けるうえ、社会人とコミュニケーションをとる練習にもなります。

そうやって業界のセグメンテーションができたら、次は具体的な会社選びを行いましょう。業界さえ絞り込めれば、その中にどんな会社があるのかは「会社四季報」や「業界地図」などの書籍、図書館に置いてある業界紙や業界別データなどからピックアップすることができます。

探し出した会社を見るときの視点には、大きく「経営視点」と「職場視点」の2つがあります。つまり、投資家のような立場からと、実際に働く場所という観点から良しあしを見ていくわけです。

さらに、2つの視点はそれぞれ3つのポイントに分けられます。経営視点で1つ目のポイントになるのは、経営理念やビジョンといった会社の方向性と、それが実際に社員に共有されているかどうかです。2つ目は、ビジョンを実現するための戦略やビジネスモデルで、それらにどれだけ独自性、将来性があるかどうか。3つ目は財務の健全性や人材、ブランド、顧客といった、競争を戦い抜くためのリソースをどれだけ持っているかです。

職場視点では、まず組織風土を見なければなりません。どんな組織で、どういう特徴や雰囲気があり、どんな人たちが働いているのか。2つ目は仕事の内容とやり方で、3つ目は給与や福利厚生、マネジメントスタイル、社員の評価方法などといった処遇に関するものです。

■ウェブでブラック情報を見抜く

●「熱意」「やる気」が強調されていないか

6つの視点で会社を見ていくときにネックになるのが、分析に必要な情報の収集です。上場企業であれば有価証券報告書やホームページ上でさまざまな情報がオープンにされていますが、非上場企業や中堅・中小企業では得られる情報に限りがあります。

会社に関する情報源はABC3つのランクに分けられます(図)。Cランクは誰でも容易に入手できる情報、Bランクは積極的に動けば入手できる情報、そしてAランクの情報は社員との接触やその企業に詳しい人などから直接得た1次情報で、最も入手しづらく、もし入手できたら強い武器になる可能性があります。

会社の情報収集でまず見るべきは、やはりその会社のホームページです。見る順番は(1)企業理念・ビジョン、(2)トップのメッセージ、(3)事業内容、(4)社史、(5)財務データ、(6)人と組織、(7)取引先、(8)採用情報という流れがよいでしょう。理由は、会社の上位概念から徐々に各論を見ていくことで、会社の目指している方向性を把握するとともに、理念やビジョンが実際の戦略や人の働き方に通底しているかを確認しやすいからです。

とくに採用ページは欲している人材像に加え、気の利いた会社なら活躍している先輩の体験談も掲載されていますから、自分に合うかどうかのイメージをつかむうえで必見です。

ただし、会社のホームページは会社側からの一方的な情報発信ですから、掲載されている内容の信頼性を確かめる必要があります。それにはビジネス誌や業界紙など、第三者が発信した情報で裏をとっていきます。学生でそこまで見る人は少ないですから、就職活動における差別化にもつながります。

朝早くから夜遅くまで働かされたうえに残業代も支払われず、パワハラやセクハラが横行しているようなブラック企業の問題が最近はクローズアップされています。会社のホームページや求人広告の内容から、ブラック企業はある程度予測できます。

たとえば、会社の謳い文句が「明るい未来が待っています」「元気ハツラツな職場」といった抽象的で大げさな表現が多用されているところ。職場環境が悪い会社の特徴は、どんどん人が辞めるから人が足りない点にあります。そこで大勢の人に応募してもらうため、万人受けする聞き心地のいい文句を羅列するのです。

募集広告で具体的な業務より「熱意」「やる気」などの精神論が強調されているところも気を付けるべきです。具体的な仕事の内容を記述すると人が集まらなくなってしまうから、そうしている可能性があります。

また、社員数に対して求人回数や募集人数が非常に多い会社は、人が全然足りていない、離職率が高いと推測できます。異常に平均年齢が若いと、長く働ける労働環境や待遇ではない懸念があります。処遇がよすぎる会社も要注意で、実はノルマ制でたくさん稼いでいるのはごく一部ということがよくあります。

ただし、人が足りないのは、会社が急成長していることが原因かもしれません。つまり、成長中のベンチャー企業にも前記の特徴が当てはまるのです。そもそもブラック企業の定義は難しく、経営資源が足りないベンチャー企業が存続、成長するにはがむしゃらに働くことも必要です。その仕事を通して得られるものがあると当事者が納得していれば、それはブラックとは言えませんし、そうした企業群の中から将来、エクセレントカンパニーと呼ばれる会社が出てくるかもしれません。

そのような判断を行うには、Aランクの情報を収集することが必要です。

■会社訪問で空気を確かめる

●社員にその人自身の働く目的を聞こう

Aランク情報、すなわちその会社の社員や関わりのある人などから話を聞くことは、BランクやCランクの情報収集に比べハードルは高くなります。

しかし、Aランクの情報収集は面接で受かるためにも有効な手段です。面接官は応募者が就職サイトに書いてあることしか言わないのでうんざりしています。そのとき「御社では今、こんな取り組みをしていると聞いたのですが本当ですか?」と独自に得た情報を面接官にぶつければ、高い評価を得られるかもしれません。

問題はどうやって情報源となる人をつかまえて話を聞くか、です。その第一歩は自分に近い人、たとえば親や兄弟、親戚、大学の先輩などに相談してみること。その中に情報源になる人がいればベストですが、実際にはそう簡単にいかないでしょう。その場合は「こういう業界に詳しい人はいませんか」と尋ね、紹介を依頼することです。

話を聞く相手が見つかったら、聞きたい質問を事前に準備しましょう。ポイントは3つあります。

1つ目は経営理念やビジョン、戦略などの徹底度、浸透度です。「経営理念を職場ではどんな形で実行しているのですか」「戦略の浸透を象徴するような事例はありますか」などと質問し、確かめていきましょう。

2つ目は、具体的な仕事の内容や人に関することです。たとえば「入社して、最初はどんな仕事が与えられるのですか」「実際に社内で活躍しているのはどんな人ですか」とリアルな仕事内容や社員の姿を聞いていきます。

3つ目は、聞く相手がその会社の社員であれば、その人自身の働く目的やモチベーションなど、個人のやりがいです。そうしたナマの話から、会社の実態が見えてきます。

また、会社訪問や説明会などで実際に会社の中に入る機会もあるでしょう。会社訪問で確認しておきたいポイントは、まず経営幹部や社員の対応です。対応してくれる社員の態度や言葉づかいに好感を持てるかどうか。会社の社風は、そこで働く人たちの態度や行動ににじみ出てきます。

社内の掲示物や配布物も大事なチェックポイントです。そこから会社の雰囲気や今、どんなことに力を入れているのかがわかります。受付や洗面所などがきちんと整理・整頓され、清潔感があるかどうかも要チェックです。社内のコミュニケーションが円滑で業績の良い会社ほど、整理・整頓が行き届いている傾向があります。

(クオリティ・オブ・ライフ代表 原 正紀 構成=宮内 健)