自分がどんな人間で、どんな考えを持っているのか。それを語り、伝えるための“スピーチ力”は、この社会で生きていく上で絶対に必要な技術です。

4月になり新年度がスタートしました。新入学生や新入社員の皆さん同様、ぼくも気合いを入れて日々にぶつかっていきたいと思います。環境が変わった人もそうでない人も、この時期は人前で話をする機会が多くなるとお察しします。自己紹介、所信表明、宴会幹事……など、事あるごとに“スピーチ力”が求められます。生き馬の目を抜く現代社会では、たとえあなたがどんなに頭脳明晰(めいせき)であろうと、有益なアイデアを持っていようと、スピーチ力で劣っていたら宝の持ち腐れになってしまう。

ぼくは世界各地で講演や講義をさせていただく機会が多いのですが、経験上、日本語でも中国語でも英語でも、スピーチ力の基本は同じだと思っています。

テクニックとして大事なポイントは3つ。まずは原稿を読まないこと。聞いている人たちの表情や目を見て話さなければ、内容が心に響くことはありません。

2点目はテンポよくリズミカルに話すこと。「えっと」「あのー」などを繰り返すたどたどしいスピーチは、相手の話を聞く気持ちを萎えさせてしまいます。

そして3点目は、複雑なテーマをシンプルに伝えること。そのために有効なのが、「3」というキーワードです。この「スピーチのテクニック」も3点に集約しましたが、ポイントを3つに絞り込んで話すんです。2つだと少ないし、4つでは多すぎて聞いている人が飽きてしまう。ポイントを3つに集約してテンポよく主張すると、インパクトを持ったスピーチになる場合が多い。ぼくは世界で勝負するためのラッキーナンバーは3だと肝に銘じ、日々3ヵ国語で訓練しています。

現代におけるスピーチの達人といえばバラク・オバマ米大統領でしょう。以前も本コラムで述べましたが、1月の大統領就任演説を生で聴いた際は圧倒されてしまいました。

2月に議会で一般教書演説を行なった際も、内外の問題をリズミカルかつ的確に語り、自身の考えをほどよく織り込み、何度もスタンディングオベーションを受けていました。とにかくスピーチによって人を巻き込む力がケタ違い。一国のトップとしていつでも豪快なスピーチができるのは、オバマ大統領にとって絶対的な武器だと思います。

一方、皆さんは近年、日本の首相のスピーチに感銘を受けた記憶はあるでしょうか? 政府の長として考えていること、国民が直面していく問題など、インパクトをもって伝えなければならないテーマは無数にあるはずですが、残念ながら国民の共鳴や感動を得るには至っていないようです。外国に対しても然り。国のトップのスピーチ力は国益をも左右する大問題なのです。

そんな日本の現役政治家のなかで、最もスピーチ力に長けていると感じるのが、自民党の小泉進次郎議員です。多くの世襲政治家が批判にさらされているなかで、彼だけはどの世代からも一定の支持を集めているように見受けられます。

オバマ大統領もそうですが、小泉氏にはスピーチ力を引き立てるルックス&爽やかさがありますし、所作もスムーズ。国際標準の自己プレゼンテーション感覚を身につけているのは、著名な政治学者のジェラルド・カーティス氏に師事した米コロンビア大学時代の影響もあるのではないでしょうか。

現在は自民党の青年局長を務めている小泉氏ですが、まだ本当の意味で戦いの場に身を投じているとはいえません。彼の存在が今後、日本の政界をどのように動かしていくのか? 日本社会の成熟度を測るひとつの物差しになると思いますし、ぼくも同世代としてぜひ切磋琢磨しながら精進していきたい。好敵手を見つけて燃えない男がいるというなら、どうしてなのか逆に教えて!!

今週のひと言


新生活に必要な“スピーチ力”は


「オバマ&小泉」に学びましょう! 

●加藤嘉一(かとう・よしかず)


日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学ケネディスクールフェロー。新天地で米中関係を研究しながら武者修行中。本連載をもとに書き下ろしを加えて再構成した最新刊『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)が大好評発売中!