鉄道編

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業界トレンドNEWS Vol.168

鉄道編

鉄道各社が取り組む運賃収入以外の売り上げや沿線価値を高めるための取り組みとは?


■沿線価値向上のノウハウを海外展開する機会が増加。国内では流通部門での収益拡大に引き続き注力

JR旅客6社、大手私鉄16社の2012年3月期における総売上高は12兆9700億円。景気減速による定期券旅客の減少、東日本大震災などの影響があり、ここ10年で最も高い売り上げを記録した09年3月期に比べ、1割程度も減った。

鉄道各社の売り上げには、「鉄道運賃収入」のほかに、系列の百貨店・スーパーなどから得られる「流通収入」、沿線の住宅地整備などによる「不動産収入」がある。鉄道運賃収入は売り上げの中で大きな割合を占めるが、国内の人口減少によって長期低落傾向だ。また、鉄道関連施設の維持や安全対策などに多額の投資が必要で、収益性はさほど高くない。そのため、鉄道各社は流通関連などの「非鉄道事業」に力を入れている。その代表格が、東日本旅客鉄道(JR東日本)の「エキュート」や東京地下鉄(東京メトロ)の「エチカ」といった「駅ナカ」関連事業、そして、阪急百貨店梅田店・東急百貨店東横店の大型改装、東京急行電鉄が主導した「渋谷ヒカリエ」に象徴される駅周辺の商業施設開発だ。また、東海旅客鉄道(JR東海)が高島屋と、西日本旅客鉄道(JR西日本)が三越伊勢丹ホールディングスと合弁会社を設立するなど、小売業界との連携を進める動きも盛んになっている。

沿線価値を高めるため、ハードだけでなくソフト面の強化に乗り出す鉄道会社も多い。例えば、京王電鉄の「京王ほっとネットワーク」、東京急行電鉄の「東急ベル」のように、食料品の宅配・家事代行などを行う生活総合サービスがスタート。また、駅近くの施設に保育所を設置するなどの子育て支援事業や、介護付き優良老人ホーム運営などの高齢者向け事業を手がける企業も増加。このように、各社は生活に密着した取り組みを強化して沿線に住む人を増やし、鉄道運賃収入をはじめとした売り上げアップを目指している。

一方、国内市場の縮小を見据え、海外に展開する動きも広がっている。07年に開業した台湾高速鉄道は、東海旅客鉄道・西日本旅客鉄道が新幹線の車両技術を輸出した最初の事例として知られる。ほかにも、数多くの高速鉄道・都市鉄道整備の案件において、日本の鉄道各社が受注に向けた活動を行っている。今後は、路線や車両などのハードだけでなく、運行システムなどのソフトを輸出する動きがさらに強まるだろう。また、海外鉄道会社と提携する試みも活発化しそうだ。

さらに、鉄道分野以外でも海外進出が拡大している。例えば、東京急行電鉄はベトナムの国営デベロッパーと共同で、「TOKYU BINH DUONG GARDEN CITY(東急ビンズン田園都市)」プロジェクトを開始。同社が日本国内で培ってきたノウハウを生かし、ベトナム版の「田園都市線」を開発しようというものだ。このように、鉄道事業を核として流通・不動産事業などと連動させる試みは、今後人口増加が予想される海外諸国において大きな需要が見込めるだろう。