アニメ「サザエさん」は昭和46年に第1回放送が行われた長寿番組である。ほのぼのとしたサザエさん一家のユーモアに癒される人も多いが、作家で人材コンサルタントの常見陽平氏は「サザエさんを見るとブルーになる」という。そこには平成の世にはあり得ない光景が展開しているからだ。

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 皆さんは、「サザエさん症候群」という言葉をご存知ですよね?日曜の夕方になり、『サザエさん』を見ると、「明日、会社行きたくないなぁ」とブルーになるわけです。今回は、この「サザエさん症候群」について考えてみることにしましょう。

 最初に言っておくと、私、幼い頃から『サザエさん』が苦手でした。なんでこう、毎回、展開が見え見えなのだろう、ギャグが面白くないのだろうと思っていました。『サザエさん』ファンではないという前提で、読んで頂けると嬉しいです。

 そんな私が、4月6日(日)の夜、実に久々に『サザエさん』を観ました。なぜか?それは、新しい年度が始まって最初の週末だったからです。新社会人になった人、新しい期を迎える人が、どのように番組を見るのか?自分も体感しようと思ったからです。

 久々に見た感想とは?いやあ、人々がサザエさん症候群になる理由がよくわかりましたよ。なぜか?そこには、今ではあり得ない、良い意味で昭和的な幸せな世界が広がっていたのです。もともとは、ありふれた日常を描いたものだったはずなのですが、平成25年の今みると、あり得ない世界になっているのです。

 まず、家族構成がいまやなかなかない感じです。まあ、サザエさんがカツオやワカメの母ではなく、お姉さまだったという事実自体、驚きなのですが、それ以上に、親子3世代同居というのは、いまやごく少数派です。2010年度の国勢調査によると、親子3世代で住んでいる家庭は7%にすぎません。地方では多く、東京では少ないのも特徴です。都内で親子3世代同居している家庭は2%にすぎません。しかも、あの親子3世代の仲の良さは異常です。

 他にも、マスオさんは正社員ですし、30代で係長です。日本労働組合総連合会『2011年春季生活闘争連合 賃金レポート 役職別の人員構成と賃金』によると、学歴・性別を問わず、従業員1000人以上の企業で見てみると、2010年の時点で部長職は2.5%、課長級が7.0%、係長級が6.0%、他役職が6.5%となっており、非役職者は77.9%です。劇中のマスオさんとほぼ同じ年令だと思われる、男性大卒35〜39歳においては部長級がすでに1.1%、課長級が9.3%いるものの、係長級は15.9%、他役職が9.7%となっており、非役職者は64.1%です。実はスピード出世だということが言えます。

 さらには、サザエさんは、専業主婦です。専業主婦になりたい女性は増えていると言われていますが、実際になれるかどうかは別問題。そもそも、結婚できているという時点で婚活時代の現在とは違いすぎます。

 そして、マンネリという批判を簡単にスルーできるほどの、いつもと変わらない、V.S.O.P(ベリー・スペシャル・ワン・パターン)の展開です。

 こりゃ、平成の時代を生きる我々が見たら、ブルーにならざるを得ないでしょう。

 すでに『サザエさん』と現実は、大きく乖離しています。いまは、「昔はよかった」的に見ることができますが、あと10年もすれば子どもたちは「日本昔ばなし」のように見ることでしょう。

 私たちは平成の厳しい世の中を生きています。その現実はすぐには変わりません。サザエさん的世界などもうないのです。昭和にしがみつくのはやめて、今を生きましょうよ。サザエさんは既に御伽話なのです。