本屋大賞発表会の熱狂もさめやらぬうちに今度はハルキ祭り。

 ということで、4月11日深夜、代官山・蔦屋書店の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』発売カウントダウンに行ってきた。福田和也氏をゲストに招いた「深夜の読書会」もやってたそうですが、折しもこの日は吉川英治賞の贈賞パーティ。

 吉川英治文学新人賞を受賞した伊東潤さんと月村了衛さんのお祝い会を二次会三次会とハシゴしていたら23時半を回っていて、あわてて日比谷線銀座駅にダッシュ。中目黒駅からタクシーを飛ばして蔦屋書店に駆け込んだのは23:58。

 カウントダウン会場は、地上波テレビ各局および新聞・雑誌のカメラマンと取材記者でぎゅうぎゅう詰め。版元(文藝春秋)の編集者たちや、「王様のブランチ」の取材でやってきた市川真人氏がなんとなく集まっている売り場のほうから遠目に眺めてたんですが、なにしろ人が多すぎて、なにをやってるのかさっぱりわからない。

 イベントを仕切る蔦屋書店のカリスマ書店員・間室道子さんの声もほとんど届かず、「さん、にい、いち、ぜろ!」という声がかすかに聞こえてきたと思ったら、もう発売になってました。いやいやいや、テレビ的にももっと盛り上げないと! ていうか、文春の某役員まで、「え? まだだろ? いまのは練習だろ?」とか言ってました(笑)。

 列の先頭に並んで最初に『多崎つくる』を手にした大学生がTVクルーに囲まれて取材を受けるとか、お約束の光景とはいえ、村上春樹の新作でねえ......と思うと感慨深い。

 列の最初のほうに知人(元早川書房のイケメン編集者)が並んでて、いちはやく購入したのを見せてもらい、iPhoneでパチリ。TwitterとFacebookに写真を上げたときにはすでに00:07になっていた。

 折悪しく4月中旬とは思えない寒さだったんですが、外の列に並んでいる人には、併設のスターバックスからコーヒーがふるまわれるサービスも。早速、店内の椅子にすわって読みはじめる人、ノートPCで原稿を書く記者、購入者に取材するTVレポーターなどなど、店内の熱気はその後1時間ばかり続いた。

 文春関係者のみならず、敵情視察だか祭り見物だかにやってきた他社編集者の姿もちらほら。整理券をもらって並んでいる人たちの列が途切れたところでレジに並び、00:37ごろに私も無事購入。店員から「何冊ですか?」と訊かれるのが新鮮でした(いっしょに並んでた某紙の女性記者は6冊購入)。

 当然、もう電車はないので、併設のスタバでカフェラテ飲みつつ、書きかけの原稿を1本仕上げてから、おもむろに『多崎つくる』を読みはじめる。おお、色彩がないってそういう意味だったのか。。んで、ゴレンジャーからハブかれた主人公が16年後にその真相を探りはじめる、と。しかも名古屋かあ......。

 蔦屋書店は午前2時閉店なので、恵比寿までぶらぶら歩いて駅前のマクドナルドでハルキ読書の続き。午前5時まではドリンクとポテトのみの営業で、おまけに1階の窓際カウンター席は隙間風が入ってきて寒いので、半分まで読んだところで腰を上げ、すぐそばの築地とと兵衛・恵比寿駅前店に移動。80年代歌謡曲の有線放送をBGMに二色丼(ネギトロと中トロ)を食べつつ続きを読むも、「それだけひっぱっといて真相がそれかよ!」と脱力し、後半どんどんスピードが落ちてゆく。

 残り100ページで店を出て、日比谷線恵比寿駅ホームのベンチ、始発電車の車内、東西線茅場町駅のベンチ、車内と読みつづけ、西葛西駅のホームで午前6時に読了。楽しいハルキ祭りの夜でした。これで小説がもうちょっと面白かったら完璧だったな。

(大森望)



『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
 著者:村上 春樹
 出版社:文藝春秋
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