前作「1Q84」から3年ぶりとなる村上春樹さんの長編小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』が、12日に全国一斉発売されました。活字離れが聞こえる昨今ですが、書店ではカウントダウンイベント行ったり、特設コーナーを準備したりと、どこも「村上春樹」で盛り上がっています。

 今回の新作発表にあたって、本の内容はほとんど明かされませんでした。通常、発売前に書評家や新聞社などに送られる書評用の本も今回はナシ。その徹底ぶりが、村上春樹ファンに火をつけました。

 「大学二年生の七月から、翌年の一月にかけて、多崎つくるはほとんど死ぬことだけを考えて生きていた。その間に二十歳の誕生日を迎えたが、その刻み目はとくに何の意味も持たなかった。それらの日々、自らの命を絶つことは彼にとって、何より自然で筋の通ったことに思えた。なぜそこで最後の一歩を踏み出さなかったのか、理由は今でもよくわからない。そのときなら生死を隔てる敷居をまたぐのは、生卵をひとつ呑むより簡単なことだった」

 これは、新作『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の冒頭です。村上さんは、思い立ってこの作品に取りかかった時、最初の数行を書いてからは、どんな展開があるのか、どんな人物が出てくるのか、どれほどの長さになるのか、何もその先がわからないまま、執筆を続けたそうです。

 「最初のうち僕に理解できていたのは、多崎つくるという一人の青年の目に映る限定された世界の光景だけでした。でもその光景が日々少しずつ変貌し、深く広くなっていくのを見るのは、僕にとってとても興味深いことだったし、ある意味では心を動かされることでもありました」(著者インタビューより)

 こうして生まれた、待望の新作。村上さんが描いた多崎つくるの物語が、ついに公開です。



『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
 著者:村上 春樹
 出版社:文藝春秋
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