大谷翔平(日本ハム)と藤浪晋太郎(阪神)、ふたりの高卒ゴールデンルーキーが衝撃のデビューを飾った。

まず“二刀流”の大谷が、バットで非凡な才能を見せた。3月29日、開幕戦の西武戦に8番ライトで先発出場すると、2安打1打点でいきなりお立ち台に上る大活躍。投手としては今後、ファームで調整を続ける方針で、1軍初登板は5月19日の交流戦、巨人戦(札幌ドーム)での先発が予想されている。

プロ野球解説者の金村義明氏はこう語る。

「大谷は投手としても、野手としても超一流で、まるでマンガの世界から飛び出てきたような選手。当初は二刀流に反対していた僕ですが、彼のプレーを生で見た途端にその考えを捨てました(苦笑)。プロ野球に携わって30年以上たちますが、こんな選手は初めて。今は、彼なら本当にやってくれるという期待感でいっぱいです」

一方の藤浪は3月31日のヤクルト戦に先発。1965年のドラフト制導入後、高卒新人として史上最速となる開幕3戦目での先発デビューは、6回で被安打3、7奪三振、2失点(自責点1)。惜しくも敗戦投手となったものの、高卒新人離れした快投を披露した。さらに4月7日の広島戦では2番手として“中継ぎデビュー”を果たし、2回を1安打1失点とまたも白星にはつながらなかったものの、3三振を奪って実力の片りんを示した。

「オープン戦を見るかぎり、ローテーション入りは厳しいだろうと思っていたのですが、デビュー戦で今までで一番のピッチングをした。フォームのばらつき、シュート回転する直球、クイックモーションの技術、スタミナなど課題も残されていますが、シーズンを通じて成長するでしょう」(金村氏)

金村氏は「ケガさえなければ藤浪は新人王レースに加わってくる」と太鼓判を押す。

辛口で知られるプロ野球解説者の江本孟紀(たけのり)氏も、藤浪をホメる。

「高卒ルーキーが普通に開幕ローテーションに入っていること自体がすごい。あのボールを見ればふたケタ勝利も十分にあり得ると思います。そうなると、勝ち星では投手10傑に入ってくる。高卒新人でそこまでできたなら言うことはない」


一方、大谷に対してはこんな疑問を投げかける。

「確かに、打者としても、投手としても、素晴らしいものがある。ただ、いつまで“夢”を追い続けるつもりなのでしょう。どちらでも一流になる能力があったとしても、今のプロ野球のシステムを考えたら無理なんです。体はひとつしかない。打者として試合に出つつ、たまにマウンドに登るくらいのことはできるかもしれないが、そんな“客寄せパンダ”的なことをさせて、本当に彼のためといえるのか。このままでは間違いなくどちらも中途半端に終わる。本当にもったいないです」(江本氏)

江本氏は「二刀流を続けるかぎり、ライバル藤浪と同じ土俵にすら上がれない」と断言する。

では、仮に打者か投手、どちらかに専念した場合はどうか?

「個人的には投手に専念すべきだと思いますが、今からでは先発ローテーション入りするためのトレーニングをやってきていないので、いきなりのふたケタ勝利なんて無理。当然、藤浪に勝つことはできません。また、打者としてもまだまだ未熟で、プロでシーズンを通じて活躍できるほどの力はない。それもこれも、キャンプ、オープン戦と夢を追ってきた弊害ですよ」(江本氏)

実際、二刀流挑戦が大谷の野球選手としての価値を下げる、という意見はほかでも聞こえてくる。

「素材のよさでは断トツに大谷が上ですけど、それを生かすも殺すも本人次第ですからね。まあ、大谷の場合、投打ともにあまりにできすぎてしまい、誰も判断を下せないんでしょうけど……」(スポーツ紙・日本ハム番記者)

シーズン終了後、笑っているのはどちらの怪物だろうか。

(取材・文/コバタカヒト)