ホーチミン人民裁判所兼人民検察庁。私もここに足を運んだ。100年以上前に建てられた由緒あるもの。ただし老朽化のため新しいビルへの機能移転が決まっている【撮影/中安昭人】

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日本で15年間の編集者生活を送った後、ベトナムに渡って起業した中安記者が、ベトナムで経験した訴訟についてレポートします。

賃貸契約を破棄したのに権利金を返さない大家と訴訟に

 11年もベトナムで仕事をしていると、トラブルも何度となく経験している。謝って済むレベルであればいいのだが、弁護士さんのお世話になったことも、一度や二度ではない。今回は、そんな例の1つを紹介したい。

 私が独立する前、ある会社の一事業部の責任者として仕事をしていたときのことである。いろいろ事情があって、引っ越しをすることになった。ちょうど私が日本に出張している間に、社員たちが「出物の物件を見つけました!」というので、私は空港から現地へ直行。「すぐに権利金を払わないと、昨日見に来た別の会社に貸す」と大家が言うので、たまたま手元に持っていた現金を使って、翌朝一番で契約をした。

 ところが内装工事がすべて終わった時点で、大家と揉めてしまったのである。そこで会社が顧問契約をしている弁護士さんに間に立って交渉してもらったのだが、最終的に大家の方から「お前らのようなヤツには貸さない!」と契約破棄を申し渡されてしまった。後で聞くと、我々よりも高い家賃を払うという、別の店子が見つかったのが理由だったらしい。

 我々は、「改装費用は諦めるが、権利金だけは返して欲しい」と譲歩したのだが、大家はまったく取り合ってくれない。結局、裁判をすることになった。権利金は約4000ドル。ベトナム人にとっては年収に相当する金額である。

 第一審は我々の100%勝訴。大家が控訴したが、第二審でも我々が100%勝訴。それも当然。この大家はちょっと、いや、かなりの変人で、法廷で訴状を読み上げた我々の弁護士に対し、「これはオレの金だ、絶対に返さん。お前を殺してやる!」と叫んで襲いかかったのだ。私はその日、弁護士さんを代理人に立てており、出廷していなかったので、現場を見ていないのだが、裁判官も呆れていたそうだ。裁判は二審で終了。「すぐに権利金を全額、返金しなさい」という裁判所命令が下った。

 ところが支払い期限が来ても、大家はお金を返してくれない。

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