『海賊とよばれた男』で、2013年の「本屋大賞」を受賞した百田尚樹さんが、自分の首をも絞めかねない? 問題作を発表しました。

 新作『夢を売る男』は、出版界を舞台にしたブラック・コメディ。敏腕編集者・牛河原勘治が勤める丸栄社には、本の出版を夢見る人たちが集まってきます。自らの生き様を本に残したい団塊世代の男性、スティーブ・ジョブズになると言いながらも職を転々とするフリーター、我が子に英才教育を受けさせてママ友を見返したい主婦......。

 集まってくるのは、どこか自信過剰が垣間見える人ばかり。そんな人間からお金を巻き上げるのが、丸栄社独自の出版形態として売り込んでいる、ジョイント・プレス。出版にかかる費用を丸栄社と著者が負担し合うというもの。

「普通の人には、この作品が理解できないだろう。しかし、それはある意味、仕方がないことだと思う。なぜなら、あまりに斬新だから」

「時代を突き抜けた作品というものは、常に古い頭の出版人には理解されないものだ」

といった牛河原の甘い言葉が著者の心のスキを突くのです。

 同作では、自意識過剰な人を徹底的に皮肉ったブラックな表現が読者を笑わせるのですが、売れない作品を出し続ける作家らについても、面白おかしくツッコミをいれています。出版業界の現状をリアルに表現している分、この業界を目指す人にとっては必読な一冊なのかもしれません。しかし、裏表紙には、「作家志望者は読んではいけない!」といった一言も......。

 ブラックな切り口がウリの同作ですが、そのままでは終わらないのが、百田作品の面白いところ。業績が右肩上がりだった牛河原の前にあらわれた強敵とは......。

 「知っているか? 現代では、夢を見るには金がいるんだ」。最後のページを閉じた貴方は、きっとこの言葉の重みを理解していることでしょう。



『夢を売る男』
 著者:百田 尚樹
 出版社:太田出版
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