シルク布のような炎の映像を視聴者が絶賛

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日本の大手総合家電メーカーが苦境に立たされている。原因のひとつと指摘されているのが「行きすぎた機能主義」だ。顧客が求めているのはスペックではなく体験であり、技術志向だけではそれに対応できないと言われる。

それでも日本メーカーは、相変わらず技術志向を続けているように見える。期待された「3Dテレビ」の売上は伸びずじまい。起死回生の一手と言われる高精細の「4Kテレビ」の登場が報じられても、「また高機能か、懲りないな」と呆れた人も多いのではないか。

立ちのぼる炎の美しさに「完全な映像を拝んでみたい」

「映像が4倍美しいと言われても、イメージが湧かない」「そもそも、今以上に映像の美しさは求めていない」

そんな人でも、4Kテレビに対応する映像を実際に見れば、少しは考えが変わるかもしれない。動画共有サイトVimeoでは、いま架空の火災現場を4Kテレビ用カメラで収めた映像が話題を集めているからだ。

4Kテレビは、表示パネルの水平画素が約4000ある高精細テレビのこと。現在主流のフルハイビジョンの水平画素(約2000)の2倍あるので、画面全体の画素数は4倍に増えることになる。これが「映像が4倍美しい」と言われるゆえんだ。

Vimeoに掲載された動画は、米国Vision Research社の「Phantom Flex 4K」で撮影したもの。この会社はプロユースの撮影機材を製造販売しており、カメラは4Kテレビ用のプロトタイプとして開発、発表されたものである。

映像では、ホースから放たれる水の粒や、シルク布のように立ちのぼる炎の輪郭、防煙マスクを外した消防士の髪一本の動きなどが、鮮やかに映し出される。私たちがこれまで見てきた映像と、クオリティが異なることが直感的に分かるだろう。

「信じられない映像の連続。映像制作チームによる素晴らしい作品だ」「4Kテレビで完全な映像を拝んでみたいよ」

視聴者は、こんな賞賛のコメントを残している。解像度の低いパソコンモニターですらこの迫力なのだから、高精細テレビで見たらさぞかし凄いだろう、という期待が込められている。

リオ五輪までに「8Kテレビ」放送もスタート

高精細テレビには、国も注目している。総務省は4Kテレビを2014年のサッカーW杯ブラジル大会までに実用化し、さらにハイビジョンの16倍の解像度を実現する「8Kテレビ」の試験放送を2016年のリオデジャネイロ五輪に合わせてスタートさせる方針を示している。

3月27日にはNHKが制作した8Kスーパーハイビジョンによるショートムービーが、総合テレビで作品の一部が放送された。5月にはカンヌ映画祭に合わせて現地で上映会を開き、映画関係者にお披露目されるそうだ。

高精細動画が新しい映像表現を開拓すれば、それを使ったコンテンツも増え、それを完全な映像で見たい人にハード機器が売れる――。すでに東芝や日立はテレビの国内生産から撤退したが、4Kテレビの好循環が起これば、再び国内での生産が行われるかもしれない、というのは期待しすぎだろうか。

安くて使いやすいテレビの生産は、新興国に移るのが当然だ。しかし新しい技術が、新しい市場を生むことも歴史が証明している。「これ以上に映像の美しさは求められていない」と言う視聴者を圧倒する新商品を日本メーカーが出せることを期待したい。(岡 徳之)