臨床心理学者 植木理恵さん

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好きで好きでしょうがない異性への恋愛アプローチをテレビでもお馴染みの新進気鋭の心理学者に伺った。

■男は選ばれるもの、女は選ぶもの

新しい出会いの場。そこそこ感じのよい異性を前に、それなりに話も弾んでいる。それなのにどうしてもそこから先に発展しない。単なる「いい人」で終わってしまう。そんなパターンを繰り返している人はいませんか。

恋愛に発展するか、それともただの友達で終わってしまうのか、はたまた不倫やワンナイトラブで「さようなら」になってしまうのか、見極めるコツは最初の出会いの瞬間から明らかです。恋愛の場において、男が出すサインと、女が出すサインは明らかに別もの。その差をしっかり理解しておけば、相手が自分のことをどのポジションとして考えているのか、予想することは可能です。

「フィメールチョイス(female choice)」という言葉、どこかで耳にされたことがあるかもしれません。動物界においては、オスが求愛活動をし、メスがそれを選びとるのが自然のあるべき姿。フィメール(メス)がメール(オス)をチョイス(選択)する――その法則に則り自然淘汰は行われてきたのであり、生物としての恋愛はそれが本来の姿なのです。

クジャクを思い浮かべてみてください。美しく長い翼を広げ魅惑的な姿で優雅に歩いているのはメスではなく、オス。メスはそのオスの姿から、自分が育む子の親となるべきはどのオスが最適なのか選択しているのです。その他自然界においては、オスがメスの気を引くために特別なダンスを練習したり、鳴き声をたてたりする方法が限りなくあります。

なかには、こうおっしゃる人もいるかもしれません。人間は動物とは違う。人間は高度に社会化された生物なのだから、もっと複雑な恋愛感情で動いているはず。実際に女は男に選ばれようとして化粧をして着飾っているじゃないか。選んでいるのは女ではなく男のほうだ、と。

しかし、これらは間違った認識です。人間といえども動物の1種。「フィメールチョイス」の本能は私たちの根底にも残っています。肉体だけでなく強い精神的つながりを持つ真実の愛は、男性が求愛のためのアピールをし、女性がそれらを見てチョイスするという構図によって確立されているのです。みなさんも気をつけて周囲を見渡せば、実際にそのような場に遭遇しているはずです。

男は選ばれようとし、女は選ぼうとする。恋愛におけるこの大前提は、むしろ子ども時代を思い返すほうがわかりやすいかもしれません。小学生の頃、男子は気になる女子にアピールしたいあまりに愚かな行動をとったり、意中の女子にちょっかいを出したりしていましたよね。そんな男子は、非常に不器用ではありますが、自らをプレゼンして少しでも女子の気を引こう。選ばれようとしているのです。一方、それに対する女子は、そんな男子たちを冷静な目で観察しています。

「○○くんって馬鹿っぽいよね」「それに比べて△△くんってかっこいいよね」と女子同士で品定めをし、誰を選ぼうかと考えているわけです。「好き」というその気持ちがピュアであればあるほど、男はがむしゃらに口説いていくのではなく、選ばれようと自分を飾り、プレゼンテーションしていくもの。そして女子は、そんな男子に関する情報を収集しようと動きはじめるのです。その意味では大人になってからよりも、小学校時代の恋のほうが、本来あるべき生物の恋愛の形としてはピュアなのかもしれません。

■不倫をするなら、よく喋る女を狙え

このような前提から見ていくと、どのような女性となら、あるいは男性となら真実の愛が構築できるかが見えてきます。例えば過度に露出度の高い服を着たり、男性への身体接触を試みたり、自分の話ばかりをする女性がいるとしましょう。このように女性のほうが積極的になっているのは、本当の恋ではない証拠。露出度の高い服を着るという行為は、自分が選ばれるために複数の男性の前で求愛活動をしているわけですから、本来の「フィメールチョイス」とは逆の方向へ走っているのです。

こういう女性を狙っていた男性はがっかりしたほうがいいですね、特に純愛を求めるのであれば。反対に女性も気をつけたほうがいいでしょう。本命として狙っている男性の前で「男ならみんな胸を強調した服が好きなはずだ」などとマニュアル的に考えてしまうと、男性も無意識に「これは本命にはならない」と感じ、不倫やワンナイトラブで終わってしまう確率は非常に高くなります。

もっとも、女性のファッションからその人の恋愛に対する本気度を測るためには上級テクニックが必要です。女性の場合、どこまでが男性に向けてのアピールで、どこからが同性である女性向けのファッションなのか、男性にはわかりづらいからです。化粧にしろファッションにしろ、女性は男性の想像も及ばないほど細かくグラデーション分けしています。装いに「対女性」性と、「対男性」性があるのです。

例えば、ネイル。美しくデコレーションしたネイルを女性は好んでしますが、まず100%といっていいほど、男性にはそのよさがわかりません。そもそもネイルをしていることにすら気づかないことも多いでしょう。でも女性は男性に向けてネイルをしているわけではないんです。むしろ同性である女性の目を意識して、美しく爪を磨きあげている。これは「女の化粧は男の気を引くためだ」と思っている男性には不思議にしか思えないかもしれません。しかし女性には、同性コミュニティに入れてもらうためのファッションというものが厳然と存在しているのです。

会社や、趣味サークル、友人関係……女性社会の輪に入れてもらうためのアピールをする必要が女性にはあり、その象徴ともいえるのがネイルなのです。その意図は、「男ばかりにモテたいわけではない」「女子の友達も欲しい」、これに尽きます。

一言でいえば「女に嫌われる女」というのは、同性である女性に好かれようとしない女性です。男性からの評価さえよければそれでいいということ。そのような意図を汲むと、女性は一気にその女性のことが嫌いになるんです。女性は結果そのものよりも、その裏に潜む意図に非常に敏感です。相手が本当は何を考えているか、推測力が高くて、その能力たるや男性の何倍ともいわれています。

例えば男性が求愛活動の一環として、「俺ってこんなにすごいんだぜ」と実際をはるかに上回る自己アピールをする場合、女性はその背伸びの部分をきちんと察しています。しかし、必ずしもそれがマイナスになるとは限らないのは、結果よりもその背景の意図に敏感な女性の特質が作用しているから。相手が自分の歓心を買おうと求愛アピールをしている分には、「可愛いな」「頑張っているな」と思ってくれるのです。

むしろ問題なのは、求愛活動をしてくれない男性の存在です。女性は話を聞いてもらいたがる存在だから黙って話を聞いてあげるべきだ、と勘違いしている男性が多い。付き合いが始まってからはそれでいいかもしれません。付き合いも長くなれば女性は延々と自分の話を語り始めますから。ただ、これから恋愛がスタートするかしないかという初期段階では、これは大きな間違いです。よく喋る女性は、不倫相手としては最適でしょう。フィメールチョイス理論に従えば、よく喋るという行為は、露出度の高い服を着るのと同様、女性から男性への求愛活動です。これまでの人生で常識的な恋愛の経験がない可能性があり、刹那的な関係を築くことは比較的にたやすいはずです。

一般的な女性が本気で恋愛をしようと思ったら、まず情報収集に動き始めます。男性を質問攻めにする。どこに住んでいるのか、何の仕事をしているのか、何が趣味なのか、休日は何をしているのか。興味のない男性に関しては、女性は全く質問をしません。

仮に女性が自分を頼って相談事をしてきても、「彼女はこれだけ自分に話してくれているんだから、自分に気があるに違いない」とは間違っても思わないこと。女性が自分をほとんど女友達と同じように見なしていると思ったほうがいいです。これではせいぜい便利な「お友達」どまり。恋愛関係には発展しません。あるとき積極的にアプローチしてくる別の男が現れたら、彼女はとたんに「今まで相談に乗ってくれてありがとう。おかげで新しい彼氏ができたから」とあなたのもとを去ってしまうでしょう。

反対に男性から「どこ出身なの?」「休日は何をしているの」と女性を質問攻めにするのもNGです。これでは女性が男性の立場を演じてしまうことになり、女性も魅力を感じません。

■「僕は死にましぇ〜ん」で、女は落ちる!

さて、本気の恋愛を始めたい人に対してのアドバイスを整理しましょう。

まず、男性ならば、なにはともあれ相手の女性に「この人を知りたい」と思わせること。自分から女性に対する質問はほどほどに抑え、反対に相手からの質問を誘導すること。質問がきたら、ためらわずに自己開示していくこと。相手に気を使うあまり、女性に自分を語らせてはいけません。

そして女性の場合は、自分史を語ったり相談事を持ちかけるのではなく、相手を質問攻めにして男性に自己開示を迫っていくこと。恥ずかしがってなかなか相手に質問をしない女性もいるようですが、選ぶためにはまず情報収集から始めるべきですし、結果としては男性にもそれが自分に気があるかもしれないというサインになるのですから。

男性は自分のいい面を見せたいばかりに、失敗回避の傾向が強い。こういう年収があって、こういう仕事をしていて、こんな勉強をしているんだと、カッコいい面ばかりを見せたくなってしまう。

しかし女性にしてみれば、カッコ悪い面が見えても、どんどん接してくれるほうが、恋愛感情を持ちやすい。それがトレンディドラマの口説き文句(たとえそれが「僕は死にましぇ〜ん」でもいいぐらいです)になったとしても実行すべきです。

というのも、そもそも求愛ダンスをしてくれないオスに対しては、メスはチョイスしようがないからです。「フィメールチョイス」とは、オスは選ばれ、メスは選ぶというもの。ですが、結局メスは限られた中からチョイスするしかないんです。そもそもオスが選ばれようと求愛ダンスを踊ってくれなければ、選ぶことすらできない。

その意味では、男性が女性を選んでいるという側面もあります。誰の前で求愛ダンスを踊るのか、その選択権はあくまで男性側にあり、女性は自分の前でアピールしてくれる男性の中からしか選べないのですから。

では、女性が主体的に恋愛を生み出すことはできないのか。それはやり方次第というところでしょう。女性が積極的にできることは、男性が求愛ダンスをしたくなるような舞台を整えることです。男性は褒められると勝手に動き始めるという習性があります。女性の場合、会社において、自ら主張をせず、衝突を和らげるタイプの人がいますが、彼女たちは意識してか無意識か、この「フィメールチョイス」をうまく利用しているんです。つまり、男が選ばれようと自己アピールダンスをしやすい環境を上手につくりあげている。

実際に細かい実務をするのは男でも、せめてそれを気持ちよくできるような環境づくりをさりげなくできる女性が、会社においても恋愛においても最終的に勝つのです。逆に突進系の女性はどこかでつまずいてしまうでしょう。

選ばれようとする男は愛され、選ぼうとする女は正しい解を見つける。これが「フィメールチョイス」理論から導き出される純愛の法則なのです。

(臨床心理学者 植木理恵 構成=三浦愛美 撮影=奥谷 仁 写真=PIXTA)