『グランド・マスター』 (c) 2013 Block 2 Pictures Inc. All rights Reserved
タランティーノも絶賛した『恋する惑星』で世界的な知名度を獲得し、『ブエノスアイレス』ではカンヌ国際映画祭・監督賞を受賞、ハリウッド進出作『マイ・ブルーベリー・ナイツ』をヒットさせた後も、独特の語り口と、圧倒的な映像美で映画界に君臨し続けてきた監督、それがウォン・カーウァイだ。

そんな巨匠が、構想を含め17年もの年月をかけ、一切の妥協を排して創り上げた最新作『グランド・マスター』の本予告編がこのほど解禁された。



本作の舞台は、諸外国の侵攻にさらされ、激動を迎えた20世紀初頭の中国。時代の流れにあらがう、最高の武術の達人(グランド・マスター)たちの愛と宿命の闘いを、監督の得意とする浮遊感を持つ映像と、『マトリックス』のアクション監督であるユエン・ウーピンの武術指導による、華麗なアクションで描く。

公開された予告では、これまでの映像になかった場面も解禁されている。主人公であり、ブルース・リーの師として有名な詠春拳の達人・葉問(イップ・マン)がトレーニングを行うシーンでは、『酔拳』などあらゆるカンフー映画で幾度となく登場した「木人椿」も登場。その動きから、4年間かけて詠春拳を習得し、葉問を演じたトニー・レオンの訓練の成果がうかがい知れる。撮影前からカンフーの修行を始めていたトニーは、撮影中にも2度骨折、さらに雨中の戦闘シーンでは、あまりの寒さのため、気管支炎で入院したという。

数々のアクション映画で華麗なカンフーを見せたチャン・ツィイーの、キレをました動きもさることながら、特に圧巻なのが、八極拳の使い手を演じたチャン・チェンのアクションだろう。『レッド・クリフ』シリーズで孫権を演じ、演技派として世界的にも認められた彼だが、カンフー修行の末、昨年は中国の八極拳全国大会で優勝というするという快挙も達成。本物のグランド・マスターとして、CGなしの殺陣を違和感なく見せている。

今回の映像では、日中戦争によって家族や財産を失う人々の苦悩も描かれている。葉問たちは名誉のためではなく、武術家として生き残るために技と心を磨き、闘う。彼らの過酷な運命を象徴するかのような、ツィイーの涙が意味するものとは何なのか。

この冷たくも美しい映像は、フランス人撮影監督、フィリップ・ル・スールによるもの。彼は『アメリ』ジャン・ポール・ジュネ監督の出世作『ロスト・チルドレン』『デリカテッセン』のアシスタント撮影を経て、『プロヴァンスの贈り物』撮影監督を務めた実力派だ。カーウァイ監督組として常連の、クリストファー・ドイルが撮影する“優しく美しい”映像とは違う、“厳しく冷たい”映像は、今回の作風にぴったりと言えるだろう。そのアクションと映像の組み合わせは、これまでのカンフー映画史上“最も美しく、哀しい”闘いと言っても過言ではない。

カーウァイ監督のあまりの“こだわり”のため、一時は完成も危ぶまれた本作が、日本のスクリーンに登場するまで、あとわずかだ。

グランド・マスター』は、5月31日(金)よりTOHOシネマズ日劇ほかにて全国ロードショー

『グランド・マスター』 - 公式サイト

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