シニア層に人気な犬種トップ10(※60〜64歳を対象にコジマが11年調査)

写真拡大

■裏切らない友:ペットなしでは生きていけないシニア

街を歩くと、シニアが犬と散歩をしている姿をよく見かける。

大手ペットショップ、コジマの小島章義会長は、「生体(ペット)販売頭数から推測すると、ペットの数は確実に増加している」と見る。同社の生体販売頭数のうち8割以上が犬。顧客年齢別では50代が約14%、60代以上が約9%を占める。この構成比の変動は少なく、シニアの飼い主も、ペットに比例して増えていると考えられる。

ユニ・チャームの稲葉洋恵・ペットケアカンパニーフード事業部長兼制作部長も、「50代、60代はペット飼育率が高い。子育てが終わって時間やお金があるので、子供や孫の代わりに世話をするのだろう。団塊世代は人口が多いため、ペットの数も増えているのではないか」と分析する。

シニアに人気があるのは小型犬。かわいいうえに室内で飼え、散歩などでも手間がかからない。「ペットフードの量も少なくてすむが、シニアはペットの健康にも気を使うのでプレミアム商品をよく買う傾向にある」(稲葉氏)。

コジマは生体販売、ペット用品販売に加え、小型犬向けにニーズの高いトリミング(毛のカット)、ペット医療などの付帯サービスにも力を入れている。

「ゆりかごから墓場までの付き合いで、飼い主とペットを固定客にする」(小島会長)作戦だ。こうしたサービスについても、シニアは来店頻度が高く、客層として有望だという。

「ペットはリタイア後の心のオアシスになる。子供夫婦などと一緒に世話ができるなら、ぜひ飼うべきだ」と、小島会長はいう。シニアの「裏切らない友」として、今後の市場の伸びも期待できそうである。

■あの日に帰れます:若々しさをキープ! サプリメントが大人気

サプリメントや機能性食品といった健康美容食品は市場規模が約1兆7800億円(12年予測・富士経済調べ)あり、シニアのニーズが高い代表的な商品だ。とくに今のシニアは「自分の健康は自分で守る」「若々しくいたい」という意識が高く、彼らをターゲットにした“あの日に帰れます”商法は活況を呈している。

ファンケルは、40代までの客層をコアターゲットとしてきたが、ここへきて50代以上重視に大きく舵を切った。「既存顧客のニーズが高齢化につれて変わってきた。それに、新しいシニア顧客を獲得していかなければ、成長戦略を描けない」と同社の鶴崎亨・取締役事業・商品戦略本部長は説明する。同社の推計によると、サプリメントの年齢別売り上げ構成比は現在、60代以上だけで約45%を占めるという。シニア市場は深掘りする余地がまだ大きいと見ているわけだ。

まず化粧品部門では、今年3月から初のシニア向け化粧品「BCライン」シリーズを投入した。加齢によってシミ、シワ、タルミなどが同時に現れる肌の「複合トラブル」に対して、集中ケアができる高機能商品群を構成している。

大きく変わるのは健康食品部門。これまで美容・ダイエット関連商品を主力としてきたが、ラインアップを刷新、シニア向け商品を拡充する。「グッドエイジングを旗印に、低下した身体機能を高める商品や老化を抑える商品、健康バランスを整える商品を揃えていく」(鶴崎氏)。現在、関節強化や免疫力回復、アンチエイジングなどのサプリメントがシニアに人気だという。

■ちょっとそこまでニーズ:Kカー利用者の5%が超小型車に期待

みなさんは「超小型車」をご存じだろうか。オートバイよりも大きく、軽自動車よりも小さい1〜2人乗り自動車のことだ。まだ開発途上だが、シニアの「ちょっとそこまでニーズ」を満たす新しい足としても期待され、官民挙げての普及活動が始まっている。

超小型車の開発をリードする自動車メーカーの1つがトヨタ車体。すでに00年、公道を走れる超小型電気自動車「コムス」(道路運送車両法上は「第一種原動機付自転車四輪」)を世に送り出している。今年7月から新型を全国で発売、販売目標は年3000台だ。「これまで主に業務用で使われていたが、一般ユーザーを増やすため、乗り心地や安全性を改善した」と同社の大橋宏専務取締役は話す。

コムスは1人乗りで、全長2.4メートル前後、全幅1メートル前後しかない。それだけに小回りがきき、狭い路地でも通れる。最高速度は時速60キロメートルで、最大積載量は30キログラム。希望小売価格は一般用タイプで79万8000円。国の補助金が満額使えれば、実質72万8000円で購入できる。車検、車庫証明、重量税、取得税も不要だ。フル充電で約50キロメートルの走行が可能である。

「シニアが多い軽自動車ユーザー140万人を調査したところ、超小型車を希望した人が5%いた。シニアにとって軽自動車は大きすぎるし、経費もかかる。身体能力が低下したシニアでも、コムスは運転しやすい。近くにちょっと買い物に行ったりする場合には、コムスが適している。過疎化などで交通が不便になった地方では、活躍の機会が多いだろう」と大橋氏はいう。

■買い物難民:今やコンビニはシニアのライフライン

コンビニエンスストアが、「シニアの身近なライフライン」として、新たな役割を果たすようになっている。最大手のセブン−イレブン・ジャパンによると、来店客の年齢別構成比で、60歳以上は05年に11%だったのが、11年には18%にまで上昇。「市場構造の変化に伴って、シニアにも対応した品揃え、サービスを強化してきた。それが支持された結果」と同社の石橋誠一郎・執行役員商品本部FF・デイリー部長は分析する。

シニア対応の品揃えでは惣菜が柱。高品質PB「セブンプレミアム」をはじめ、2500アイテム以上を揃えるが、とりわけ、サトイモの煮物、サバの味噌煮、押し寿司といった和惣菜は、60歳以上の購入率が断然高い。「シニアは単身世帯が多い。惣菜は少量から買え、手間がいらない。日持ちのする和惣菜なら、毎日買い物に来なくてもすむ」(石橋氏)からだ。

一方、コンビニから弁当や惣菜を宅配するサービス「セブンミール」も拡充、全国約1万店で実施している。都市部でも小売店が減っていて、「買い物難民」となるシニアが増えているためである。今年5月から500円以上購入で手数料無料にしたところ、利用実数は3倍になった。無店舗エリアでは、移動販売サービス「セブンあんしんお届け便」にも乗り出している。

「大規模マンション、大型医療施設など出店候補地はまだ多い。シニアの増加で、近くて便利なコンビニの必要性はかえって高まっている」(石橋氏)と、同社の鼻息は依然荒い。

■遠隔ボディーガード:2.5倍の伸びを示すシニア向けHS

「ホームセキュリティサービス(HS)で、警備業はこれから大きく伸びる」と綜合警備保障の百武尚樹・ホームマーケット営業室長はいい切る。HSは情報システムと警備網によって家庭を見守り、災害や犯罪被害を防ぐ、いわば“遠隔ボディーガード”だ。

同社の2012年度のHS契約件数は、前期比約28%増の3万7000件を計画。とりわけ、「高齢化社会の到来で、シニア向けのHSは成長性が高い」と百武氏は見る。高齢者が災害、犯罪などのリスクに弱いことはいうまでもない。しかも、65歳以上の人の約半数が単身世帯だ。

そこで同社は、シニア向けHSの新サービス「シルバーパック」を10年10月からスタート。特徴は基本サービス(月額3706円)を、高齢者のニーズが高い救急・火災対応に絞った点だ。「防犯という警備会社のイメージを払拭し、手ごろな料金設定にしたかった」(百武氏)。目論見は当たり、11年4〜5月の加入件数は前年同期と比べて2.5倍に達したという。

シルバーパックには、離れて暮らす近親者に、高齢者の生活ぶりを毎日伝える「見守り情報配信サービス」も付加できる。高齢者を抱える家族にとっても安心なサービスだ。ただし、シルバーパックの契約者の過半数は高齢者自身で、なかには60代の団塊世代もいる。「自分の身は自分で守る」というアクティブシニアの姿も垣間見える。

■確固たる価値観を持ちターゲティングが要に

シニア市場が経済界から熱い視線を浴びている。第一生命経済研究所の調査では、60歳以上の人の消費総額は現在100兆円、国内消費全体の44%を占める。そして、そのシニア市場には1000万人に上る「団塊世代」が存在する。終戦直後、1947〜49年生まれのベビーブーマーである彼らは、今年から順次、年金受給が始まり、リタイア生活に本格突入する。

しかし、電通総研の斉藤徹研究主幹は「団塊世代といっても、ライフスタイルは多様だ。若いときと違って、ライフステージが進むにつれて、資産状況も健康状態も個人差が大きくなる。しかも、豊富な人生経験のなかで確固とした価値観が形成されるから、ブームに流されにくく、自分で納得したモノ、サービスしか選ばない」という。

団塊世代攻略のポイントはターゲット・マーケティング。12年の経済財政白書によれば60歳以上の人は、医療・健康関連や旅行、葬祭関連などの交際費、住宅リフォームなどへの支出が多い傾向がはっきり表れている。

「サプリメントでも、価格は高いが効果も高い商品を、所得の多い団塊世代に売り込む、といった戦略が求められる」と斉藤氏は指摘。鉱脈を掘り当てれば、一攫千金も夢ではない「宝の山」ともいえるのがシニア市場だ。

(野澤正樹、岡村繁雄=文)