Dsc_0175
3月29日に開幕した今年のプロ野球公式戦。この週末の三カード目で各球団とも先発ローテーション投手が一通り先発し、二回り目に入った。これで各球団とも当面戦うメンバーが一軍登録されたことになるが、この間、せっかく開幕一軍登録されたのにほとんど一軍で出場しないままに登録抹消される選手が今年も何人かいた。

出場選手登録のルールを有効活用しようと試みた結果なのだろうが、開幕一軍入りを果たした選手とそのファンにとっては残念な実態だ。

(写真:開幕一軍入りを果たしたものの右手中指腱鞘炎のため、一度も登板せずに開幕三日目の3月31日に登録抹消されたカープの永川勝浩。 2012年4月撮影)

まずは3月27日に公示された開幕一軍出場選手登録を確認していただこう。

2013年開幕時出場選手登録

お気づきだろうが、各球団、開幕先発ローテーション投手に予定している6人の先発投手をすべて入れているわけではない。登録人数もまちまちだ(28人=ジャイアンツ、ドラゴンズ、カープ、マリーンズ、バファローズ。27人=スワローズ、タイガース、ファイターズ、ライオンズ、ホークス、ゴールデンイーグルス。26人=ベイスターズ)。ここで拙blogをお読みいただく方には釈迦に説法だろうが一軍登録のシステムを説明しておく。

一軍に登録できる選手は28人。これは上限で、28人を超えることは出来ない。開幕一軍登録は開幕戦の二日前に公示される。開幕戦当日に選手の登録を抹消することは可能だが、別の選手の登録が出来るのは翌日から。一度抹消された選手は十日間再登録出来ない。

試合に出場できるのは出場選手登録(一軍登録のこと)の中から25人。試合ごとに28人の中から25人を選び、メンバー交換の際に提出する。ベンチ入りできない出場選手登録が3人いることになるが、普通はその日に先発しない先発ローテーション投手がベンチから外れる。

シーズン中、六連戦に対応して先発ローテーション投手を六人で回すチームはその日の先発投手以外の五人のローテーション投手の中から三人をベンチから外し、後の二人はベンチ入りしても延長戦で投手がいなくなるなど不測の事態に備える程度で、ベンチ登録はされていても登板の準備をしないことも多い。球団によってはベンチ入りの人数を減らしてでも、先発以外のローテーション投手を全員ベンチから外すケースもある。両リーグとも予告先発制度となり、いわゆる偵察要員も必要なくなり、ベンチに入れる意味がないと考えるようだ。

これを開幕一軍に当てはめると、開幕戦に先発する投手は当然開幕一軍登録に入れるものの、第二戦以降に先発する投手は極論すればその都度登録すればいい。予告先発であっても、予告先発の時点(試合前日)には登録されていなくても登板日に登録すれば間に合う。通常は開幕戦と第二戦、第三戦の先発投手くらいまでは開幕一軍登録するのがほとんどだ。2010年にゴールデンイーグルスのマーティ・ブラウン監督が開幕一軍登録で先発タイプの投手を岩隈久志しか登録しなかった。相手のバファローズ岡田彰布監督は「岩隈の先発は誰でも想像できるけど、万が一があったら誰が先発するの?」と笑ったものだ。

この論理でいくと、開幕して四戦目に一軍選手登録が28人いっぱいになる。五人目、六人目の先発投手が先発する際は他の選手を抹消して入れ替えるのである。ということは開幕一軍登録された選手の中に何人かは先発ローテーション投手が一通り登録される間に二軍落ちしてしまう選手がいるということである。

当エントリーで注目するのはそうした選手。選手本人はわずかなチャンスでアピールして生き残りを賭けるが、その選手のファンは一つ間違えれば開幕一軍入りを果たしたと喜んでもぬか喜びになる。

そこで下記に、各球団において、先発ローテーション投手が一通り登録されるまでの間に登録抹消された選手を列記する。開幕投手がアクシデントで翌日に登録抹消となったファイターズとマリーンズに関してはそれに代わる投手が登録されるまでを追った。故障で抹消になった選手を載せる意味はないかと思ったが、一応含めた。

【ジャイアンツ】
橋本到(4/3抹消) 1試合1打数0安打
マニー・アコスタ(4/4抹消) 1試合1回自責点0 右肩筋損傷

【ドラゴンズ】
高橋周平(4/1抹消) 1試合1打数0安打
高橋聡文(4/3抹消) 1試合1回自責点0 左肩痛

【スワローズ】
谷内亮太(4/1抹消) 出場無し
松井淳(4/4抹消) 1試合3打数1安打、1盗塁刺

【カープ】
永川勝浩(3/31抹消) 出場無し 右手中指腱鞘炎
鈴木将光(4/3抹消) 3試合3打数0安打

【タイガース】
伊藤隼太(4/3抹消) 1試合1打席1四球
川崎雄介(4/4抹消) 出場無し

【ベイスターズ】
鄭凱文(3/31登録4/1抹消) 先発1 1敗 2回自責点4
筒香嘉智(4/1抹消) 3試合9打数0安打、3三振

【ファイターズ】
武田勝(3/30抹消) 開幕投手 3回1/3自責点2、左ふくらはぎ筋挫傷
ダスティン・モルケン(4/4抹消) 2試合 1回2/3自責点2
久森淳志(4/5抹消) 3試合5打数0安打1三振

【ライオンズ】
上本達之(4/3抹消) 1試合1打数0安打 左目打撲
小石博孝(4/4抹消) 1試合0/3回 打者1、被安打1
大崎雄太朗(4/4抹消) 1試合1打数0安打

【ホークス】
中村晃(4/1抹消) 2試合1打数0安打1得点 右手小指剥離骨折
山本省吾(4/4抹消) 2試合 1回2/3自責点2

【ゴールデンイーグルス】
仲澤広基(3/31抹消) 出場無し
島内宏明(4/3抹消) 2試合2打数0安打1得点

【マリーンズ】
成瀬善久(3/30抹消) 開幕投手 5回1/3自責点1 右すね打撲
神戸拓光(3/30抹消)  出場無し
香月良仁(3/31抹消) 1試合 1/3回自責点1
ディッキー・ゴンザレス(3/31登録、4/2抹消) 1試合5回自責点4 風と寒さのため!?
服部泰卓(4/4抹消) 2試合 1回1/3自責点0
大松尚逸(4/5抹消)  4試合3打数0安打1三振

【バファローズ】
吉野誠(3/30抹消) 1試合 0/3回 被安打1、与四球1、自責点0
比嘉幹貴(3/31抹消) 2試合0勝1敗 1/3回自責点2
古川秀一(4/3抹消) 2試合 2回1/3自責点1
野中信吾(4/3抹消) 3試合1打数0安打
横山徹也(4/4抹消) 出場無し

十二球団合計で328人が開幕一軍登録され、6人が一度も出場しないうちに登録抹消となった。故障のカープ永川勝浩を別にすれば、失礼ながら一軍での実績に乏しい選手が多く、言葉は悪いが員数合わせで一軍に登録されたのではないかと邪推したくなる。

例えばゴールデンイーグルスで開幕一軍入りを果たした仲澤広基は一軍入り自体がジャイアンツ時代の2010年以来。この時は9月25日から10月10日まで一軍に登録されていたが、公式戦出場無しだった。
Acsc_0078
(写真:ジャイアンツ時代の2010年9月に一軍入りした仲澤。試合での出番はなく、イニング間のキャッチボールに登場)今回はそれ以来の一軍入りだったが、またも一軍での出場はなかった。

一方で開幕からの短い期間で監督やコーチ(そしてもちろんファンも)の心証を悪くするようなプレーで懲罰的に二軍に落ちた選手が少なくない。誰かを新たに登録するには誰かを抹消しなければならない。目立ってマイナスなことをしてしまった選手だ。

ベイスターズの筒香嘉智は開幕戦と二戦目は「六番・三塁」でスタメン出場。
Cdsc_0140
ともに4打数0安打に終わると三戦目にはスタメンを外れ、代打で途中出場して三振に倒れると、二軍落ちとなった。

バファローズはQVCマリンフィールドでの開幕カードに二試合続けて延長戦でサヨナラ負けしたが、開幕戦で1点リードの十二回裏にマウンドに上がった比嘉幹貴は先頭のサブローに安打を打たれ、バントで送られた後、金沢岳に四球を与えたところで降板。代わったサウスポーの吉野誠が左対左になる岡田幸文に内野安打を打たれ一死満塁。やはり左対左の根元俊一に押し出しの四球を与えて降板。この後同じサウスポーの中山慎也が登板してやはり左対左の角中勝也にセンターに犠飛を打たれてサヨナラ負けとなった。森脇浩司監督は吉野を翌日に登録抹消した。

比嘉は翌日も登板。同点で迎えた十二回裏、松本幸大が一死一、二塁で打席に右の代打細谷圭が告げられたところで比嘉登板。比嘉は代打の代打大松尚逸に死球を与え、福浦和也を迎えて降板。古川秀一が福浦にサヨナラ犠飛を打たれて連敗。翌日、森脇監督は比嘉の登録を抹消。福浦にサヨナラ犠飛を打たれた古川は3日後の4月2日の対ゴールデンイーグルス戦で三番手で2回自責点1の投球で、翌日には登録抹消された。

カープの鈴木将光は侍ジャパンの強化試合に出場し、内海哲也から本塁打を放ってアピール。オープン戦で頭角を現し開幕一軍をものにした。開幕カードのジャイアンツ戦では内海先発の第三戦に「五番・左翼」でスタメン出場を果たすもその内海に対し二打席連続三振を喫すると第三打席には代打を送られた。
Cdsc_0072

また、ジャイアンツの先発ローテーションに関しては以前、WBC日本代表に選出された内海、澤村拓一、杉内俊哉に関してはその疲労を想定して開幕カードから外して開幕二カード目に回し、宮國椋丞、デニス・ホールトン、菅野智之を開幕カードに先発させると目されていた。ところが実際は宮國、菅野、内海の順に開幕カードに先発し、次いで杉内、澤村と先発して六戦目にホールトンが先発した。これはホールトンの優先順位が下がったのかもしれないが、外国人選手であるホールトンの先発日を後にすることで、スコット・マシソン、マニー・アコスタ、ホセ・ロペス、ジョン・ボウカーの四選手を開幕登録させて外国人枠を有効に使うことが出来るというのもあったかもしれない。

同様にベイスターズで開幕第三戦の先発に合わせて登録された鄭凱文は2回4失点で敗戦投手になってその結果で翌日に二軍落ちしたようにも思えるが、次のジャイアンツ戦の先発をエンジェルベルト・ソトと予定していたため、ソトを一軍登録する前に同じ外国人登録の鄭凱文を登録させて先発させ、登板後にソトと入れ替える既定路線だったとも推測できる。ベイスターズで開幕一軍に登録された外国人選手はホルヘ・ソーサ、トニ・ブランコ、ナイジェル・モーガンの三選手(アレックス・ラミレスは日本人扱い)。ソーサはリリーバーなので開幕戦から使いたいし、野手の二人は当然外せない。ソトは一度登板したらそのまま先発ローテーション固定が想定される。鄭凱文を一軍で投げさせるタイミングは限られていたのだ。

チャンスを与えられて、あいにくにも悪い結果が出た方がまだ諦めが付くかもしれないが、いずれにしても贔屓の若手選手、注目選手がめでたく開幕一軍入りを果たしたとしても、開幕登録選手数が何人か?予想される先発ローテーション投手が何人登録されているか?などを冷静に考えて、その贔屓選手、注目選手の位置づけを頭に入れておけばぬか喜びにならないで済むかもしれない。もちろん、今も引き続き一軍に残っている選手の中に本来は員数合わせであったのに予想外に結果を残して一軍にとどまっている選手もいるだろう。要するに結果を出したものが勝ちなのだが…。

もちろん公式戦は長い。早々と二軍落ちした選手も捲土重来を期してファンを今度こそ喜ばせて欲しいものだ。