4月8日の週から、米国企業の2013年1-3月期決算の発表が本格的に始まる。最近の米株式市場は、NYダウが最高値を更新し続けていることからもわかるように、絶好調だ。その勢いが持続するかどうか、市場の主要企業の決算への期待度は高まっている。NYダウ採用銘柄ではないが、米・アップルに対する注目度も依然として高い。

 今年1月23日に発表した12年10-12月期決算で失望売りを誘い、株価は急落したものの、株式の時価総額は約4360億ドル(41兆4200億円)と首位のエクソンモービルとは、僅差の世界2位をキープしている。部材や部品などを提供している企業が多いため、業績動向の与える影響は大きい。

 米・アップルの決算が注目されている理由は、もう1つある。決算と同時に、配当金の引き上げ(増配)を発表すると予想されているからだ。現在、アップル株の配当金は1株当たり2ドル65セント。それが、アナリストの予想平均によると、約50%引き上げられ、4ドル強になるとされている。

 アップルの株価は現在431.99ドル。4ドルというと、すごく少ないように聞こえるが、これは四半期の配当金なので、年間では16ドルになる計算だ。年間配当利回りは3.7%に上り、米企業の平均を大きく上回る高配当株の水準になる。

 実は、アップルが配当を実施するようになったのは昨年からで、約17年ぶりのこと。それが、1年も経たずに増配をすると予想されているのは、保有する現預金が巨額に膨らんでいるからだ。2012年末で何と1371億ドル(13兆円強)に上っている。今の年間配当金は1株あたり10ドル強で、アップルがすべての株主に支払う年間総配当額は約100億ドルになる。

 一方、米会計年度による2012年度の純利益は約410億ドルで、営業キャッシュフローは500億ドル以上にのぼる。12年10-12月期の四半期の純利益だけでも、前年比で横ばいながら約130億ドルあるのだ。四半期2ドル65セントの配当を続けていると、現預金は増えこそすれ、減ることはない。

■増配に踏み切る可能性は

 これまでのアップルなら、稼いだ利益で積極的な研究開発を行ない、革新的な製品を産み出すことができただろう。しかし、それが可能だったのは、故スティーブ・ジョブズ氏がCEO(最高経営責任者)だった時代。稼ぎ頭の『iPhone』や『iPad』などのタブレット端末が、サムソンなどのライバル企業に脅かされているにも関わらず、目立った新製品が投入されず、現預金が膨らみ続ける現状では、株主たちの会社への増配要求は高まり、応えざるをえなくなる。

 これは、株主還元を巡る、企業と株主の極めてオーソドックスな展開だ。次回の決算で、アップルが増配に踏み切るという予想が強まっている背景である。現CEOのティム・クックを筆頭に、経営陣が増配に踏み切りたくないという心情も察することはできる。現段階で増配することは、アップル株が「グロース株」(成長株)であることを完全に止めることに等しいからである。

 研究開発費をつぎ込める新規の案件が無い、つまり、革新的な製品を産み出せない、という会社側の宣言に近い。しかし、アップルのように、売上高から純利益に至るまで驚異的な伸びを見せてきた企業が、伸び率の鈍化にしたがって、単なる優良株になっていくことは、株式市場ではよくある光景だ。実際、アップル株は昨年9月の最高値705.07ドルから、すでに40%近くも下落している。株式市場はとっくの昔に、「グロース」株ではなく「バリュー」株(優良割安株)になったと見ているのだ。

■アップル株は割安か?

 アップル株をバリュー株として考えれば、これ以上、他に魅力的な株はないだろう。米国内のアナリストたちは、「現状の株価水準なら買える」という意見が大勢のようだ。グロース株からバリュー株に移行する時には、売り込まれて、予想以上に割安となることがあるが、アップル株はまさにその最中だとみられる。

 前述のように、増配が実施され、1株当たり年間16ドル程度もらえるなら、株主になるメリットは大いにある。アベノミクスで中長期的に円安傾向が続くなら、日本人株主にとっては実質的な配当利回りはアップし、非常に効率的な投資となるだろう。アップルの13年1-3月期決算の発表は4月24日。証券会社に口座がない人でも、今から口座開設を申込めば、決算発表前に同社株を買えるはず。

 決算の席上、もし、増配の発表がなければ株価の下落は避けられないと思われるので、要注意。ただその場合、噂の「iTV」や「iWatch」といった新しいデバイスの発表があるのかも……いずれにしても興味は尽きない、といえようか。

※株価やデータは4月3日時点。また、1ドル=95円で換算。

(文/松岡賢治)

 

マネーライター、ファイナンシャルプランナー/シンクタンク、証券会社のリサーチ部門(債券)を経て、96年に独立。最新刊に『人生を楽しむマネー術』(共編著)。