【インタビュー】ファッションで世界と戦うには – クリエイティブディレクター 源馬大輔  (第1回/全2回)

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 取材・文: 編集部  写真: 三宅英正  英語翻訳: クレイトン・ロング

 

いまをときめくファッションブランド sacai (サカイ) のクリエイティブ・ディレクションをはじめ、香港の高級百貨店 Lane Crawford (レーン・クロフォード)のバイイングなど、世界的に注目を受ける国内外のブランド・ショップの仕事を手がける源馬大輔氏。仕事の幅は広く、コンサルティングからマーケティング、商品開発、そして内装ディレクションまで及ぶ。20 代前半よりロンドンのハイエンドなセレクトショップ BROWNS (ブラウンズ) でキャリアを積み、 2002 年の帰国以降は、中目黒のセレクトショップ Family (ファミリー) の立ち上げや、アタッシュ・ド・プレスの Pred.P.R. (プレッドピーアール) を設立させた。ドメスティックとインターナショナルの両方の視点を持つ源馬氏に、グローバルで成功するためのヒントを探った。

 

 (第2回/全2回) 【インタビュー】ファッションで世界と戦うには – クリエイティブディレクター 源馬大輔

 

- 最初に源馬さんのバックグラウンドと、いまやられている仕事について教えてください。1996年に渡英されたとのことですが。

当時、目指していたことはあったのですが、うまくいかなくて、父親に「どっか行ってくれば?」と言われたのがキッカケでロンドンに行きました。はじめは半年間くらいで帰る予定だったので、みんなのようにセントマーチンに行って勉強したいという感じではありませんでしたけど。なので、とくに働くつもりもなかったです。たまたまそのころ、BROWNS (ブラウンズ) によく買い物に行っていたのですが、当時 BROWNS のメンズのバイヤーをやっていた Bernie Thomas (バーニー・トーマス) と仲良くなりました。当時の僕の英語は本当につたなかったのですが、「働けば?」と言ってくれて、働くようになりました。22 歳になる年に、いきなり「バイイング行ってこいよ」と言われて、Bernie と一緒に買い付けに行くようになりました。英国では年齢はあまり関係ないのでしょうね。気付いたら 6 年も経っていました。いまでも彼とは仲良く一緒に仕事をしています。ロンドンでいろんなことを体験できたことは本当に良かったです。

当時、さまざまな文化に触れられたし、友達がいろいろな人を紹介してくれました。例えば、パブで普通に飲んでいて紹介されたのが Chris Cunningham (クリス・ カニンガム) 。「こんな所に Chris Cunningham が普通にいるのかよ!すごいなロンドン...」と思いました (笑) 。あと、普通にいつもパブで一緒に飲んでいた人が Tate Modern (テート・モダン) のロゴなどをデザインしている人で、 Tate Modern のオープニングに連れて行ってもらうと、そこに Damien Hirst (ダミアン・ハースト) がいたりもしました。当時の英国は景気もよく、アート、音楽、ファッションの分野でさまざまなことが起きている時代でした。Damien Hirst が出てきたり、White Cube (ホワイト・キューブ) というギャラリーができたり。「あのクラブがたのしかったよね」というのもあるのですが、なによりそういうおもしろい人たちに出会えたというのが一番大きかったですね。自分のそれまでの常識を覆す人たちがロンドンにはたくさんいて、僕の見解の狭さが分かったときはすごくショックでした。しかし、もっと自由にいろいろとやって良いのだと思えたのが、ロンドンで得た一番大きな収穫ですね。BROWNS では 6 年間働いたのですが、そこでそろそろ次のステップを考えていた頃に、日本の企業から「日本でお店をやってみない?」とお誘いいただきました。僕自身、日本でまだなにもやったことがなかったので、日本でやりたいという気持ちがあり、日本に帰ってきたという感じです。帰国後は自分のお店 Family をオープンさせ、Pred.P.R. を設立しました。そして 2007 年にいまの個人の会社「源馬大輔事務所」をスタートさせて、基本的にはコンサルティング業中心にファッションに関わる全てのことをやっています。クライアントには香港の Lane Crawford や JOYCE (ジョイス) などの小売店もあれば、日本のブランドの sacai もあります。あと最近はアジアからお話をいただくことも増えていますね。

 

- 2002 年に日本に帰国されて、海外のファッション業界を経験している視点から見て、日本のファッション業界はどのようにうつりましたか?

マーケットがドメスティックだなと。日本国内の常識というのがあり、僕はそれにすごく疑問を感じていました。2002 年の 8 月に帰国したのですが、半年間くらいは、「なんで帰ってきちゃったんだろう...」とモチベーション的には下がっていました。

 

2/2ページ: sacai はいま海外で評価されている数少ないの日本ブランドですけど、ずばり sacai の魅力とはなんでしょう?

 

 

- 帰国なさってから約 10 年が経ちますが、とくに変わったと感じるところはありますか?

変わったというより「こんなもんだな」という感じです。僕らの世代のせいもあると思いますが、昔のほうがファッションの世界に勢いがある人材が多かった気がします。いまは IT 業界とかにそういう人材が多いのかもしれないですね。 昔は洋服屋さんをやるにしても、ブランドを作るにしても、少しエッジの効いたモノを、きちんと大きいフィールドでやろうとしている人が多かった気がします。いまの若い人たちは、若い人たちだけでくっついてやる傾向がありますよね。尖っている人たちもいますが、その人たちがメジャーリーグではなく、草野球で満足してしまっている感じがします。もっとメジャーなところに出てきてやっても良いのにと僕は思うんでけどね。上昇志向があまりないかもしれません。

 


Photography: Katsuhide Morimoto
sacai Spring/Summer 2013 Menswear Collection

- いまはどれくらいの頻度で海外に行かれていますか?

去年は 12 回行きました。ヨーロッパはもちろん、米国も行きます。最近はアジアに行く機会も多くなりました。特に韓国。いま韓国はファッション業界を盛り上げようとしています。日本とは違うと思うのは、やはり向こうの人たちはやると決めたらそこに予算をしっかりと組んでやるところ。日本はなんとなくみんな平等にという考え方がありますよね。

 

- コンサルティングやバイイング、さらに内装のディレクションと、幅広いお仕事をなさっていますが、どうやってスキルを学んだのですか?

僕は興味のあることを仕事にしたいタイプ。前の会社ではお店をつくる機会が 多く、さらにインテリアが好きということもあり、内装をやらせてもらっていました。ノウハウはほとんど仕事をしながら、学ばせてもらう感じです。モノ作りもやったことはありませんでしたが、いろいろな人に教えてもらいながらやってきました。そういう意味では、自分を埋めていく作業が常にありますね。

 

- sacai はいま海外で評価されている数少ないの日本ブランドですけど、ずばり sacai の魅力とはなんでしょう?


Photography: Katsuhide Morimoto
sacai Spring/Summer 2013 Menswear Collection


Photography: Katsuhide Morimoto
sacai Spring/Summer 2013 Menswear Collection

sacai はとにかく「良いレシピだ」とよく言われます。とてもおもしろい表現ですよね。例えば sacai では、メンズのクラシックなセーターやジャケットを違うボリュームに変えたりしています。それを見た人が、とにかくそのレシピや 味付けが良いと言う。阿部千登勢さんには、女性ということもあり、自分が着るモノというのがまず前提にある。そのなかで常に新しいボリュームとか、女性にしか分からない部分を追求している。そして、阿部さんがやることにはすべて意味がある。ただかわいいからラッフルを付けるのではなく、意味があるからラッフルを付ける。なぜそのジャケットがそういう形に変形したのか、を理路整然と言葉にできるぐらい、全部に意味がある。そしてあらゆることにシビアです。お店の内装や、ショー会場にもひとつひとつ意味が求められる。それが sacai の強みだとおもいます。常に新しいことを目指し、みんなの期待に応えるのではなく、必ず裏切る要素も入れてきますし。

 

(第2回/全2回) 【インタビュー】ファッションで世界と戦うには – クリエイティブディレクター 源馬大輔

 



源馬大輔 (げんまだいすけ)
クリエイティブ・ディレクター。1975年生まれ。1996年に渡英し、1997年にロンドンの BROWNS 社に入社。バイヤーとしてのキャリアをスタートさせる。2002年帰国後、中目黒にセレクトショップ  FAMILY を立ち上げ、 WR/Family Executive Director に就任。2007年に独立し、源馬大輔事務所を設立。CELUX(LVJグループ)のブランディング・ディレクターなどを務め、現在は sacai のクリエイティブ・ディレクションや香港の高級百貨店 LANE CRAWFORD のバイイング・コンサルタントなどを担当。マーケティングから商品開発、内装までディレクションし、日本だけでなく海外との契約も多数。

HP
URL: http://www.takahashi-office.co.jp/gemma-profile.html